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どこまでが現実でどこからが妄想?の話〜岸本佐知子『なんらかの事情』〜

かおりさんへ

このあいだの他人の会話が気になる話、もちろん私も周りの話をじっと聞いちゃうタイプです。今度じっくりかおりさんと考察したいな。

さて、かおりさんが前に薦めてくれた岸本佐知子さんの『ひみつのしつもん』。ペッパーくんの話がなかなかのインパクトだったんだよね。で、岸本佐知子さんは要チェック!と思っていたら、図書館に『なんらかの事情』という本があったの。今日はこの本のことを書いてみようと思います。

佐知子さんは感性がものすごく独特。日常に起きている小さい出来事を丁寧に観察して、上手にスポットを当てて書いてくれる。

たとえばね、佐知子さんは、スーパーのレジで一番遅い列に並んだ人が優勝する競技があったら、オリンピックでメダルがもらえるくらいの才能があると言う。日々の経験と観察力で考え抜いて列を選んでも、何らかの予想外の事態が起きて、並んだ列はいつでも遅くなってしまうらしい。遅くなったとはいえ、所詮数分の違いでは…と思わないでもないんだけどね。

あとね、ニュースでよく言う「何らかの事情を知っているものとみて」にモヤモヤしちゃうらしい。ほぼ確実に大変なことをしでかしてるだろうに、なんでだよと思いつつ、100歩譲った言い方をする警察の優しさへ感動し、マスコミの慎重さにイラっとしてしまうんだって。

そんな感じで、読み進めていくと、途中から何だかおかしくなっていくのよ…。「読書体験」は本を読んでいるときにページの端を押さえている「指」の話なんだけどね。集中して本を読みふけっていると自分の指が、親指なのか小指なのかそもそも本物の指なのかわかんなくなってしまうんだって。

いやわかるだろ…と思うんだけど、妙にリアルな親指のイラストが本を押さえるときに置きそうな場所に書かれていたりして、あれ?私の指もこれ本物だっけ?というような奇妙な気分になったりして。佐知子さんの妄想モードが伝染してきちゃうんだよね。

そこからあとは、え?これは現実の話なの?妄想の話なの?という話が続いていくのよ。私は、基本的にリアリストで、妄想的なものに対して、そんなことあるわけないとか思いがちなのね。でも、佐知子さんのエッセイはなんだか時空を簡単に越えては戻ってくる感じで、ついつい翻弄されてしまいました。

かおりさんに薦めてもらう本は読んだことのない作家さんも多いし、自分ではなかなか手に取らないジャンルの本も多い。だからこそ、おもしろい出会いがあるんだよね。これからもどうぞよろしくね。

2024年10月18日
やすこより


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