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妄想癖の話 〜岸本佐知子『ひみつのしつもん』

やすこさんへ

前回のお手紙、理系の本とは意外でした。やすこさんも私と同じ文系人間だと思っていたのに。理系もイケる人だったのね。やるわね。

私は理系の話と見るとつい構えたり敬遠しがちなんだけど、今の世の中、あらゆる面で理系人間たち(なんか失礼な言い方だな、ごめん)の作り上げたテクノロジーに支えられているのよね。スマホやパソコンは気づけば生活必需品になってるし、人とコミュニケーションするロボットなんてSFアニメの世界でしかなかったものが、今や現実だもんね。私たち、いつの間にか未来に来たんだねえ。。。

実はラボットはちょっと欲しいと思ってるんだ。あれはかわいい♡小さくて丸くて、触り心地もちょっとふかふかしててペット感があるし。一方でペッパー君は・・・。私、どうしても岸本佐知子さんのエッセイを思い出しちゃって、微妙な気持ちになるんだよね。

岸本佐知子さんの虚実ないまぜ、妄想炸裂のエッセイ集。面白いです。

この本に収録されている『敵』は、油断しているとふいに現れて戦慄させられるあの虫(ゴキ・・)のように、敵は思わぬ時に現れるものなので、ふだんから敵を想定し、相手に応じた闘い方をシミュレーションしているという話なんだけど、岸本さんの想定する敵っていうのが、にゃんまげだったり機関車トーマスだったり、常にこちらの想定の斜め上なんだよね。

あのつるんとした冷たそうなボディ。瞳孔の開ききった目。唐突に胸に貼りつけられたタブレット。何よりやたらとなれなれしく話しかけてくる。地獄だ

”敵” p.158

これ、ペッパー君のことです。彼も敵認定されています。岸本さん、ペッパー君に夜道で遭遇した時は、まずあの足にカニばさみをかけて横転させて…と闘い方をシミュレーションするものの

だが夜道を向こうからペッパーがこちらに向かって近づいてきたら、本当に私は闘えるだろうか。「こんばんは!」などと話しかけられたら、恐ろしさに金縛りになってしまわないだろうか。

”敵” p.158

と、怯えています。いや、そもそも道端で遭遇しない!(笑)

他にも、街角の古いポストがちゃんと機能しているのか気になって、でも、それを確かめるために手紙を投函したら時空を超えて面倒な手紙が届くんじゃないか…というSF的妄想に発展する『シュレディンガーのポスト』や、部屋の中に落ちているネジが何から落ちたのかわからず、もしやこれは自分から落ちたネジでは?実は自分はレプリカントなのかも?と妄想する『ネジ』など、妄想炸裂エッセイ多数。

読んでて思わず笑っちゃうんだけど、一方でちょっと「わかる」と思っちゃうんだよね。

「もしかしたら自分の考えていることは全部周囲にダダもれなのかも」
世界は全てよくできた作り物で、私が見ていない間は人も物も全停止しているのでは?」「実は地球人のサンプルとして宇宙人に監視されていて、私の行動如何で地球人のレベルが測られて、レベルが低いと地球が滅亡させられるかも⁈」

など、誰でも一度や二度は、子どものころに妄想したことあると思うの。

ん?あるよね?まさか私だけ?そんなことないよね?

・・・急に不安なんだけど、そんなことないよね?!

お返事まってます。またね。

かおりより
2023年9月1日


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