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中高生のころをうっかり思い出してしまった話〜ヤマシタトモコ『違国日記』後編〜

かおりさんへ

こんにちは。
前回のお手紙、かおりさんのこの漫画に対する「好き!」がダイレクトに伝わってきました。

『異国日記』をお正月に一気読みして、これはぜひふたりでこの物語について書きたいなって思ったんだ。私はね、この優しい物語を読んで、いろいろと昔のことを思い出してしまいました。

不器用な槙生ちゃんと姉の遺児である朝の物語。
昔の私が登場人物の中で誰に似ていたのかを考えると、たぶん朝のお母さんである実里さんに近いんだよ。「こうあるべき」「こうしなくてはいけない」そういうことに囚われてしまって、「自分が何をやりたいのか」「自分は何が好きなのか」が考えられない中高生だった様な気がする。

別にいじめられていたわけでもないし、表向きなんの問題もなさそうな中高生だった私だけど、勝手に自由じゃなかったから、ひとりで世界中の誰も自分のことなんか理解してくれないと思っていた。だから、思い出すと少し息が苦しくなるし、「もう一回やり直していいよ」と言われても「もう大丈夫です!」って言いたくなる。

私だけでなく、中高生がそんなもんだと言われれば、そんなもんなのかもしれない。だけど、若い頃の自分はなんだか生きづらかったんだよね。「いいんだよ、あなたはあなたのままで」って言って欲しかったし、槙生ちゃんとか槙生ちゃんの仲間たちが身のまわりにいてくれたら、どんなに救われただろうという気がする。

槙生ちゃんは不器用だけど、本当に愛おしい。ダイゴや笠町君がいてくれてよかったなと思う。そして、大人だって完璧じゃなくて、一生懸命必死に生きていることを中高生の多感な時期に知ることができた朝は幸せものだなと思う。

丁寧に、毎日の暮らしが描かれているところがこの漫画のよいところ。槙生ちゃんと朝はぶつかり合っていくけど、生活を共にするうちに少しずつ家族になっていく。それは、お正月スペシャルで完結してしまった「義母と娘のブルース」ともつながるような気がした。お正月から、あのドラマでまたしても涙してしまったわ。

なんかうまく言えないけど、いろいろと考えてしまった。そして、中高生だったころをうっかり思い出してしまった。今は、年齢を重ねたこともあって、「好きなことは好きだし、誰に何を言われても構わない。私は私だもん!」と思える様になったので、非常に平和に暮らしている。

朝にも槙生ちゃんにもそして昔の私にも「50代になったらもっと楽になるぜ!今はせいぜい悩むがいい。悩んだことは、いつか必ずあなたの力になるから」って教えてあげたいなと思う。

素敵な漫画を貸してくれてありがとう。
同じ本について書くのもおもしろいね!またやりましょう。

2024年2月9日
やすこより





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