本を1冊読み終えるという経験
今日は根っからの本好きの皆さんにはちょっと理解が難しいかもしれないお話です。だけど、これから本を読んでみたいなあと思っている人にはきっと励ましになると思いますので読んでもらえたら嬉しいです。
先日のnoteにも書いたのですが、実は私が本を読むようになったのは22歳のときです。小学生時代は外で男子に混じってサッカーとか追いかけっこをするほうが好きだったので、図書館には寄り付いたこともありませんでした。かろうじて漫画だけは人並みに読んでいましたが、活字だけになると本当に読めなくて読書感想文にはかなり苦しんだ記憶があります。提出間際になってあとがきと目次から物語を推測しまくり、独自の解釈を作りあげた上に原稿用紙の句点句読点を打つ場所を巧みにあやつり、空白を最大に稼げるように工夫した記憶があります。(何が工夫だ!笑)
そんな私が読書は、筋トレみたいな、またはだんだんと階段を上っていくようなものだな、と思っています。要は積み重ねや鍛錬が必要だということです。
本を読み始めるとだんだんと知っている知識が増えていきます。筋肉がつくみたいに、知識も蓄積されます。そうしているうちに文章を心に落とし込む感覚も身についてきて、読みながら自分の経験と結びつけたり、経験したことないことは想像してみたりしやすくなります。知識が増える喜びと少しずつ本を読む楽しみを感じるようになってきて、読めば読むほどに楽しさはどんどん増していきます。鍛錬の要る趣味ではあるけど、読んだ本たちは確実に読んだ人の血肉になります。積み重ねの喜びです。
では、ゼロから読書を始めるのであれば何から始めればよいのでしょう。読書の階段の1段目になってくれるような本はあるのでしょうか。ここからは受け売りなのですが(おい)、読書を始めたばかりの頃の私に本好きのお友達が教えてくれた1冊です。
「もものかんづめ」 さくらももこ著 集英社刊。
おなじみちびまる子ちゃんの作者、さくらももこさんのエッセイ集です。250ページくらいの本に17編ものエッセイが収められているので1編15ページ前後と短く、どの章からでも読めます。おすすめしてくれた友人は作家の朝井リョウさんのファンで、朝井さんがラジオで読書ビギナーにおすすめの1冊と紹介していたよ〜、と読書ビギナーの私に教えてくれたのです。なんでも朝井さんが言うには一番大切なのは「1冊本を読み終えた」という経験らしいのです。
確かに!と私は開眼しました。読み終えた経験がない=本が苦手というのはもったない考えだったのです。さくらさんのエッセイは誰にでも起こりうる日常をとてつもなく面白く表現してあります。普遍の平凡な日常の共感とスパイス的な面白さ。きっとスルスルと読めてしまうと思います。
だけど、もし、読めない!ということがあれば読むのをやめてしまってください。「読めなかった」という罪悪感は捨てて、さっさと次の興味のある1冊に進むのが吉です。私は本が「読めた」喜びは強いられたり無理して読むことで遠ざかってしまうと思うので、強いられなくても無理しなくても読める1冊に出会って「読書って楽しい!」と言う経験をしてほしいのです。そこから自分だけの階段を上って、だんだんと、どんどんと読書の楽しさを自ら知っていく。それが読書の醍醐味だと思うのです。
特定の1冊の本を読みやすいと紹介している時点で若干言ってることは矛盾しているのですが、1冊楽しく読み終える経験のためにあまり身構えずフットワークは軽めに、いろいろな本を手にとってみてもらえると嬉しいです。