子羊たちの悲鳴
「羊たちの沈黙」と「レッド・ドラゴン」を読んだ私のひとりごと
ハンニバル・レクター(英: Hannibal Lecter)は、『羊たちの沈黙』等、作家トマス・ハリスの複数の作品に登場する架空の人物。著名な精神科医であり猟奇殺人犯。殺害した人間の臓器を食べる異常な行為から「人食いハンニバル」(Hannibal the Cannibal、ハンニバル・ザ・カニバル)と呼ばれる。
(weblio辞書より抜粋)
映画化やドラマ化もされ、日本でも有名なトマス・ハリスの小説「ハンニバル」シリーズ
ハンニバルといえば、精神科医でありながら、人肉を食すという異常者というイメージ
しかし、私は原作を読んでいて、ハンニバル博士は異常者というよりも、単に純粋悪的な要素を担う人物であり、大抵彼の行動には常に彼なりの正当性と理性が存在しているという印象を受けました
"狂気"を抱えた人物というわけではなく、ただ世間一般の倫理観とは違う観念を持つ人物、これが私のハンニバルに対するイメージです
むしろ、今回私が着目したのは「羊たちの沈黙」と「レッドドラゴン」に登場する2人の精神異常者について
(※ネタバレにならないように配慮はしていますが、「羊たちの沈黙」「レッドドラゴン」原作小説の犯人の動機について触れているので、未見の方はご注意ください)
そもそも精神異常者だなんて言いましたが、元々は出自や環境による自我の歪み、言ってみれば人間が生み出したモンスター的な存在、「フランケンシュタインの怪物」みたいなものをイメージしてください
この世に人として生を受けたものの、母親からの愛を与えられず、生まれつきの障害や醜い外見を理由に周囲からも拒絶される
自身の存在意義を見つけられないまま、精神は子供のままなのに身体だけ大人になっていき、"無邪気"に自分の"欲しいもの"に手を伸ばしていく…
こう考えると「羊たちの沈黙」や「レッド・ドラゴン」に登場する犯人たちは、フランケンシュタイン博士のエゴによって創り出されたものの、創造主、そして社会から見捨てられ絶望していく怪物の姿と重なるものがある気がします
「羊たちの沈黙」や「レッド・ドラゴン」で描かれている事件自体は、現実にはあまり起こりそうにないもの
しかし、一見常人には理解できそうにない犯人の動機、その根底に潜む潜在的なきっかけが必ずしも現実では有り得ないと断言できないもの
ある意味それが、この作品たちの真の怖さではないでしょうか