キボリノコンノさんとヨックモック。「木彫りのシガール」がつなぐ素敵な関係。
私たちの代表商品「シガール」を木彫りで再現してくれたキボリノコンノさん。SNSを中心にバズったので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
“キボリノ”と名乗るコンノさんは、さまざまな食べ物を「木彫り」で再現するちょっと不思議な作家さんです。
コンノさんの作品作りの秘密や、ヨックモックへの思いなどを、あらためてお話お聞きしました!
こちらが、コンノさんとヨックモックが出会うきっかけになった投稿です。パッケージまで木でできていて、今見ても驚きです!
木彫りを始めたきっかけは?
― そもそも、木彫りを始められたのは何故だったんですか?
コンノ:実は「木彫りをやるぞ!」なんて全く思っていなかったんです。きっかけは、2021年のコロナ禍でした。その頃、公務員だったんですが、仕事が忙しくて鬱病になってしまって。
どんなに忙しくても、仕事終わりに趣味の卓球に行けば、気分がリセットされていました。それがコロナ禍に会場の都合でできなくなってしまったんです。
― 生活のリズムが変わってしまったんですね。
コンノ:それで、3ヶ月くらい仕事を休んでいる最中に、お医者さんから「違う趣味を始めてみれば?」と言わたんです。そんな時に心配してくれた友達が「木を使って何か作ってみれば?」って言ってくれました。
― なんでご友人は、木を使うことを勧めたんですか?
コンノ:静岡文化芸術大学に通っていた当時、僕が木で家具を作っていたのを覚えてくれていたんですよね。周囲が、そういった後押しをしてくれている時期に、コーヒー豆を挽いて飲んでいたら「あれ?これ木っぽいな」って気がついて(笑)。
― (笑)。
コンノ:触った感じも質感も木っぽいなって(笑)。試しに彫ってみたら、そっくりにできたので、当時Twitter(現X)にアップしたら、少し反応いただいたんですよ。コロナ禍で途絶えていたコミュニケーションが、久しぶりにできたような気がして嬉しかったので、ピーナッツやピスタチオなんかも作りました。段々とハマっていったんですよね。
― 「何かを表現したい!」って感じでもなかったんですね。
コンノ:まさに!僕にとっての木彫りって、アートとか表現とはすこし違って、コミュニケーションツールなんですよ。僕の作品は、見てくれる皆さんへのプレゼントだと思っているんです。普段からサプライズプレゼントをするのが好きなので、楽しませたいっていう気持ちで創作しています。
― 素敵ですね。
コンノ:もちろん木が好きですけど、誰かが喜んでくれれば、実は素材はなんでもいいとすら思っているんですよ(笑)。
― 意外です!
コンノ:大学時代にデザインを学んでいた影響もあると思います。デザインは、作り手本位ではなく、お客様を想定して作るものですよね。そういう意味では、僕の作品は、アートよりはデザインに近いのかもしれません。実は、最初のコーヒー豆だけが自分のために作った作品で、それ以降は誰かを喜ばせたくて作った作品しかないんです。
― 木だけでなくて、塗装したり、ニスを使ったりしていますけど、ルールはあるんですか?
コンノ:ルールというか、こだわっているのは、本物そっくりにしすぎないことなんです。
― リアルにしすぎない!?
コンノ:もっとリアルにする方法ってあるんです。例えば、絵の具でなくて、エアブラシを使えば、食品サンプルみたいにリアルにできます。でも、それだと「これ、木だ!」って気がついてもらえる体験にはつながらないと思うんです。
― 体験?
コンノ:僕の作品は、SNSで見てくれる方が多いんですが、画像だと目で見るよりも拡大できますよね。拡大したら「木だ!」って驚いていただけるんですよ。
― 確かに、その体験は、コンノさんの作品で何度も味わっています!
ヨックモックとキボリノコンノさん。
― あらためて、なぜ「シガール」を木彫りにしようとしたんですか?
コンノ:妹や、職場の同僚から「シガール好きだから作ってよ」って、リクエストをいただいて作ったんです。
― えぇ〜!そうなんですね!
コンノ:僕は、人からリクエストやアイデアをいただくことが多いんです。そういう機会をすごく大事にしていて。SNS上でも、いただいたコメントにはできる限り目を通していますし、次の作品のヒントをいただくこともあるんですよ。
― シガールは色合いも木に近いですけど、パッケージまで作っているのにびっくりしました。
コンノ:作っていくうちに「袋も作ったら、みんなもっと驚くんじゃないか?」って(笑)。
― 発想がエンタテイナーですよね!
コンノ:完成した木彫りシガールの画像を投稿したら、バズったんです。バズりはじめた段階で、ヨックモック公式アカウントが引用リツートしてくれましたよね。
― 私たちも本当に驚いて!「え!?木!?」って(笑)。
コンノ:その後、ヨックモックの社長さんから、お食事に呼んでいただきました。木彫りの活動を始めて、一番最初に外とつながるような機会だったので、めちゃくちゃ嬉しかったです。
― そんな!私たちこそ光栄でした!
コンノ:当時の僕からすると、企業のトップに誘われるなんて、本当に緊張することでした。でも、お会いしてみたら、とても気さくな方で(笑)。
― (笑)。どんなお話をされたんですか?
コンノ:今でもすごい覚えている言葉があって。僕が「みんなが驚いてくれて、リツイートしていただいて嬉しいんですよ」って話をしていたんです。そしたら、藤縄社長が「私たちのお菓子づくりに似てますね」って言ってくださったんです。
― どんなところが似てるって話していたんですか?
コンノ:ヨックモックのお菓子は、自分のために買うだけでなく、ギフトや贈答など誰かにプレゼントする機会がすごく多いとお聞きしました。だからこそ「誰かにプレゼントしたくなるようなお菓子づくりを目指しています。コンノさんの作品も誰かに見せたくなりますね。私たちのお菓子作りに似てるって感じました」って言っていただいて。
― あぁ!確かに!
コンノ:みんな「誰かに見せたい!」って思いで、僕の作品をリツイートしてくれてたんだ!って、藤縄社長の言葉で気付かされたんです。それまで、単純にリツイート数だけを見て喜んでいたんですけど、リツイートしていただいている皆さんの気持ちに気がついたんですよね。
― 弊社の藤縄の言葉がきっかけになっていたんですね!
コンノ:(笑)。それから、意識して、自分の作品はプレゼントだって考えるようになったんです。自分のものづくりの姿勢をきちんと考えるきっかけだったんですよね。
― 先日の個展でもシガールのさまざまなバリエーションを展示していただけましたよね。すごい面白くてニヤニヤしました。
コンノ:ヨックモック社員の皆様とお食事させていただいた時に、「次は、どんな作品を作られるんですか?」って質問されたんです。その時は「木でしかできない、硬いものが柔らかくなっていたり溶けていたら面白いんじゃないか」ってお話ししました。そしたら、「シガールでやってみたら面白そう」っておっしゃられて。そこから、みんなのダジャレ合戦が始まったんですよ。シガールを「シボール」とか「溶け〜る」とか(笑)。
― そんな笑い話を実際に形にしていただけて、本当に嬉しいです(笑)。
コンノ:僕は、小さい頃から人と喋るのがすごく好きで。自分の中だけで表現するのでなく、みんなで話しながらアイデアを作っていくのが好きなんです。
木を自在に彫れる楽しさに出会った。
― アイデアの限界を感じることってないんですか?
コンノ:全くないんですよ(笑)。楽しくてしょうがないだけなんです。めんどくさい時や、何も思いつかない時は、何も考えないようにしているし、全然木彫りもしません(笑)。
― へ〜!
コンノ:やりたい時だけにやっているから、常に楽しいんですよ。
― 作ってみて、うまくいかない時はありますか?
コンノ:実は、僕、失敗作って全くないんですよ。
― えぇ!?失敗しない!?なんでですか?
コンノ:えっと…単純に器用なのかもしれません(笑)。
― (笑)。
コンノ:自信過剰に聞こえるかもしれませんけど、そういうわけではないんです(笑)。小さな頃から色々なものを作っていたので、あたりまえに何でも頑張れば作れるって思っていたんです。
― 色々作っていたからこそ、器用なのかもしれませんね。
コンノ:お菓子のパッケージを真似して紙で作ったりしていました。カッターは、幼稚園くらいから使っていたような気がしますね。
― へ〜!
コンノ:DIY好きで、ものづくりをしていた父親の影響もあるかもしれません。僕が興味持ったことを両親は全力で応援してくれました。素材や工具も本当に自由に買い与えてくれました。
― それは素晴らしいですね。
コンノ:小学生の時に木で飛行機を作っていたんですけど、コックピットの座るところが、細かくて彫刻刀で彫れなかったんです。そしたら、父親がミニルーターセットを買ってきてくれたんですよ。
― すごい本格的なセット・・・!
コンノ:木を自在に彫れる楽しさをその時にはじめて感じたんです。だから、すごく両親に感謝しています。
― 先ほど、素材はなんでもいいってお話ししていましたけど、コンノさん、木への愛情がすごいですよ(笑)。不思議なバランスですね。
コンノ:なんですかね(笑)。こだわりがあるような、ないような感じなんです。絶対木じゃなければダメだとは思わないけれど、すごく好きなのは確かですね。
夢中になること。教えること。
― コンノさんは、ワークショップなどを通して、木彫りを広げる活動もしてらっしゃいますよね。
コンノ:木彫りを広めたいというより、単純にみんなが何かに夢中になって欲しいと思っているんです。自分は夢中になって集中できることが楽しいので、みんなにも味わってもらいたいなって。絵とかダンスとか、夢中になれればなんでもいいと思っていますよ。
― 昨年から今年にかけて、木彫りのシガールを作るワークショップも開催していましたよね。
コンノ:教えるのって、すごく難しくて!普段自分が作る時って、手順も決まっていないし、何も考えていないんですよ。なんですけど、誰かに教えるために、どうやって作っているのか説明しないといけませんよね。
― 確かにそうですね。
コンノ:なので、教えることを通して、普段自分自身がどうやってものづくりをしているのか、もう一度見つめ直すような感じだったんです。
― あぁ〜!
コンノ:感覚的には、おばあちゃんが「毎日作っている料理のレシピを教えて」って言われている感じです(笑)。目分量で感覚で作っている料理だから、教えるのってすごく難しいと思うんですよ。
― いつも目分量のおばあちゃんが、急に小さじで作っても感覚掴めないですよね(笑)。
コンノ:そうそう(笑)。
― 参加者の皆さんはどうでしたか?
コンノ:皆さん、戸惑ってましたね〜(笑)。特に、シガールのクルクル巻いている部分に奥行き・立体感を表現するのに困っていました。
今回やってみて、シガールの見方も捉え方も、人によって全然違うんだなって驚きました。実際の作業も、得意なところや苦手なところが全然違うし、出来上がりも全然違うから面白いんですよね。
― へー!
コンノ:今回のワークショップは、ヨックモックの社員のNさんも参加してくれていて、すごく上手だったんですよ。微妙な巻き感や、端の角度などが良く観察できているなって思いました。シガールをすごく好きで日々、良くみているからかなって思うんです。
― 観察していると、上手なんですか?
コンノ:技術というよりは、どれだけ好きで良く観察できているかっていう方が大事なんだって思います。
― 確かにコンノさん、シガールとシガール オゥ ショコラの微妙な形の違いに気づいたこともありましたよね。
コンノ:そんなにまじまじと見ているわけでもないんですけど、なんとなくそういうのに気がつくんですよね。
― 見るっていうのこそ、大事なのかもしれませんね。
コンノ:そうかもしれませんよね。僕、小学生のいっちゃんっていう弟子がいるんですけど。
― お弟子さん!
コンノ:いっちゃんも、いつもすっごい観察しているんですよ。誰も気がつかないようなところを見ているんですよね。だから、僕も驚くほどの作品を作れているんです。
見るってことを意識するのはすごく大事なのかもしれません。きちんと見ないと再現もできませんからね。
― 観察力って、大事なのかもしれませんね!
プロになってからのコンノさん。
― コンノさんは今、退職されて、謎の木彫りプロじゃないですか。
コンノ:確かに謎ですよね(笑)。
― プロになって、何か変わったりしたんですか?
コンノ:モチベーションが上がる一方ですね。そもそも友人に見せるモチベーションからはじまって、SNSで見てもらえるモチベーションになって。今は、展覧会や絵本を通して、小さな子供まで反応してくれています。人の喜ぶ姿が、どんどんと増えていっている実感があってすごく充実しています。
― プロになってもすごく純粋に楽しんでらっしゃいますね。
コンノ:僕は、公務員を続けながら木彫りの活動を始めました。副業禁止だったので、作品を売る活動をしていなかったんです。
だからこそ、純粋に楽しむ活動だけをずっと続けてこれたのかもしれないなって。謎のプロになった今でも、仕事を続けながら始めたのは、良かったなって思います。
― ものづくりにすごく純粋に向き合えたんですね。
コンノ:純粋に作ることは、今でもすごく大事にしています。
ヨックモックさんとも、お仕事じゃない関係性からスタートしましたよね。だからこそ、くだらない話で打ち解けたり、お互いにアイデアを惜しまずに出したりできると思うんです。そういうコミュニケーションこそが、僕にとって大事なんですよ。
― プロになって、これから叶えたい夢ってあるんですか?
コンノ:えっと…実は、木彫りを始める前から、ペンションを開くのが夢なんです。
― ペ…ペンション!?木彫りでもなくですか!?
コンノ:ペンションって、ひとつの空間を通して、食事や会話、あらゆるおもてなしができますよね。
― 確かに。
コンノ:僕の根本は、自分の楽しいことをみんなに教えてあげたいって思いです。それを叶えるには、ペンションっていう空間がピッタリなんじゃないかって思うんです。
― 唐突すぎて戸惑ってしまいましたが、理由を聞いて納得しました(笑)。素晴らしい夢ですね!
ヨックモックとの思い出。
― ヨックモックとの思い出があれば聞かせてください!
コンノ:僕にとってのヨックモックは「誰かからもらえるお菓子」なんです。小さい頃は、身近に売っていなかったので、どこかの地方のお土産だと思っていたくらいです(笑)。
気軽に手に入るお菓子でもないのに、食べ馴染みがあって、特別感があるお菓子なんですよね。
― 今日はありがとうございました!
コンノさんの作品は、どれも驚きとユーモアに満ちていて、ついつい誰かに見せたくなってしまいます。「作品は誰かへのプレゼント」この思いを、私たちのお菓子作りでも大事にしていきたいなと、あらためて思いました!
おまけ
木彫りのシガールを作るワークショップに、実際参加してどうだったのか?文中にも登場した、ヨックモック社員のNさんにお話をお聞きしました。
― 全3回のワークショップだったそうですけど、どうでしたか?
N:初回は、とっても丁寧に作り方がマニュアルになっていたんですけど、2回目には「お菓子をよく観察して、彫ってみましょう」って書いてあって戸惑いました(笑)。
― 急にざっくりと(笑)。
N:コンノさんの教え方は丁寧で安心しましたけど、みんな最初は戸惑っていましたね(笑)。最終的には、仕上がりに満足しています。
― かなりリアルにできてますね!普段から、何か作ったりしていたんですか?
N:全然何もやっていないんですよ!ここまで作れて、僕自身もびっくりでした。社長にも色味を褒めてもらったりして嬉しかったです。
コンノ:Nさんは、色へのこだわりがすごかったですよね。僕も好きなものでないと、よく観察して作れないんです。Nさんも、普段からシガールが好きでよく観察できているな〜って思いました。
N:色は、時間ギリギリまで粘っていました。
コンノ:ぜひ、他の好きなものも見つけて、作ってみて欲しいなって思います。
N:今回参加して、木彫りにすごく可能性を感じました。ルーターが欲しいなって思ってるんです(笑)。
― 新しい作品も楽しみにしてます!ありがとうございました!
キボリノコンノさんの最新情報はこちら。
【どっち?展】2024年1月26日(金)~3月10日(日)
【キボリノコンノ展(新潟会場)】2024年3月23日(土)~5月12日(日)
(おわり)