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朝茶は七里帰っても飲め おかわり

最初から読む 目次 茶筒(マガジン)

本作は全5話連載小説『朝茶は七里帰っても飲め』のスピンオフ作品ですが、本作単体でも十分お楽しみいただけます。
よろしければひと休みにお立ち寄りください。

おかわり 小娘と茶袋

「初めまして。宝煎ほうせん大学デザイン工学部三年生の杵築きつきアンリと申します。本日は、お忙しいなか、見学をさせてくださりありがとうございます。一生懸命学び取りたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします」
 声が漏れそうになるのを、口許を覆って抑え、慌てて拍手を送った。

 うれしの製薬では、今週から今年のインターンシップ、いや、オープン・カンパニー参加学生を受け入れ、五日間のオープン・カンパニーを行っている。人事によると、今はインターンシップとは言わず、オープン・カンパニーと言うらしい。今でもインターンシップは行われているが、インターンシップと言うにはいろいろ要件を満たさなくてはならないのだという。うちのプログラムは就業体験を伴わず説明会の要素が強いため、オープン・カンパニーにあたるのだそうだ。オープンキャンパスの企業版といったところか。
 うちのオープン・カンパニーは、製薬事業部、食品事業部に分かれ、初日はオリエンテーション・本社見学、二日目から四日目は工場・研究所見学、五日目は報告会を実施する。今日は四日目の研究所見学で、私のいるラボで行っている研究開発について説明することになっている。まさか、あのアンリちゃんがうちのインターンシップ、じゃない、オープン・カンパニーに参加するとは。こんな偶然があるのかと、にわかには信じがたかった。
「こちらは、研究員一同です。簡単に自己紹介をさせていただきます」 
 人事部新卒担当のいずみさんに促され、ラボのメンバーが自己紹介していく。私の番が回ってきた。
「同じく研究員の嬉野うれしのです。みなさん、志望される職種や部署は様々だと思いますが、昨日まで生産工程をご覧になり、感じられてきたことがあると思います。研究所では企業秘密の部分も多くお見せできないところもありますが、できる限りご質問にお答えしたいと思っています。普段飲んでいる飲み物がどんな風に開発されているのか。それを知って、みなさんの業界・職種研究に役立てていただけたら幸いです。よろしくお願いいたします」
 学生たちはみんな、キラキラした目でこちらを見て拍手している。少し面映ゆい。ちらっとアンリちゃんに目を遣ると、彼女も興味津々な面持ちで期待に満ち溢れていた。特にこちらを気にしている様子はなくほっとする。少し寒く感じるのは、エアコンが少々効きすぎているのだろうか。いや、みんなにそんな素振りはないので、ほぼ治りかけの夏風邪のせいだろう。

 アンリちゃんは、もう二十年以上前に一晩、その二年後の二十年近く前に五日間、私がお世話になった方の子だ。実際はそのときのことを覚えているわけではない。私には当時の記憶がないのだ。ただ、日記に綴られていた名前と一致し、年齢も合う。「キツキアンリ」なんてそうそう同姓同名もいないだろう。
 そして、彼女にも記憶はないようだ。無理もない。最初に彼女の母、アンナに出会ったとき、アンリちゃんはアンナのお腹のなかにいたという。その二年後にたった五日過ごしただけの人間を覚えているはずもないのだ。

 午前は、研究所や研究目標の概要説明を同じく研究員の名護なごさんから行った。研究所では主に、うれしの製薬食品事業部の四つのコンセプトのうち、おいしさと健康面に焦点を当てて研究開発を行っている。その点について、丁寧に話していく。名護さんはまだ若手だがとても優秀かつ熱心で、ただちょっぴり緊張しいなところがある。昨日も、心配なので練習に付き合ってほしいと泣き付かれて付き合った。説明は文句無しなので、表情やリラックス方法などを助言すると、「嬉野さんありがとうございます!」と涙目で言われた。
 おいしさは、飲料・食品そのものの味や香りはもちろん、気温、湿度などの周囲の環境や、口にする人の体調、飲料・食品の飲み合わせ・食べ合わせなどによっても変化する。具体的な数値データや実際に試飲、試食してもらった被験者の結果を彼が示すと、みな面白そうに聞いているのが側から見て取れた。そして、実際にその研究の様子を説明しながらガラス越しに見てもらうと、真剣にメモを取っていた。
 健康については、栄養素や成分、一緒に摂取すると良くないもの、心身に悪影響のある物質、健康につながる物質の発見を目指していることなどについてを、実例を交えて彼が説明した。まだわかっていない分野についての研究や、現在判明している分野についてより理解を深めるための研究に勤しんでいることを伝えてくれた。
 そして、健康とおいしさを両立させるべく日夜励んでいることを彼が真剣に話した。健康になれるからといって、おいしくないと飲食を続けられない。大切なのは、無理なく続けられ、楽しく食生活を送りながら、心身ともに健康でいられることだからだ。それを説明すると、学生たちは深くうなずいていた。側にいた学生に見学がてら話を振ってみると、実体験を話してくれ、先ほどの名護さんの説得力を実感してくれたのが伝わった。
 説明や見学の間、参加学生はみんな、とても熱心に説明を聞きながら、機械を物珍しそうに見たり、各研究員の説明にうなずきながらメモを取ったりしていた。毎年初々しい学生たちと接しながら、うちに来ても来なくても、この子たちがこの国の未来を背負って立つのだと思うと、身の引き締まる思いがする。

 昼食休憩の時間になった。オープン・カンパニー期間中の昼食はうちが用意している。負担をかけないという側面もあるが、実際にプログラムを体験した後にうちの商品を食べたり飲んだりして、見学した仕事に思いを馳せてほしいという思いを込めている。基本的に学生たちで自由に昼食をとってよいが、質問があれば別室で昼食をとりながら受け付けることになっている。社員の昼食はもちろん自腹だ。自分で持ってきてもいいし、学生と同じメニューを事前に注文して購入しておくこともできる。私は後者だ。
 昨年は、質疑応答の時間が盛況で押した分、昼食休憩時間はまばらに質問に来ては戻っていくの繰り返しだった。今年はどうなるかと思っていたら、想定外に学生たちが訪れたので、研究員総動員で半ば懇談会の様相を呈した。途中から、質問を受け付けるというより各学生たちとの交流タイムと化した。そのなかにアンリちゃんもいた。せっかくなので、どうしてうちのオープン・カンパニーに参加してくれたのかなど、ヒアリングもしながら彼らの理解を深めようと努めた。
「杵築さんはどうですか?」
 少しそわそわしながら、平静を装って尋ねる。
「母がお茶を愛飲しているんですが、地元のお茶はもちろん、御社の『うれしいのん茶』も好きなんです。それで御社に興味を持ちました。コーポレートサイトを見て、『おいしく健康になれる、環境に配慮した、公正な飲料・食品づくり』を理念に掲げているところに興味を持ち、深く知りたいと思いました」
 周りの学生が感心した目で彼女を見つめる。最初のところに反応したくなるのをぐっと堪える。すると、私が反応する前に、学生の一人が口を開いた。
「杵築さんすごいね! 私そこまでリサーチできてなかったよ。嬉野さんすみません、おいしく健康に、っていうのは、今朝もご説明いただいたのでなんとなくわかるんですけど、環境への配慮や公正ってどういうことなんでしょうか?」
 その学生、大村おおむらさんが私に尋ねてきた。アンリちゃんも一緒にこちらを窺う。アンリちゃんの、採用サイトだけでなくコーポレートサイトまで現時点でしっかり調べているところはもちろんすごい。ただ、彼女の話を聞いて、即座にこの質問ができる大村さんも素晴らしいと思う。
「杵築さんに大村さん、ありがとうございます。杵築さんはよく調べてくださったんですね。うれしいです。大村さん、いい質問をありがとうございます。午後のワークのテーマとして取り上げる予定なので、簡単に説明しますね」
「あ、すみません。フライングしちゃいました」
 大村さんが申し訳なさそうな顔をするので、すかさず首を横に振る。
「いいえ、そこに着目して疑問を尋ねていただけるのはとってもうれしいです。それに、後のワークでみなさんがどんな風に考えてくださるか、楽しみです」
 そう前置きをして、かいつまんで説明をした。ふたりはポケットからメモ帳を取り出し、書き留める。それにあわせて説明をする。時計に目を遣ると、午後のプログラム開始十分前を切っていた。
「そろそろお手洗いなどを済ませて席に戻りましょうか」
 私が声をかけると、ふたりは昼食の容器を持って立ち上がった。
「嬉野さん、ご説明ありがとうございました!」
「後ほど、また質疑応答の時間を設けます。終わった後も可能な限り質問を受け付けるので、また気になることがあったら遠慮なく聞いてくださいね」
 ふたりはきちんと昼食の殻を分別し、一緒にお手洗いの方向へ話しながら歩いていった。

 午後の座学では、うれしの製薬食品事業部の四つのコンセプトについて、今朝より踏み込んで私から説明した。先ほどアンリちゃんが話してくれた、おいしさの追求、健康の追求、環境にやさしい配慮、公正な取引について、大きい枠組みとして相互の繋がりを話す。それから、今朝は触れられなかった、環境、公正について、事業部の取り組みを具体的に説明すると、先ほど尋ねてくれた大村さんが目を輝かせているのがわかった。わかった喜びがひしひしと伝わってきてうれしい。アンリちゃんも、にこにこ頷きながらメモを取る手を止めない。
 そして、グループワークに入った。テーマは、「自分が興味のある職種と、他の職種や四つのコンセプトとの繋がり」だ。泉さんが趣旨を説明してくれる。
「みなさん、まだ本格的に就職活動を始めているわけではないと思います。就きたい職種がまだ定まっていない方のほうが多いはずです。この四日間いろんなところを見ていただきました。見ていて気になった職種でも、初めて知った職種でも、なんでもかまいません。自分がその職種に就いて働いているつもりで、自由に話し合ってグループの考えをまとめてください」
 各学生がどんな発表をするのが楽しみだったが、とりわけアンリちゃんと大村さんの発表はどうしても個人的に興味が湧く。活発な意見が飛び交うのをグループを回りながら微笑ましく見る。悩んだり、質問したり、感心したり。コロコロと表情の変わる学生たちが眩しかった。

「それでは続いて、Cグループの発表をお願いいたします」
 泉さんの声かけで、アンリちゃん、大村さんのいるCグループ五名の発表が始まった。
「私たちは、企画開発、生産技術、広報、営業、研究開発職、商品デザイナーについて考えました」
 六名が、模造紙に描いた図をもとに、順番に自分の興味のある職種と、他の職種やコンセプトとの関わりについて説明していく。大村さんの番になる。
「私は、研究開発職に興味があります」
 私たちの仕事だ。
「祖母が病院が苦手で、薬もなかなか飲まない人なんです。でも、食事もお茶も大好きで。飲食で健康を目指せる管理栄養士の資格を取り、御社で働くことを目指しています」
 かあさんと同じ管理栄養士を目指す卵なのだとわかり、かあさんに思いを馳せる。
「私は、おいしくて健康になれる食品や飲料の研究開発に携わりたいと思っていました。良いものを作って、それが市場に並ぶ。祖母のような人たちの手に渡り、おいしく元気に食べて飲んでほしいです。しかしそれには、多くの人が関わって協力し合うことが必要だと、グループワークで気づかされました」
 研究をもとに、企画開発の人が画期的な商品を考え、共同開発して商品が生まれる。それを生産技術の人が実現させる。しかし、良いものを作れば売れるわけではない。広報の人が知らしめることで商品やメニューの情報、ECサイトのリンクがお客様に届く。小売店と密にコミュニケーションをとりながら営業し、小売店で取り扱って工夫してもらうことでお客様が購入することができる。手に取りたくなる商品デザインによって、お客様が検討し、良いと思ったらそのデザインを探し求めてリピートしてくれる。
 そして、原材料を作る農家さんとの公正で対等な取引関係を築くことが、会社の未来に繋がり重要なのだと、座学とワークを通じてわかったと話してくれた。そこまでにこの短時間でたどり着けたことに感動しながら耳を傾けた。続いてアンリちゃんの番だ。
「私は、商品デザインに興味があります。本社のデザイナーさんの、『私たちはパッケージを作っているのではなく、商品自体をデザインしている』というお話が印象に残っています」
 これはきっと、デザイナーの小野おのさんだろう。私の入社前からいらっしゃるベテランデザイナーで、彼女のデザインがうちのブランドイメージを確立させている。
「そのためには、商品を深く知ること、そして、商品を作る人たちを知ることが重要だと、この四日間で気づかされました。デザインのその先に、商品、そして、会社のイメージが形作られる。その責任を少しですが感じ取ったつもりです。だからこそ、広報、企画の方々との連携はもちろん、生産工程や研究、営業の様子を知ることや、働く人たちとのコミュニケーションの重要性に気づかされました。おいしさ、健康、環境、公正への配慮という会社コンセプトの理解を深めることで、良いデザインに繋がると思います」
 小野さんがこれを聞いたら喜ぶだろうと思った。後でお伝えしよう。
「私の母や近所の方は、『うれしの製薬』というブランドを信じて買っていると言っていました。そのブランドイメージを守るのがデザイナーの仕事だと思っています。工場や研究所のみなさんたちの努力を知ったデザイナーさんが、それを的確に表現してブランドイメージを固めていらっしゃると、四日間の説明と見学を通して実感し、それがお客様に届いているということの結びつきに気づけてよかったです」
 いろんな意味で込み上げてくる思いを、表に出さないよう気をつけながら、割れんばかりの拍手を送った。

 グループ発表、質疑応答も終わり、ラボでのオープン・カンパニープログラムが終わった。学生たちの控室に行くと、既にアンリちゃんたちの姿はなかった。明日もあるし、仕方ない。窓の外を見るとアンリちゃんが大村さんと別れて手を振る姿が目に入った。慌ててエレベーターに乗り込み、走ってアンリちゃんを追いかける。
「杵築さん!」
 アンリちゃんに声をかけると、振り向いて駆け寄ってくれた。制止して、息を整えながらゆっくりと歩み寄る。
「本日は、弊社のオープン・カンパニーにご参加いただき、熱心に取り組んでくださりありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました」
 迷ったが、名刺を差し出す。
「改めまして、おかあさんが飲んでいる『うれしいのん茶』の開発に携わった、嬉野ユウリと申します。愛飲していただき光栄ですと、どうかよろしくお伝えください」
 満面の笑みで「はい」と返事し、受け取ってくれるアンリちゃん。今日はどうだったか尋ねる。
「とても勉強になりました。ただ、自分の知識と経験不足を実感したので、就活までに勉強と実習に励みたいと思います」
 日記でしか知らないアンリちゃん。こんなに立派になって。アンナたち五ヶ瀬荘のみなさんにも会いたい気持ちを秘めながら、精一杯の思いを伝える。
「杵築さんの勉学、就職活動を心から応援しています。これ、もしよかったら」
 そう言って、『うれしいのん茶』のデザインラフのコピーを渡す。彼女は驚いた顔をして、恐る恐る受け取った。
「いいんですか?」
「ええ、昼休憩の後に本社に確認を取って了承をもらいました。先ほどのワークのあなたの思い、弊社デザイナーにも申し伝えますね。きっと喜びます」
「ありがとうございます! 大切にします」
「こちらこそ、あなたたちの発表が明日からの活力になりました。どうか健康に気をつけて、生活を送ってくださいね。明日の最終日も、がんばってください」
 深々と頭を下げて、しわにならないようコピーを握りしめるアンリちゃん。
「はい! 本日は本当にありがとうございました。それでは失礼いたします」
 アンリちゃんの背中を小さくなるまで見守った。並木道の木々の緑、黄昏時の橙、伸びていく影、軽やかな足取りが、まぶたの裏に焼き付いた。

 ラボに戻って泉さん、名護さんたちと後片づけを終え、研究室に帰る。パソコンに向き合って手を動かしていると、トントンと戸を叩く音がした。
「どうぞ」
「おつかれさまです」
「おつかれさまです。名護さん、よかったですよ、とっても」
「嬉野さんのおかげです」
「いいえ、名護さんが真摯に向き合ったから、学生たちに届いたんですよ」
 照れ臭そうに首をかく名護さん。
「それで、どうされたんですか?」
「あ、そうそう。先ほど、本社からメールが共有パソコンに転送されてきまして。これ多分、嬉野さん宛てだなぁと思ったんで、お持ちしました」
「ありがとうございます。遅い時間ですし、そろそろ上がってくださいね」
「嬉野さんこそ、ちゃんと帰ってくださいよ。休まないと、夏風邪ぶり返しちゃいますよ」
「母にまた叱られないように帰ります」
 定年後、再雇用期間まで勤めたかあさんは、退職したが未だに研究員たちと仲が良く、名護さんは孫みたいなものだとかわいがられていて彼もかあさんを好いてくれていた。
八女やめさん、怒ると怖いですもんね」
 笑いながら彼が言う。
「そうなんですよ」
「じゃあ、向こうの戸締まりだけ済ませてお先に上がります」
「おつかれさまでした」
 名護さんが持ってきてくれたメールを読む。

うれしの製薬 研究所のみなさま

いつもお世話になっております。
貴社の『うれしいのん茶』のファンであり、今週貴社のオープン・カンパニーにお世話になっている娘の母です。
本日も、娘がお世話になりました。
娘が毎日貴社のオープン・カンパニーの話を楽しそうにしてくれ、日々の学びと仕事の繋がりを実感し、大学での研究により意欲的になっているようです。
深く感謝申し上げます。
特に、研究員の方とお昼ごはんを食べたときの話や、午後の説明とグループワークが楽しかったようで、ぜひご担当者様にお礼をお伝えしたく、お問い合わせフォームから失礼いたします。
明日までよろしくお願いいたします。
末筆ながら、貴社の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。

 宛名も送信主も書かれていないが、これは紛れもなくアンナだと確信した。見えないアンナの姿が浮かび、慌ててメールを机上に置き、奥のティッシュ箱からティッシュを取って目頭を押さえた。アンナは私を覚えているのだろうか。それとも、よっぽどアンリちゃんが私との会話を楽しげに話してくれたのだろうか。きっと、アンリちゃんに似ているのだろうな。
 ファイリングしたそのメールを、鍵のかかる引き出しに折れないようにしまう。アンリちゃんの笑顔を思い浮かべ、忘れたくないと思った。

八月三十日

 キツキアンリちゃんがうちのオープン・カンパニーに参加してくれた。とっても立派に成長していた。彼女の未来が明るいことを切に願う。
 アンリちゃんの話から、アンナたちも元気そうだとわかって本当によかった。
 私も思いを新たに、明日からまたがんばりたい。そして今日のことを忘れたくない。そう思った。

 日記をしたためてバッグにしまい、ラボの戸締まりをして帰路についた。今夜は星々が一段と煌めいて見えた。

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こんばんは。
また読みにきてくださったみなさま、初めてお読みくださったみなさま、ありがとうございます!
創作大賞に応募した『朝茶は七里帰っても飲め』。
私にとって、特別な作品です。
反省は多々あれど、読者のみなさまに愛していただけた。それが一番うれしくありがたいことだと、時間が経って改めて思うのです。
賞うんぬんでなく、毎日楽しみに読みに来てくださり、スキを押して帰っていただけた。三万字もの連載小説を。なかなかないことです。
そして、最終話にいただいたコメントが忘れられません。

続きを楽しみにしています。待望しています。

こんなうれしいことがあってよいのだろうかと思いました。金曜日の昼休み、職場のデスクで言いようのない感情に襲われました。

あれからずっと考えていました。
純粋な続き。黒幕にたどり着くまでとか。
ユウリとカインの過去話とか。
幕間の五ヶ瀬荘の日々とか。
どれも書くならかなりの時間をかけて向き合わなくてはなりません。
ささっとノリで書くのではなく、それこそ、ちゃんと構想を練って、設定を構築し、彼女たちが生きている、生きてきた姿をしっかり描き、読者のみなさまを裏切らないように。
また、描くにはどうしても闇の部分に触れないわけにはいきません。だからこそ、バランスを保つのがとても難しく、まだ納得いく作品を仕上げられる段階にありません。

でも、書きたい。朝茶から私をフォローして読んでくださっている方がいます。応えたい。
それで、考えていた案の一つである、未来の話を書いてみようと思いました。
もちろん、決して手は抜いていません。
案を書いていたとき、一番具体的なストーリーラインができていたんです。これに肉付けしていけば、今の私でも書けるかもしれないと思いました。夏の終わりにどうしても書いておきたくて、短時間ながら心を込めて書きました。

アンリは希望を託した人物です。そのアンリが成長した姿を、誰より私が見たかった。そしてきっと、ユウリも会いたかったと思うから。
何か感じて楽しんでいただけたらうれしく思います。

余談です。
もともとお茶が好きですが、この夏は時間がなくても朝お茶だけは飲むようにしました。
危ないときにはスポーツドリンクにも頼りながら、おかげさまで(?)今のところ熱中症にならずに済んでいます(一回倒れちゃったんですが、熱中症ではなく迷走神経反射だろうとのことで、この前再検査もして異常なしでした)。
水分補給(適度な塩分、糖分補給も)の大切さを身に沁みて感じました。
後、先日その再検査前にたまたま訪れたカフェでいただいた和紅茶(べにふうきという種類)もおいしかったです。
日本茶、中国茶、紅茶、それぞれおいしいですよね。お茶を楽しむっていいなと思います。

#朝茶は七里帰っても飲め

#スピンオフ

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