見出し画像

『LONESOME隼人』 郷隼人

留学生にすすめたい短歌シリーズ

14冊目は、郷隼人『LONESOME隼人』(幻冬舎)

年老いた無期懲役のしわの背にとがった乳房の女の刺青タツー

郷隼人『LONESOME隼人』

報復を恐れての処置かアラブ系の囚徒いきなりひげり落としぬ

ただならぬ歌です。
この作者は24歳で渡米し、1984年に殺人罪で終身刑となり、今もカリフォルニアで服役中という。朝日歌壇の常連だったようです。



囚人めしうどの闇商人の売りに来るコーヒー、食料、エロ本、煙草

香水パヒュームの匂う便箋ぐ夜は人恋しくて人恋しくて

なまなましい。



日の丸を描きし手作り鉢巻きをきりりと締めて便所トイレの掃除

無念なり手塩にかけしグッピーをトイレに流さるる房内セル捜査サーチにて

トイレ2首。刑務所のトイレにグッピーとは、意外すぎます。



指折りて五・七・五と歌詠めば真似て指折るメキシカンの囚友とも

こんなかわいい歌もあります。



刑房のはバリトンに閉ざされて施錠の音色ソプラノに澄む

「バリトン」だけなら思いつきますが、そのあとの施錠の「ソプラノ」にははっとさせられます。

今も短歌を詠まれているのでしょうか。

こんな記事をみつけました。
郷隼人さん、復活!(鈴木耕)

この記事によると、2023年11月に朝日歌壇に郷さんの歌が載ったようです。


いいなと思ったら応援しよう!