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『オールアラウンドユー』 木下龍也

留学生にすすめたい短歌シリーズ

12冊目は、木下龍也『オールアラウンドユー』(ナナロク社)

はなびらはやさしい地雷 踏むたびに胸のあたりがわずかに痛い

木下龍也『オールアラウンドユー』

鈴を手で包んでそっと揺らしたらちいさくにぶいぼくだけの音

読み終えてややふっくらとした本にあなたの日々が挟まれている

とても繊細で微妙ながら、共感できるこの感じ。「わずかに」「そっと」「やや」などの語彙が効いています。



春なんて根こそぎあげるその代わりずっと消えない夏をください

こちらは、春に「なんて」を使う意外性がありますね。



よくわらう巨人の歯にはまだきみの青い浴衣が挟まっている

爆発のあとのけむりのむこうから無傷のままで登場したい

アニメ的で、バカっぽくていいですね(笑)



前髪を耳にかければ母に似て明朝体のような横顔

「明朝体のような横顔」というのがいいですね。「前髪を耳にかければ」というのもいい。パーツがぜんぶいいです。



母さんの入院中に父さんはチキンラーメンばかり煮ていた

そんな母親が入院中に、チキンラーメンばかり煮る父(笑)



カマキリにPASMOを当ててうつくしいカマの閲覧料を支払う

こういうのが木下さんはほんとにうまいですね。


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