旦那が1ヶ月の育休をとって、夫婦で育休をとる意味を考えた。
旦那が育休をとることになった。
私は3度目の育休になるが、
旦那にとっては初めての育休。
3人目の子を授かったと分かった時、
「きっと私たちにとって最後の出産だから
最後くらい育休をとってみたら?」と勧めてみた。
旦那は「そうだねぇ〜…」と返事をしたものの、
あまり乗り気ではなかった。
なぜなら、自分が育休を取ることで周りに迷惑がかかることが分かっていたからだ。
旦那の職場はまだまだ男性社会で、
女性が育児の為に時短で働くことや軽い仕事になることへの配慮はあるけれど、
バリバリ働く男性がまとまって休むことは、それほど前例がない雰囲気があった。
何年か前に夜ご飯を食べている時に、
旦那の職場にいる育休を取った男性が、結局職場に何度も顔を出し、しっかりと休むことが出来なかったという話を聞いた。
私は「ありえない!私がその人の奥さんだったらブチギレてる!」と、その人の奥さんになった熱量で勝手にブチギレていた。
旦那はその人の育休に全く関わってはいなかったのだけど、「でも仕方ないんだよなぁ…」と、困り顔でポツリと呟いていた。
3人目の妊娠がわかった時、
私は真っ先に旦那に育休を勧めた。
旦那が「そうだねぇ〜…」とは言うものの、
乗り気ではないのはそういう訳だった。
そういう訳というのは、もし自分がちゃんと休まなかったら私が研ぎたての包丁の如くキレまくることも、休んだら周りの人達が困ることもどちらも理解しているという訳だ。
確かに旦那の仕事は途中で抜けたり、代わりの人を探すのが難しかったりする。それも分かる。
世間が男性の育休をすすめているけど、結局仕事によって、職場によって、そんなのは現実味を帯びない。
そもそもの仕事のシステムとして難しい場合もあるし、恐らくどの仕事も人手が足りない。
「うちの職場は人があり余ってて困ってるんです〜オホホ」なんて聞いたことがないし、必要な人数だけで回していくと、誰かが抜けた時に人手は足りなくなる。
誰かが休めば絶対に皺寄せは周りにいく。
簡単なことだ。
そんなことは分かってるはずなのに、少子化を解消すべく、世間は女性だけでなく男性の育休をすすめている。
システムが整っていないけど、育休をとれとれ、と言う。
システムが整っていないけど、あとはそっちでどうにかして!と現場に投げる。
そうすると、現場にいるお母さんやお父さんになった人は、頭を下げながら産休や育休を取るしかない。
〝子ども産むのがそんな偉いのか!〟
〝なんで人の産休育休で、私たちが犠牲になるの?〟
そんな言葉が、頭を下げながら、人の背後に見えるようになる。
実際に迷惑をかけているのだから、そう思われても仕方ない。
一方で、職場には「任せて!」「無理しない!」「自分の体や家族が第一!」と気持ち良く言ってくださる方々もいた。
今まで通り働けず、仕事に穴をあけることになる申し訳なさMAXの私からすれば、その方達は神様でしかなかった。
実際に自分が育休を取ったことがある方もいれば、取らずとも妊娠って、出産って、子育てって大変だよね、と心から理解してくださる方もいた。
それは私にとって、とてつもない救いだった。
そういう神様が職場にいたからこそ、私はいつか職場で産休、育休を取る人達には絶対に協力したい!いや、絶対にする!と、心に固く誓っている。
今回受けたギブをテイクとして返すのは、
いつかの産休、育休をとる方へなんだと思う。
もちろん産休育休だけでなく、お子さんのことや、パートナーのことや親のこと、自分自身のことで休む場合も同じ。そこはお互い様だと思っている。
だからこの恩を忘れずに、誰かが休みを取るときには私が出来る範囲のことなら気持ちよく仕事を請け負いたい。
私が旦那に育休を勧めたのは、そう言う訳だ。
そういう訳というのは、〝そんだけ男性が育休が取りづらい職場だからこそ、アナタが育休をしっかり取って、これからのお父さんになる人たちのパイオニアになりなさいよ?〟という訳だ。
旦那が『育休を取る』という経験は、間違いなくこれから育休を取る人へと繋がっていく。
私を救ってくれた職場の方々のような存在に、旦那にもなって欲しかった。
その為には、絶対に経験した方がいいんだよ。
システムが整ってなくて、現場に丸投げの育休制度を実現するには、システムを整えていくことは大切。間違いなく。
けど、それにはまだまだ時間がかかりそうだからこそ、周りの理解と協力が必要なのだ。
あとはもう個人的に、自分の可愛い子どもの産まれたてホヤホヤの貴重な姿を、仕事なんかぜーんぶ忘れて、なーんにも気にせず、しっかりと目に焼き付けろや!とも思っていた。
あっという間に大きくなる我が子を、夫婦で思う存分愛でて、可愛いさを共有したかった。
そんな時間、働きだしたらもう2度と取ることは出来ないんだから最後くらい自分達中心でもいいんじゃない?
子どもが大きくなって後悔しても、もう戻れないんだよ?
旦那は育休をとると、腹を決めた。
ただし、期間は1ヶ月。
私は「短いって!せめて半年!」と粘ったが、そこは旦那が譲らない。
「じゃあ、せめて3ヶ月!」と、値切る時の技を使ってみたものの、逆に「いや!絶対無理!むしろ2週間とかは?」と、値切り返しをされ、結局最初に決めた1ヶ月という期間は変えられなかった。
でも1ヶ月でもいいや。
そのかわり、1ヶ月、絶対に子どもの可愛さを思う存分堪能しておくれ。
さて、旦那は育休に向けて動き出すことになった。
安定期にはなっていなかったが、早い方が良いだろうと上司に私の妊娠と、育休を取りたいことを伝えた。
計画出産だったので、出産日が決まったらすぐに伝えたし、必要な書類を揃え、職場の人達へ頭を下げながら育休を取る旨を伝えていた。
その頃、私のiPhoneには、
ネットの情報がワンサカ流れてきた。
〝とるだけ育休〟とか、
〝旦那の育休中にこんな酷いことがあった〟とか、
〝せっかく育休とってもらったのに〟とか、
そんな記事や漫画ばかりが目につくようになった。
辞めておけばいいのに、そういうページをついつい開いてしまう。
勝手に読んで、勝手に嫌な気持ちになる。
するとネットが、〝アナタってそういう記事が興味あるのね?〟と理解して、またネットの大海原から私に『育休中の酷い旦那』の記事が届く。
悪循環がうまれ、目にする記事にのまれ、
〝もし旦那が育休中に一番くじひきに行ったり、平日空いてるからUFOキャッチャーやりに行ったりしたらどうしよう…〟
〝ゴロンと寝っ転がって、メルカリばっかり見たり、ゲームばっかりやったりしたらどうしよう…〟
という不安に苛まれてしまった。
「ねぇねぇ、育休の意味、ちゃんと分かってるよね?」
「産後の恨みは一生の恨みって言葉、知ってる?」
「ないと思うけど、フィギュアとか買いに行かないよね?」
言わなくてもいいのにイチイチそういうことを言って旦那を怒らせた。
私にしつこく言われて頑張って育休を取ろうとしてるのに、突然そんなことを言われた旦那の身にもなってみろ!と思うが、
私は自分がお願いした分際で、夫婦でとる育休に対して色んな不安を抱えてしまっていた。
「パパが育休をとってくれて良かった!」と喜ぶ未来の自分の姿と、「こんなことならパパは育休なんかとらなくて良かったのに!」と泣き叫ぶ姿、どちらも想像して胃がキリキリと痛んだ。
育休で頑張っている旦那さんの記事を探して、旦那に読ませようと画策したが、
「俺、そういうの先に読みたくない。
こういうこと絶対しなきゃ!って思いたくないし、自分でやれることを考えてちゃんと頑張るからさ。
ママの体が回復するように休ませるし。
だから、そういうのは育休が終わったら答え合わせのつもりで読むわ。」
と一蹴された。
出産は大変だった。
そして出産後はもっと大変だった。
お股の傷や子宮のダメージだけでなく、
麻酔で刺した針で背中の硬膜から髄液が漏れて、
文字通り起き上がることも、赤ちゃんのお世話も出来なかった。
病院の看護師さんや先生から
「退院を伸ばして、病院でしばらく安静にした方が良いですね。家でゆっくり出来るなら帰っても良いですけど、お子さんもいますよね?
旦那さんも育休って言うけど、ねぇ?
多分病院よりは絶対にゆっくり出来ないと思いますよ?
病院に居た方がきっと良いですよ!」
そんな、優しい言葉をかけてもらった。
その優しい言葉の裏には、
〝妻がこの状態で家が回るほど、旦那さんは動けないのが普通ですよ…〟という隠された意味があることにもしっかりと気付いた。
だけど私は退院した。
起き上がると吐き気と頭痛がして、
耳鳴りも続いている。
すぐに横になりたい。
そんな状態で退院した。
だって家には、家族がいる。
だって家には、旦那がいる。
なんとかなる。旦那がいれば。
なぜだか強くそう思って、
具合が悪いまま退院した。
あれだけ散々不安がっていたけれど、
私は多分、ちゃんと旦那のことを信じていた。
だから、退院した。
小雨がシトシト降る中、
旦那は車で迎えに来てくれた。
ぐったりしたまま家に帰ると
娘のベッドと、すぐ近くに私の横になる場所も準備してくれていた。
「お腹すいてる?
朝ごはんの残りだけど…」
お昼ご飯を準備してくれていて、
その時に飲んだ味噌汁は、涙が出るほど美味しかった。
あったかくて、
美味しくて、
あぁ、きっと大丈夫だ。
やっぱり退院して良かった。
味噌汁をすすりながら、心の底からそう思った。
育休中の旦那は、本当に私を一歩も歩かせないくらい朝から晩まで動き続けてくれた。
洗濯物を干す旦那の側で
「パパ、本当にありがとう…」
寝っ転がったまま私が言うと、
「ママが命懸けで出産してくれたんだからママに休んでもらうのは当然でしょ。
それに俺は親なんだから、家のことも子どものこともやって当たり前だしね。
それよりも、俺がこのタイミングで育休とったのって意味があったんだと思う。ママをちゃんと助けろよってことだと思う。
多分、お父さんのお陰だな。」
リビングの棚でこちらを見て優しく微笑むお父さんの写真を眺めて、ポツリと旦那が言った。
〝お義父さん、ありがとうございます〟
私も心の中で言った。
産まれてきた娘は
それはそれは可愛くて、
ふにゃふにゃで柔らかくて、
旦那は娘が泣くたびに抱っこしたりあやしたりしていた。
私がやるのはおっぱいとオムツ替えくらい。
あとは横になって、娘を眺めたり、旦那の作ったご飯を食べたりして過ごした。
「俺、朝ごはん食べながら昼ごはんと夜ご飯のこと考えて、買い出し行って料理して、なんかずっとご飯のこと考えてる気がする。
それプラスやることいっぱいあって、全然休む時間なんて無いね。
夜中も授乳してお世話して、まとまって寝れないし。
当たり前だけど、世のお母さんは凄いね。
ほんと改めてママに感謝だわ。」
突然ですが、旦那が育休をとったら、絶対に気付いて欲しいこと第一位!!!
ドゥルルルルルルドゥンッッ!!!
『家事と育児の大変さ!!!』
育休なんてラクでしょ?
休んでるだけでしょ?
じゃないのよ!!!
そうなのよ!
光の速さで1日が終わるの!
何をした訳でもないのに1日が終わるの!
そこまで気付いてくれたならもういい!
その気付きを絶対に職場や飲み会で
でっかい声で言うんだぞ!
頼んだよ!
旦那も普段から家事や育児をしてくれてる方だけど、それでもそう感じてくれたことは嬉しかった。
産後の1週間健診には一緒に行った。
長男の時に1週間健診に1人で行き、物凄く大変で泣きそうになった記憶が今でも鮮明にある。
どのお母さんも旦那さんや自分の親が付き添ってくれていたのに私は1人で病院に行って、
ずっと待たされてお腹が空いて泣き叫ぶ長男を抱きながら、一緒に泣きそうになっていた。
病院で孤独で押し潰されそうになっていた。
母乳も上手く出ないから授乳も出来ない。
かわりに抱っこしてもらえる人もいないから、1人で立ってユラユラ揺らしながら、泣き止まない長男を見つめることしか出来なかった。
今回は旦那と初めて一緒に1週間健診に行けた。
旦那はずっと娘を抱っこしていた。
長男の時の孤独だった記憶を伝えると、
「それは大変だったね。長男の時は一緒に行けなくてごめんね。」
と言ってくれた。
過去の私の孤独や悲しさが、実は心にずっと張り付いていたのだと病院に着いた時に思った。
けれど、旦那の〝ごめんね〟は、それらを全部救ってくれた一言だった。
周りを見ると、あの時の私のような1人で来ているお母さんはいなくて、みんな赤ちゃんが泣いても2人で順番に抱っこしていてホッとした。
一緒に気持ちを共有出来るだけで、きっと心強いから。
長男の時とは正反対で、娘はよく寝て、一度も泣かなかった。
娘の健診の時には、旦那は「俺がやる!」と、オムツを替えたり、服を脱がせたり、娘のお世話をせっせとしていた。
看護師さんに「可愛いですね〜!」と言われると、「いや〜、ほんとに!」とデレデレ具合をしっかりと発揮して笑いもとっていた。
帰り道、今日は一緒に行けて良かったね、と2人で話しながら帰った。
旦那が安静に過ごさせてくれたお陰で、
退院して2週間ほど経つと身体は大分良くなってきた。
私は起き上がって洗濯を干せるようになった。
「俺がやるからママは寝てて!」
と言われたけど、旦那も流石に疲れが溜まってきているように見えたし
私は身体が回復した証拠なのか、
逆にずっと寝るのが辛くなってきた。
だから、洗濯を干したり畳んだりくらいはやらせてもらった。
座って過ごす時間も増えた。
毎日カレンダーを見るたびに
「あとちょっとで育休が終わっちゃう」と
2人で話した。
旦那が育休をとってくれて良かった。
旦那と結婚して良かった。
素直に、そう思えた。
なんでそんな風に思えたのか考えてみた。
〝私がラクできたから〟
〝家のことを全部やってくれたから〟
という簡単な理由ではない。
〝私が満足できたから〟
〝旦那が思った以上に動いたから〟
とも違う。
なんというか、
〝旦那の愛が感じられた時間だったから〟
だったのかなと、振り返って思う。
息子達への愛。
産まれた娘への愛。
両親への愛。
私への愛。
家族への愛。
旦那の育休を通して、旦那が家族を愛してくれていることが痛いほど伝わってきた。
それが、嬉しかった。
「あーあ。
もう娘をこんなに毎日抱っこ出来ないのかよ!
長男と次男の送り迎えも出来ないのかよ!
やっぱり育休、半年くらいとればよかった!」
育休があと数日で終わる頃に、
旦那が寂しそうに言った。
その言葉が
旦那にとっての育休の全てだな、と思った。
私だけでなく、旦那にとっても満たされた時間になったのだと分かって
それが、私にとっての理想の育休なのだと気付いた。
夫婦でとる育休は
私が、私だけが、満足するものではなくて、
旦那も一緒に、〝良い時間だった〟と思えることが
私にとっての理想なのだと気付いた。
『娘の時の育休』と言えば、
私と旦那には同じ景色が蘇る。
それも一つの景色ではなく、沢山の景色が。
それが、夫婦で育休をとる最大の良さだと思う。
今回、夫婦での育休を経験出来て良かった。
いつかの未来の私達が、
思い返して愛おしむことのできる同じ景色が
沢山残ったから。
さて、〝産後の恨みは一生の恨み〟
という言葉があるけど、
逆を返せば
〝産後の感謝は一生の感謝〟にもなる。
私は多分、
旦那の育休の1ヶ月を一生感謝すると思う。
そして、旦那と結婚出来て
私はなんて運が良かったんだろうと
今のところ、心の底から思っている。
普段はトムとジェリーや鬼滅の刃の実写版のような我々なので
またすぐに元通りだとは思うけど、
旦那への怒りが込み上げて、
更に怒りを通り越して顔が能面のようになってきた際には
このnoteを読み返して
深く深く深呼吸することを、ここに誓う。
まぁ、私のことなので
深呼吸をした後にスラリと刃を抜く可能性は全然あるんだけどね。
だから旦那よ、絶対に気を抜くなよ。
【おまけ】
旦那が育休中に作ってくれた絶品料理たち
旦那のパンケーキが美味すぎて、仕事辞めてパンケーキ屋さん開けば?くらいになっている。
育休を経て、我が家の休日の朝は
旦那の作るパンケーキになる日が増えた。
お近くにお越しの際には
ぜひお立ち寄りください。
※日曜の朝にパンケーキのいい匂いがする家です。
※違う家だった場合は責任はとりません。
※私のnoteを読んで来ました!と伝えてくれたら、美味しいコーヒーもサービスします。