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「一生このまま・・」⑨ヨガ仲間の恋愛事情


 
 暇を持て余し、佐知は目黒のヨガ教室に通い始めた。頻尿が気になり、コアトレのために何か運動をしなければと思ってのことだった。
 ヨガとピラティスのスタジオで、「コアトレ」「頻尿」「目黒」で検索したら出てきたのだ。
 家から自転車で15分。佐知は電動自転車を持っていないので、それもいい運動になった。佐知の家から教室まではかなりの坂を登らねばならない。立ち漕ぎなんて久しぶりだった。

「うんしょー!!」
 思わず掛け声をかけ、ペダルを漕ぐ。マスクが息苦しかった。
 しばらく前から、「野外で人との距離が2メートル以上ある場合、マスク着用義務なし」とされたが、マスクなしで外出する人はあまりいなかった。してないと、やはりヘンな目で見られる。

 ヨガももちろん、マスクヨガだ。平日の昼間など参加者も少なく、ソーシャルディスタンスもたっぷりだが、スタジオではマスク着用義務と入場時の検温、手指消毒が求められた。

「息吸って~、吐いて~」
 先生のインストラクションで深い呼吸をすればするほど、マスクが鼻口に張り付いて、息苦しかった。

こ、これって、逆に酸欠にならねーか?
 と佐知は思ったが、ヨガに行った日は、夜もよく眠れた。
「ヨガ行ってきまーす」
 家族にランチを作り置き、午前中のクラスに出る。
 終わったら、そこで知り合った大人女子たちとランチをするのが、一週間に数回のお楽しみだった。
 マスクを付けたり外したりしながら食事をするのも面倒だったが、家族以外の人、それも同世代同性の仲間と会話を楽しみながらの食事は、シャバの空気そのものだった。

 妹分の瞳は結婚して下町住まいとなってしまったので、そうそう会えない。初孫の世話をしようと張り切っていたのに滅多に会わせてもらえないし、対面の仕事もあれ以来頼まれなかった。
 出かける機会は自分で作らないと、このままおむつをして自分が寝込んでしまいそうだった。

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