日本の人に見られない
先日、旧正月がありました。フランスでも中華圏の春節(旧正月)はたいぶ浸透していて、去年は学校給食に中華料理が出されたそうです(今年は冬季休暇と旧正月が重なっていたせいか、なかった)。毎年 旧正月にはなんとも言えない気分になることがあり、今年もやはり。この時期の終盤にはうまく身構えることができるようになって、対処にも少し慣れるのですが。
今回は、旧正月にまつわる、さらに常にどう対応していいか悩むことについて書いてみます。
アジアの圧倒的マジョリティ
コロナ以前よりもまだまだ少ないものの、中国からパリに来る旅行者の数は多いです。加えて私の職場では中国からのお客様が多いので、働いている人の中でアジア系というと中国の人が圧倒的大多数。このような背景があるので仕方のないことなのですが。
まず、去年のことです。「はい」と旧正月に小さなうさぎのかわいらしいオブジェをいただきました。ほとんど会話はしたことがないものの、いつもあいさつをしてくれるやさしい方からでした。この方は欧州の人だと思います。突然のことだったので、「あ、あぁ。ありがとうございます」と受け取りました。「日本では旧正月は祝わないんですよね」などとは言わずに。その気持ち自体はとてもうれしかったのです。
そして、今年。別の、またあいさつだけ交わすような方から「あけましておめでとうございます!」と。この方はアジア系。通りがけに言われただけだし、こちらも「あけましておめでとうございます!」と返しました。
出てしまった言葉は消せない
次に、これが今回の中心になる話なのですが。またあいさつだけ交わすような人。この方はアジアの人ではありません。今まで話したことはなかったけれど、つかつかと近づいてきてくれて。かわいらしい笑顔で「あけましておめでとう!」と。
その時、絶妙な間があったので、
「あ、日本では旧正月は祝わないんだけどね。だけど、ありがとう!」
って、言ってしまったんです!そこで相手がどんな顔をしたかも憶えてないくらい、「あ、しまった」と思いました。後から、「なんで余計なこと言っちゃったんだろうなー。せっかく話しかけてくれたのに」と、ものすごい後悔の念に苛まれました。
「どう、応えるのがよかったんだろう」ぐるぐる頭にそのことが巡ります。
その場では「ありがとう」って言っておいて、またいつか説明すればよかったのかなーなど。
なんで言ってしまったのかと考えると、心の奥で「この人ともっと仲良くなりたいな」って思ったからなんじゃないかと思います。ちゃんと自分のことを伝えたかった気持ちが働いたのでは。
それにしても、申し訳ないことをしたという思いで一杯になり。いろいろ考えて、翌日さらっとアメを渡してこようと思いつきました。職場の仲間にあげたら喜ばれた日本のいちご味のアメがあったので、それをぽんと。「ごめんね」って謝るのも変だし、相手もきっと「しまった」と気を揉んでるだろうから、仲良くしたい意思を伝えるような軽いアクションにしよう、と。
結局、会えたのは3日後だったけれど、イメージ通りアメを渡せました。そしたら「アリガトウ」って言ってくれた!ナイス リアクション!
「どこから来てるの?」って聞いたら、「アルメニア」と。みんないろんなところからパリに来てるんですね。こちらから名前を聞くこともできたし、仲良くしたい意思は伝わったハズ。そんな訳で私の気持ちはやっと落ち着きました。
その「おめでとう」と言われた当日は、他にも いつもあいさつを交わすだけだけど 感じのよいマネージャーさんが、初めて つかつかと近づいてきて、
「あなたは何人ですか?中国人?」
と聞いてくれました。「いえ、日本です」と答えると、「あ、そう」とそれだけ言ってにこにこ去って行きました。この方は日本では旧正月を祝わないということをよく知る人だったんだと思います。
なかなかここまで精通してる人って少ないんですよね。去年、同じアパルトマンに住むお隣さんからも旧正月に「おめでとう」って言われたことがあって。このお隣さんは私たちが日本人であることを知っていたので、「日本では旧正月を祝わない」ことは知らなかったんだなーと、後から事情が飲み込めたのでした。言われた瞬間は1月1日からはだいぶ経ってるのに、何で今ごろ「あけましたおめでとう?」と疑問に思ったのです。
そんなこんなで、旧正月にはどういう反応をするのがいいのか悩みます。世界に散らばるアジア人のうち、大半が中華系なので仕方ないですけどね。最近は日本からの旅行者も少なく(韓国からの人の方が多い)、つい先日も職場に着任したばかりの人に「へー、日本人なの?珍しいね」って言われたばかり。それくらいパリでの日本の人は少ないのです(以前よりも少なくなった)。
ニーハオにどう応える?
街を歩くと、たまに「ニーハオ!」と馬鹿にしたような態度で言われることがあります。友好的な「ニーハオ」もありますが、こういう時はどう返すのがいいんだろうと毎回悩みます。できれば きょとんとした顔を返して「私は北京語が分かりません」って態度をしようかな、とか思います。「世界のアジア系は中華系だけじゃないんだよ」と微力ながら主張したいかな。
人を国籍や人種で判断したい訳じゃないけれど、その人を知る手がかりになるのは事実。先日も、職場に新しく入ってきた人が、無愛想だなと思っていたら、ロシア語もしくはウクライナ語を話す人で。詳しくは聞いてないのですが、あまり笑わない理由が飲み込めて、安心したことがありました(ロシア圏の人は厳格なイメージで、あまり笑わないと聞いたことがあって、モスクワ空港でもそれを実感したことがあった)。
その人の背景も考慮して理解し合えればいいな。すぐにではなくとも少しずつお互いを知っていけたら。
今回の、対応に思い悩んだことも仲良くなるためのきっかけだったと思えるように。何かやらかしてしまった後は、どう落とし前をつけるかが大事なんだなーと思い知りました。まだまだ関係を築いていくのはこれから。今度はアルメニアについていろいろ聞いてみようかなと思っています。
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文字数メモ : 2535字
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