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見える世界のピントを絞るとどう変わる
2024年3月23日に、佐藤友美さん主催「さとゆみゼミ」を卒業。卒業後も、文章力・表現力をメキメキと上げ続けるため、仲間と共に、note投稿1,000日チャレンジをスタート。
長男が4歳のとき、彼の通っている幼稚園の作品展を見に行った。夫と長男と私の3人で、幼稚園まで歩いて向かう。玄関を過ぎてまっすぐ廊下を行くと、左手に年少さんの教室があった。
教室にはいると、子どもたちの作品がところ狭しと飾られていた。天井から暖簾のように吊り下がっていたのは、画用紙に描かれた色とりどりの絵だった。壁には、立体工作が並べられている。まずは、我が子の作品を探して写真を撮った。長男は仲良しの友だちを見つけて、追いかけっこをして遊んでいた。
長男の作品を見終えると、子どもたちの作品をぼんやり眺めていた。丸の中に目や口、鼻らしきものが描いてある。これは人の顔だろうな、可愛いなぁ。
せっかくだから、お兄さんお姉さんの作品も見てみようと、2階の展示会場に足を向けた。階段を上ってすぐ左に、年中さん(5歳)の教室があった。年中さんの絵を見てみると、描かれている「人」には髪の毛が生えているし、洋服も着ていて手足がある。それに、人が複数になっている。絵の中で笑っている人々。家族かな、友達かな。
年中さんのクラスのすぐ隣には、年長さん(6歳)の教室。今度は、人のまわりに「風景」が描かれている絵が多かった。建物や山、花、太陽……。もちろん、個人差はあって、すべての絵が同じというわけではない。でも、子どもたちの見える世界が、こうやって広がっていくんだなぁと思った。
彼らが見てる世界を擬似体験してるみたい。
一番幼い年少さんは、ぼんやり人の目や鼻や口を認識している。年中さんになると、自分を取り巻く小さなコミュニティに気づいて愛おしむ。そして、年を追うごとに、見える範囲が広がり解像度も上がる。
なんの講習会だったか、子どもの視界の狭さをビジュアルで見せられたことがある。子どもが見えているのはスクリーンの真ん中だけで、両脇や上下が暗くなっていた。
6歳くらいの幼児の平均的な視野は、左右(水平)で90度程度、上下(垂直)で70度程度とされています。一方、大人の平均的な視野は、左右(水平)で150度程度、上下(垂直)で120度程度あります。
上下左右ともに、大人の6割程度しか見えておらず、子どもの視野はかなり狭いことが分かりますね。
この話を聞いたときは、「運転中、子どもがいたら気をつけよう」くらいにしか思わなかった。
だけど最近、思うのだ。
大きなランドセルを背負ったまま、道端にしゃがみ込んで何かを観察している小学生。車工場の前で立ち止まって、作業員さんをボーーっと見つめている小さな男の子。そんな子どもたちを見るたびに、心の黒目を合わせてみる。
彼らが見てるものは、どれほど鮮やかでクリアなんだろう。キュゥッとピントを絞ったカメラのレンズ。ファインダー越しの世界を想像する。
大人になって見える範囲は広がったけど、広角レンズみたいに鮮明に見えるわけじゃない。それなら、あえて視界を狭めてみたらどうだろう。
すぐに思いついたのは、紙の本を読んでいるとき。真っ白な紙に横たわる黒い文字の列。黒目だけが上下を繰り返して、文字と意味を追いかける。視界はミニマムなのに思考の広がりはマキシマムだ。
やっぱり本は最強だ、というオチになる。