人権デューディリジェンス~法の下の平等
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
昨夜は、家族で「美女と野獣」(実写版)を見ました。
東京ディズニーランドで「美女と野獣」のアトラクションを2回もやってからすっかり「美女と野獣」に馴染んでしまい、テーマソングも「ふんふんふんふーん」と鼻歌でハミングできるようになりました。
それで、今まで見ていなかった映画を見たくなって見たのですが、時代背景のせいか、男女差別や古い価値観に溢れる話でした。
「女の子が本を読むなんて」とか、「見た目が野獣なんて!」という価値観は、今の時代、差別とかヘイトスピーチとか言われかねないものだと思いながらの鑑賞でした。
ビジネスの現場においても、古い価値観のままでいると、無意識に差別をしてしまっているかもしれないので注意が必要です。
法の下の平等
日本国憲法は、14条で、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めています。
「法の下に平等」は、行政権・司法権が法を平等に適用・執行しなければならないと共に、立法権が平等な法を制定しなければならないことを意味しています。
そうすると、行政、司法、立法に関係のない民間人(「私人」といいます)は、憲法14条とは無関係かと思われるかもしれません。
しかし、私人と私人の関係においても平等原則が適用されます(どうやって適用するかについては、いろんな説があります)。
相対的な平等
憲法で保障される平等は、何がなんでも同じにする!という意味ではありません。
例えば、女性従業員だけに産前産後休暇や生理休暇を与えることが不平等かというと、そうではありません。
女性の身体の構造から男性と違った優生保護的な扱いをすることは必要ですし、その手段が社会通念上合理的なものであれば、憲法違反にはなりません。
アメリカでは、アファーマティブアクションといって、歴史的に差別を受けてきた黒人や女性を優先的に大学に合格させたりする措置を取ることがありますが、そのような優遇措置も、行きすぎの逆差別とならない限りは不平等ではない、とされています。
平等の内容
憲法は、禁じられる差別を列挙しています。
まずは、人種による差別。
最近ではヘイトスピーチの問題が取り上げられたり、DHC会長の差別発言が問題となったりしましたが、そのようなことが禁止されます。
次に、信条による差別。
宗教上の信仰や思想・政治上の主義によって差別してはならなりません。
採用した従業員が特定の宗教を信仰したり、特定の政党の党員であることを理由に解雇するようなことは憲法違反となります。
ただし、宗教活動や政治活動に傾倒しすぎて会社の業務遂行に支障が出ているような時には、それを理由に指導したり懲戒したり、酷い場合には解雇することも時には許されるでしょう。
そして、性別による差別。
歴史的には男女の別による不合理な差別が問題となってきましたし、未だに男女差別は誰しもが一度や二度は必ず感じていることでしょう。
最近では、男か女かという枠組みを超えた性別による差別も問題となっています。
最後の社会的身分・門地による差別は、判例は、「人が社会において一時的ではなしに占める地位」というように少し広めに解釈しています。
しかし、もっと狭く、「生来の身分」とか「自己の意思をもってしては離れることのできない固定した地位」による差別であるとする説もあります。
同一労働同一賃金が憲法14条に列挙された社会的身分による差別に該当するかどうかは微妙ですが、憲法14条は、列挙した差別以外の差別も禁じています。列挙された差別は、典型的な差別を例示的に列挙しているだけと解釈されています。
同一労働同一賃金は、同じ労働を提供する労働者を処遇において差別してはならないという原則ですから、差別的な取扱いをしている場合には憲法違反となります。
ビジネスと平等
ビジネスを行うに当たっては、従業員を平等に扱うこと、取引先の従業員に差別的な扱いをしないこと、顧客や消費者を差別的に扱わないことなど、各種ステークホルダーに差別がないように注意することが大切です。