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テレワークと事業場外労働みなし制
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
新種のヤツはバリアもくぐり抜けてくるという米国からの報告があり、再び怯えた生活を余儀なくされています(ヤツに関連する記事だと感知されないようにしようとしたら、隠語風になってしまってすみません)。
バリア張った後はリアル会議にも出る気満々でしたが、当面テレワークにしておいた方が安全かもしれないと思い始めています。
ということで、以前にも書きましたが、もう一度テレワークについて確認しておくことにしました。
テレワークとは
自宅で仕事をすることをリモートワークとかテレワークなどと呼び、その呼び名もここ2年くらいで一気に浸透しました。
テレワークというのは、「tele」と「work」を足した造語で、teleは「離れた」という意味を持ちます。
離れた人同士の会話を可能にするtelephone(テレフォン)に使われている「tele」も同様の意味です。
そのほかにも、telegram(電報)、telepathy(テレパシー)、television(テレビ)など、「tele」が使われた単語はたくさんあり、いずれも、離れた意味を持っています。
「リモートワーク」という言い方もあり、テレワークとほとんど意味は変わりませんが、歴史的には「テレワーク」という言葉の方が長く使われてきており、政府も「テレワーク」という言葉を多く使用しているようです。
一般社団法人日本テレワーク協会は、テレワークを、「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義しています。
事業場外労働のみなし制
労働基準法上、労働者が事業場施設以外の場所で業務に従事することに関する定めがあります。
第38条の2 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
② 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
③ 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。
オフィスや工場などの事業場での労働は、労働者がどれだけの時間働いたかを把握することは可能ですが、外回りの営業マンや取材記者等は事業場の外で働くことが必要で、しかも、直行直帰だとその労働時間を適正に把握することが困難です。
いつもはオフィスで働いている労働者が、出張する時も同様に、出張先での労働時間を適正に把握することは困難です。
そのような事業場外における労働について、原則として所定の労働時間だけ労働したものとみなすのが、「事業場外労働のみなし制」です(1項)。
例外として、当該事業場外での業務を遂行するためには通常の所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間を労働したものとみなします(1項ただし書)。この場合に、労働組合等との間で労使協定があれば、その協定で定めた時間を当該業務の遂行に通常必要とされる時間とみなします(2項)。
テレワークは事業場外労働みなし制の対象?
テレワークは、事業場外における労働ですから、当然この事業場外労働のみなし制の対象となるように思えます。
しかし、テレワークは情報通信機器を活用したもの、と定義されているように、パソコン等を利用して会社のネットワークに接続して仕事をすることが多いため、比較的労働時間の管理が容易です。
そこで、厚生労働省は、テレワークにおいて以下の2つの要件をいずれも満たす場合に、事業場外労働のみなし制を適用できることとしました(「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。
① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
以下の場合については、いずれも①を満たすと認められる。情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはない。
・ 勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
・ 勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
・ 会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合
② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
以下の場合については②を満たすと認められる。
・ 使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合
つまり、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務のいずれにおいても、会社の監視(コントロール?)下にない場合には、事業場外労働のみなし制の対象となり得る、ということです。
労使協定で業務の遂行に必要な時間を定める時は、その協定には有効期間を定める必要があり、また、協定で定めた労働時間が1日8時間を超える場合には労基署長への届出が必要です(労働基準法38条の2第3項、労働基準法施行規則24条の2第3項)(超えない場合は、届出不要)。
この届出は、三六協定の届出に付記して行うことも可能です(労働基準法施行規則24条の2第4項)。
働き過ぎにも注意
在宅でのテレワークは、帰宅時間を気にせずにできるため、ついつい夢中になって仕事をしすぎてしまうことがあります。
事業場外労働のみなし制の対象とすると、労働時間を労働者個人の管理に任せてしまいがちになりますが、働き過ぎによる責任は会社にかかってきます。
仮に事業場外労働のみなし制の対象とするとしても、労働時間の管理はしっかり行い、働き過ぎによる心身の不調が起きないようにしましょう。