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従業員の私生活上の問題にどのように付き合うか
こんにちは。弁護士の檜山洋子です。
今読んでいる小説が老人介護施設の話なんですが、職員たちがとても愛に溢れていて、将来はこんな施設に入りたいななんて思っています。
でも現実には、こんな美しい話はないようにも思えますし、あったとしてもお金に余裕がなければ到底入れないんだろうと思います。
そして、お金に余裕がなければ、家族が介護をしなければならなくなります。
お金に余裕がないのだから仕事をして少しでも収入を得たいのに、介護しなければならないために、仕事に制約がかかったり仕事を辞めざるを得なくなったりして、悪循環に陥ることも・・・
わが社の従業員がそんな問題を抱えている時、会社はどうすればいいのでしょうか。
私生活上の問題
従業員が私生活上問題を抱えていると、ほぼ確実に業務に何らかの影響があります。
介護で寝不足になっている、家に残してきた不登校の子どもが気になる、借金が嵩んで返済に困っている、夫婦仲が悪くて離婚を考えている・・・
職場ではがんばって笑顔を作っている従業員も、心の片隅には心配事がへばりついています。
心配事や寝不足のせいで、ミスが多くなったり、業務の効率が悪くなったり、何よりやる気も元気もありません。
そんなことでは、本人もしんどいでしょうし、会社経営にも悪影響が及びます。
会社の健康管理義務
会社は、従業員に対して安全配慮義務を負いますから、従業員が会社の業務で健康を害することのないようにする義務があります。
労働時間の適正管理や各種ハラスメントの防止、健康診断の実施、危険有害業務に対する安全配慮義務など、様々な健康管理に関する義務があります。
では、会社は、従業員の私生活上の問題にまで配慮する義務があるのでしょうか。
純粋に私生活上の問題であるならば、そこに会社が介入していくことは、本人の意思に反してすることはできません。
不当なプライベートへの介入である「個の侵害」として、パワハラの被害を訴えられる危険性もあります。
したがって、従業員の私生活上の問題に対しては、慎重に対処する必要があります。
しかし、明らかに、業務中に上の空であるとか、明らかに顔色が悪い、ミスを多発するなどのように、労務提供義務に支障が生じ、または生じる可能性が高まっている時には、会社での労働環境と相まって健康を害する危険性があります。
そのようなときには、会社は、本人との面談をして、働き易い環境作りのサポートをする必要があります。
なお、本人とのやり取りについては、全て記録に残しておくようにすれば、後々何かトラブルが発生したときに、会社がやるべきことはしていたことを立証することができます。
本人が安心して経営陣や上司に私生活上の問題を相談できる関係性を、日ごろから作っておくことも大切です。
外部専門家との連携
従業員の抱える問題は、かなり深刻なケースも少なくありません。
そのようなケースについて、社長や上司が1人の判断で対応してしまうと、かえって問題が悪化することもあり得ます。
したがって、従業員の問題が取りかえしのつかないことになってしまう前に、早めに、精神医療や法律等の専門家に、会社として相談できる体制を整えておくことも有効です。
できれば、そのような専門家と従業員も、日ごろから面識を持たせて友好関係を作っておくといいでしょうね。
会社が専門家の費用を負担して、従業員の悩みを解決することができれば、たいへん有益な福利厚生になります。