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労働条件通知書は電子メールで送ってもいいか

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 エコのためにペーパーレスが進み、社内の書類も電子化されている会社も増えているようです。

 そんな中にあって、法曹業界はなかなかペーパーレスが進みません・・・もともとペーパーが好きな人達の集合体だからかな、と思うのは私の勝手な偏見ですが(本は紙の本を読みたい、とか、電子メールで送られてきたものは一旦紙に出力しないと理解できない、とか・・・)、重要書類の応酬を繰り広げる世界では、おいそれと電子化することに抵抗があるのかもしれません。
 とはいえ、SDGsに向けた取組みも待ったなしな状況になってきて、法曹業界もやっとWeb上での書面提出がスタートしそうです。
 これが普及すれば、重い紙の裁判記録を引きずりながら持ち歩くことをしなくてよくなるので、非力な私にはとても嬉しいことです。
 しかし、反面、大量の裁判記録の中から目当ての箇所に辿り着くにはやはり紙媒体の方が早いので、データを上手く使いこなせるスキルを身に付けておかないと、とんでもなく仕事に時間がかかってしまうかもしれません。

 ペーパーレスの利点は、エコで荷物が軽くなる、というだけでなく、検索しやすいという点もあります。
 例えば小学校で配布された手紙には、大切なことが書かれたものがありますが、なんせ大量に持って帰ってくるもんで、どこにやったか分からなくなることもあります。
 そういうときに備えて写真に撮って学校フォルダに入れているのですが、最初からデータで送ってもらえれば(最近はデータでも送られてきます)、写真を撮って保存する手間が省けますし、紛失の危機に直面することもありません。
 大切な書類こそ、電子データにしておく方がいいと思います。

 このような世の流れに沿って、労働者を雇い入れた時に交付する「労働条件通知書」も書面の交付だけでなく、FAXや電子メール等での明示ができるようになりました。

 ただし、労働者が希望することが条件です。

 たぶん、今どき、自宅にFAX機を備えている人は少ないと思いますので(固定電話すらない人が多いのに・・・)、FAXでの明示よりは電子メールの方が需要が高いんじゃないでしょうかね。

 では、この「電子メール」というのは、どこまでが含まれるのでしょうか。

 解釈例規(平30・12・28基発1228第15号)は、「電子メール」について以下のように説明しています。

 「電子メール」とは、・・・特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の影像面に表示させるようにすることにより伝達するための電気通信(有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう(電気通信事業法第2条第1号)。)であって、
① その全部若しくは一部においてSMTP(シンプル・メール・トランスファー・プロトコル)が用いられる通信方式を用いるもの、又は
② 携帯して使用する通信端末機器に、電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式を用いるもの
をいうと解される。

 そして、①には、パソコン・携帯電話端末によるEメールのほか、Yahoo!メールや Gmail といったウェブメールサービスを利用したものも含まれる、とされています。

 また、②には、RCS(リ ッチ・コミュニケーション・サービス。+メッセージ(プラス・メッセージ)等、携帯電話同士で文字メッセージ等を送信できるサービスをいう。)や、SMS(ショート・メッセージ・サービス。携帯電話同士で短い文字メッセージを電話番号宛てに送信できるサービスをいう。)が含まれる、とされています。

 また、LINE や Facebook 等のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)メッセージ機能等を利用した電気通信も含まれるとされています。

 なお、「上記②の例えばRCSやSMSについては、PDF等の添付ファイルを送付 することができないこと、送信できる文字メッセージ数に制限等があり、また、原則である書面作成が念頭に置かれていないサービスであるため、労働条件明示の手段としては例外的なものであり、原則として上記①の方法や SNSメッセージ機能等による送信の方法とすることが望ましい」とされていますので、気をつけましょう。

 労働者が開設しているブログ、ホームページ等への書き込みや、SNSの労働者のマイページにコメントを書き込む行為等、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、第三者が特定個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものについては、「その受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」には含まれません。

 また、サービスによっては、情報の保存期間が一定期間に限られている場合があるので、労働者が内容を確認しようと考えた際に情報の閲覧ができな い可能性があるため、使用者が労働者に対して、労働者自身で出力による書面の作成等により情報を保存するように伝えることが望ましい、ともされています。

 この解釈例規は、つまり、労働者が自分自身に宛てて労働条件を明示されたことが明確に分かることが必要であり、紛らわしい方法では明示しないことが重要であることを示していると言えます。

 また、電子メール等での交付でもいいと言いつつ結局は紙ベースでの保存を推奨していますが、プリンターを持っていない個人も多いので、最初から紙ベースの労働条件通知書を交付することが好ましいことになるかもしれませんね。
 手間かもしれませんが、紙ベースのものと電子データベースの両方を渡しておくと良いんでしょうね。

 

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