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療養休暇中の有給休暇?
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
なんだかんだと言い訳しているうちにすっかり寒い季節に突入し、ますます朝の超早起きが難しくなってきました。いっそのこと、一度昼間で布団でゴロゴロしてみようかな。そしたらリセットできるのかな・・・
心が休暇を求めているのか、今日も有休休暇ネタです。
そして、今日の問題は、病気やケガで療養休職中に有休休暇を申請されたら、会社はこれを受けなければならないのか、です。
療養休職中に有給休暇の権利は発生するか
有給休暇を取得する権利は、従業員が「雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤」することによって発生します(労働基準法39条1項)。
ところが、療養休職をとった従業員は継続勤務をしていないじゃないか、有給休暇取得のための条件を満たしていないんじゃない?という疑問が生じるのです。
結論は、休職していても継続勤務の条件は満たす!です。
勤務が継続しているかどうかは、実際に休みなく働いたかどうかではなく、労働契約が続いているかどうかで判断するのが行政解釈です(昭63・3・14基発150号)。
また、休職してしまったら「全労働日の8割以上出勤」したことにならないんじゃないか、という疑問も生じます。
しかし、ここでいう「全労働日」というのは、「1年の総暦日数のうち労働者が労働契約上労働義務を課せられている日数」であるとするのが判例です。
療養休職中は、労働義務が免除されていますので、その期間は「全労働日」には含まれません。結果として、療養休職期間や法定・所定休日等を除いた日が労働日としてカウントされることになり、有給休暇の取得に支障は生じにくくなります。
療養休職中の有給休暇申請
療養休職中は、ノーワークノーペイの原則から、無給としている会社が多いと思います。
これは、従業員にとっては死活問題です。
そこで、療養休職期間に有給休暇を取って、その分だけでも給与の支払いを受けたいと考える従業員が出てきても不思議ではありません。
しかし、使用者は、療養休職中の従業員から有給休暇の申請があっても、それを受け容れる必要はありません。
有給休暇は、従業員に時季指定権があり、会社は従業員が時季を指定して有給休暇の取得を申請した場合は、時季変更権の行使ができる場合を除き、その指定された時に有給休暇を取得させなければなりません。
この、従業員が有給休暇を指定する時季には、前提として労働義務が存在していなければなりません。有給休暇の時季を指定することで、労働義務を消滅させようというのが有給休暇の制度趣旨だからです。
そもそも労働義務のない療養休職中の場合、有給休暇の時季を指定する権利の基礎を欠くのです。
解釈例規でも、「労働義務がない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇請求権の行使ができない」としています(昭24・12・28基発1456号、昭31・2・13基収489号)。
もちろん、療養休職が長期に及んでいて有給休暇が時効消滅しそうなときや、休職期間満了にもかかわらず復職できないときに、会社がその裁量で従業員から未行使の有給休暇を買い取ることは可能です。