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アルバム未収録のシングルB面は名曲が多い説

シングルレコードは基本的にはA面とB面でそれぞれ1曲づつしか入っていない。A面はもちろん、B面の曲の良し悪しはかなり重要だったりする。B面の曲がアルバムに収録されていて既に知っている曲だとかなりがっくりする。逆に初めて聴くB面の曲がA面に劣らないくらいに名曲だった時のお得感はたまらない。

「銀蝿一家のB面。それもアルバムに入ってない曲って名曲多くないですか?」と、このコラムのフォロワーさんに言われたその一言で自分初めて気づきました。確かに!銀蝿一家のいろいろなシングル漁ってみると、アルバム未収録のB面に名曲が多いんです。

フォロワーさん に「このネタ書かしてください!」とお願いして今書いてます。早速5曲リストアップしてみようとあれこれ聴いてみたんだけど、とても5曲では収まらなかった。なんとか無理して6曲選んでみたので、今日はその6曲のB面曲について書いてみたい。今回のチョイスは自分ルールでひとアーティスト1曲という縛りで選んでみた。


・嶋大輔/ルンルン気分でRock'n Roll

大輔の初期のシングルのB面は横浜銀蝿の曲のカバーが多かった。個人的に銀蝿をカバーした曲にガツンときたことがない。どう頑張っても本家銀蝿を超えることはできないのだ。それは大輔に限らずどのアーティストでもそう思う。

3枚目のシングル「暗闇をぶっとばせ」のB面に収められた「ルンルン気分でRock'n Roll」が大輔にとって初めてのオリジナルのB面曲となった。このシングル以降の大輔のシングルのB面は何気にずっと名曲が続く。

この「ルンルン気分でRock'n Roll」は、個人的に一番好きな大輔のB面曲だ。「暗闇をぶっとばせ」とはタイプは違うものの、表曲裏曲という感じでこのシングルは良くできていると思う。イントロギターの音の質感は少し違うもののフレーズはほとんど同じじゃないか?というほど似ている。この手ぐせのようなフレーズはとても頭に残る。そして曲を引っ張っている印象のベースがとてもいい。いかにもTAKUっぽいベースラインは曲に抜群なドライブ感を注入してくれている。

大輔の愛嬌のある雰囲気がとてもマッチしているこの「ルンルン気分でRock'n Roll」や「Rock'n Rollでお祭り気分」あたりが個人的にとても好きな曲なのだがどちらもTAKUの作曲だ。もしかしたらTAKUにとっても大輔の魅力はあの愛嬌なんだと思ってるんじゃないかと勝手に想像している。

そしてこの曲の歌詞は嶋大輔が書いている。安易なタイトルにちょっとずっこけるけどそこもまた愛嬌のある大輔らしくて微笑ましい。若い時に思い描く恋というのはだいたい誰もがこういう世界だろう。それが大輔のツッパってるけどどこか可愛げのあるルックスと声にとてもあっていると思うのだ。

・岩井小百合/初恋

岩井小百合ちゃんのB面はとにかく名曲が多い。今回選ぶのもかなり苦労した。特に「初恋」と「いちごの片想い Part2」は悩んだ。できればどちらも選びたいくらいだが、自分で決めたひとアーティスト1曲という縛りがあるのでここはもう無理矢理選ぶしかなかった。

この「初恋」は2枚目のシングル「ドキドキ♡のバースデーパーティー」のB面となる。アッパーな「ドキドキ♡のバースデーパーティー」とは全く違う系統のこの曲はしっとりとしてなおかつ爽やかなラブソングとなっている。

聴いてるものの心を鷲掴むシンプルで無駄のないイントロ。ストリングスが印象的なしっとりしたAメロから切なく展開を変えるBメロ。そして少女の淡い恋を見事にそして爽やかに表現したサビ。特にこのサビのメロディーがとんでもなくいい。のびやかな小百合ちゃんの声がとても心に沁み渡る。そしてアイドルの王道的な展開の珠玉の曲となっている。

 あなたが 好きですと 瞳閉じれば
 渡れるでしょうか 初恋の橋

この曲を聴くとつくづく岩井小百合へ提供される楽曲の出来の良さを感じる。曲中の展開する感じなどは明らかにプロの仕業なのである。なんといってもこういった名曲がシングルのB面に入っているとお得感が大きい。こうやってじっくり小百合ちゃんを聴いていると、ルックスの良さや本人の頑張りもとても大きいが、バックアップする事務所やレコード会社スタッフの強い思いをとても感じる。岩井小百合にとっても恵まれた環境だったということを痛感する。

・杉本哲太/春の陽射し

杉本哲太のソロ作品「マブダチ」のB面の「春の陽射し」。この曲が心に残っている人はとても多いのではないだろうか。

イントロの単音のギターフレーズが印象的でどこか牧歌的なこの曲をこのイントロで上手く表現している。トゲトゲした歌が多い哲太にしては珍しくふんわりとしたメロディーを作ったのは紅麗威甦のミッツだ。過去に書いたがとにかくミッツの書く曲はもれなく良い。実兄のTAKUとともにミッツもまたかなりのメロディーセンスの持ち主なのだと思う。


恋する想いをストーリー仕立てで歌詞を書いたのは紅麗威甦の桃太郎だ。ウブで可愛げのある彼女のことを歌ったこの歌詞を丁寧に歌う哲太の歌もまた魅力的だ。

 帰り道でお前は かくしきれずに
 ほほを染めてる それが可愛いく見えて
  「好きよ…」っと言わせたくなった

ミッツと桃太郎によって作られた曲を哲太が歌う。ほぼほぼ紅麗威甦なのだが、紅麗威甦とはまた違った世界観と雰囲気をもったこの曲はなんとも言えないふんわりとした想いが心に残る名曲なのだ。

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・T.C.R.横浜銀蝿R.S./It's Only Rock'n Roll集会のテーマ(のれのれRock'n Roll)

It's Only Rock'n Roll集会というネーミングが当時好きだった。まだコンサートに行ける環境じゃなかったため、横浜銀蝿のコンサートは頭の中で想像する世界だった。その時にIt's Only Rock'n Roll集会というネーミングがとにかくかっこいいと思っていたのだ。だから「It's Only Rock'n Roll集会のテーマ」なんて言われたら気持ちが昂らないわけがない。想像していた憧れの世界のテーマソングなのだから。だからかもしれない、この曲を聴くと今でも心がザワザワする。

当時この曲はIt's Only Rock'n Roll集会で演奏されていたのだろうか?普通ならテーマというくらいだからコンサートの一曲目に演奏されていたはずだが、どうしても横浜銀蝿のコンサートの一曲目のイメージはやはり「ぶっちぎりRock'n Roll」なのだ。ならば、このテーマソングはコンサートのどの部分で演奏されていたのだろうか?そこがとても気になっている。当時からずっと30何年ずっと気になっている。とにかく一度でいいからライブでこの曲を聴いてみたい。叶わぬ夢だがまだ諦めきれないオレがいたが、どうやらこの夢は叶いそうにはないようだ。

好きな曲には必ず「メロディーが最高だ」「歌詞がたまらない」「ギターソロがいかしている」などの理由が付き物だが、この曲にはそういう理由はあまりない。理屈ではなくただただ好きなのだ。あるとしたらテンポの良さと痛快な歌詞の乗せ方がたまらないということだろうか。

作詞作曲はTAKU。なんとも言葉の乗せ方が翔くんのようだがTAKUが作っている。テンポのよい言葉が次々と飛び出してBメロで翔くん+TAKU、その後食うように入ってくるJohnnyの歌がたまらなく好きだった。メロッコメンタ ヤロッコオンタってなんだ?と当時は意味が分からなかったがとにかく聴いていて不思議な高揚感があった。

誰かに聴いた話だが、氣志團の翔やんはこの「のれのれRock'n Roll」が一番好きだということを聞いたことがある。流石翔やん。彼のカバーする曲や歌詞のセンスがいちいちツボにハマるわけだが、好きな歌も同じだったとは、これはただの偶然ではないような気がしている。

・紅麗威甦/瞳で言い訳…

紅麗威甦のアルバム未収録のB面なら迷わずこの曲。演奏が妙に生っぽくて特にドラムがとてもドライブ感があって好きだ。チキチキチキチキ…というハイハットの刻みがいい。

またまたこれも作詞作曲はミッツ。名曲作成工場かとツッコミたくなるくらいミッツの曲には当たりが多い。ボーカルの桃くんもまた桃太郎らしい表現力のある歌になっている。

アルバムには入っていない、ましてやシングルB面の曲だ。もっと気楽なB級の曲でも良さそうなものだが、この頃の銀蝿一家は全体的に楽曲にチカラを入れていたように見受けられる。外部からのプロの作詞家作曲家を招くスタイルと、銀蝿一家のメンバーで曲を作りあっていい曲をレコードに入れていくスタイル。特にシングルのB面は本来あるアーティストイメージを少し壊してチャレンジするにはいい場所だ。

紅麗威甦のメンバーも作詞や作曲にチャレンジし、こうやって実際にレコードになっていた。当時のインタビューでは「オレらのオリジナル曲を入れたいって競争して作ってんですよ。今んとこミッツがいちばん成績いいっすね。作った詞や曲を全部嵐さんに見せてOKもらえたら収録されるんです。まぁ、ボツばっかり。でもさ、レコードに作家として名前を残すってのは、やっぱ音楽をやる以上、みんなの夢ですからね。」と語っている。あの頃から30年以上経っているのに、そんな彼らの曲に今でも夢中になっているんだから凄いものだ。

・BLACK SATAN/愛が遅すぎた

この曲はフォロワーさんから教えてもらって今年になって購入した曲になる。とても気に入ったのでBLACK SATANのシングルのB面はこの「愛が遅すぎた」を推したい。

ドラマティックな展開のイントロだけ聴いても、この曲の良さが伝わってくる。この曲では桃太郎のボーカルが冴えまくっている。桃くんらしい激情型でハスキーなボーカルだ。激情型でありながらも丁寧に歌う桃太郎のボーカルスタイルが素敵だ。

この切ないラブソングを書いているのは今をときめく秋元康さんだった。テレビの放送作家が本職だったが、作詞もするようになり、作詞家としてちょうどブレイクしたあたりかもしれない。その後急激に誰でも知ってる売れっ子作詞家となっていった。

作曲は小針克之助さんという方で、この方のことは詳しくない。調べてみると宇崎竜童さんのプロジェクトを中心に活動していたギタリストだそうだ。BLACK SATANでは他に「レクイエム」「FLAPPER」の作曲もしている。

曲としてはとてもシンプルだが熱量がこもった名曲となっている。Aメロがからいきなりの名曲感を醸し出している。すでにAメロの時点でこの曲の良さは確立されているのだ。そしてとにかくサビのメロディーがいいし、桃くんのボーカルが実にハマっている。

この曲がリリースされた頃はもうハードロックに夢中で銀蝿一家から離れてしまっていた。BLACK SATANのシングルはファーストの「ミッドナイト エンジェル」しか聴いていなかった。今回2枚目以降のシングル曲をダウンロードで購入した。リアルタイムで聴いてこなかったのは今思うと少しもったいなかったなと思う。しかしこの歳になってBLACK SATANの曲を新曲を聴くように何曲か聴けたことは嬉しい。

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というわけで、今回6曲を選んでみたわけだが、とにかく選ぶのに苦労した。しかし結果的には誰もが選びそうな選曲になってしまった感は否めない。でもそれは誰もがいい曲だと思える曲がこれほどシングルのB面には揃っているということなのではないだろうか。なんでこんなにいい曲がアルバムに入ってないんだろう?と思いつつも、シングルのB面のみに収録されているからこそ、当時シングルまで買い揃えていた銀蝿一家コレクターを惹きつけるものがあったのだろう。

ちなみに今回選んだ6曲からはもれてしまったが、桃太郎の「Good Luck ナイフの上」もまたかなりの名曲なB面曲だ。ここまでコラムを書き上げて、今更ながらこの曲を選ばなかった自分に後悔している…

現代では試聴して気に入った曲のみダウンロードするという聴き方が主流になったけれど、あの頃はラジオで銀蝿一家の新曲を聴いたら発売日にレコード屋へ行くという流れだった。買ったレコードを家に持って帰りレコードに針を落とす。その時初めて聴くことになるのがB面の曲だ。めちゃくちゃいい曲に出会った時はスピーカーの前でひとりガッツポーズをした中学生だったオレ。おそらくそういう人は多いだろう。

今ではなかなかこういった楽しみ方、音楽の聴き方ができなくなったが、あの当時夢中になって追いかけていた銀蝿一家の曲たちとの出会いは日本中の若者たちにとってたまらないものだったはずだ。あの時の感覚は忘れようがない。カラダや精神に染み込んだものなんだと思う。A面としてはやや物足りないが、少なくともそのアーティストイメージを広げるという意味ではとても大きい功績だったような気がするこれらのB面の曲たち。そんな曲たちに出逢えたことは今でも大切な宝物だったりする。

it's only Rock'n Roll
Special thanks to U.N.C.L.E.TAKUさん

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