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紗希の超短編集  2

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第2集目を作りました。 読んでくださる皆さま、本当にありがとうございます👼
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記事一覧

ぷかぷか

生まれたままの姿で、水中で 過ごす。肺が強いのか、たぶん平均より長く息を止めてられる。脚…

紗希
2か月前
28

   It’s Over

  日が暮れた頃の   赤レンガ倉庫が   キミは好きだと   言っていたね。 日曜日の朝7…

紗希
3か月前
31

転校生

高2の時、クラスに転校生が入って来た。席は私の隣り。「小川波瑠です。 よろしく」礼儀正し…

紗希
3か月前
38

  ノクターン

大きなガラス窓。 その向こうに貴女は居た。 そこは貴女が仕事をしている 可愛いカフェだ。 入…

紗希
3か月前
32

   朝食と遠雷

「えっ。高校の同窓会に出席するの」「うん。行こうと思ってる。 斗亜も参加するだろう?」「…

紗希
3か月前
25

枯れた冬の草原

年の瀬の冷え切った風が、辺りを 凍えさせる。 生きているのか、そうではないのか。 枯れた草…

紗希
4か月前
28

  日暮らし

いたっ! 痛った〜い。 ひょっとして歯が割れた? 嫌だそんなの。 「詩、歯がどうかしたの?さっきも氷をガリガリ噛んでたでしょう」お母さんって、どうして分かるんだろ。 「ちょっと見せて。口を開けて。はい、あ〜ん」 私は小さい子じゃないんだから、もっと違う云い方をして欲しいな。 「ぶつぶつ云わないで早く」私は渋々、口を開けた。 「ほら〜。歯に詰めてたものが取れちゃってる。だから氷を噛む癖を直しなさいって、お母さん、いつも云ってるでしょう?」 癖なんだから、簡単には直らないんだも

 キミが書いた文字

今年も酷暑の夏。 まだ過去形ではない。 秋の彼岸近くなっても、今なお陽射しが強い。 (海…

紗希
5か月前
34

アドバルーン

大きな風船が、夏風に揺れていた。「お母さん、あの大きな風船はなぁに?」「あれはね、アドバ…

紗希
6か月前
44

宙(そら)のオト

〈昼休みなんか、いらない〉 僕は小学校の時から、そう思って来たし、社会人になった今でもそ…

紗希
6か月前
23

色褪せた世界

最近、目眩が多くなった。 アラフィフにもなれば、更年期になっても不思議ではない。 砂田小春…

紗希
6か月前
22

 本当は怖い話し?

「う〜ん」朝から杏奈の唸り声が訊こえて来る。席が隣りの私は、もう慣れっこだ。シナリオラ…

紗希
6か月前
29

cross in love

夏が近い海の色。江ノ電には、よく乗ったね。 でも。 一人で乗ったことは、なかった。 今日…

紗希
8か月前
29

どうして何時も

「杏奈は子供の頃、タンポポの綿毛が耳に入ると、聞こえなくなるよって云われなかった?」 昼休みに友達の梢に訊かれた。「懐かしい。そう訊いてたよ。実際の所、どうなんだろう」 「迷信だった。わたしなんて、綿毛が飛んでるとビクビクしてたのに」 私は笑いながら、教室の窓から外を眺めた。高校を卒業したら、この景色も見られなくなる。 相模湾が、遥か遠くに少しだけ見えている。本当に少しだけど、私のお気に入りの景色だ。 次の春が来たら、私もいよいよ受験生になる。ここからの景色を、心に焼き