【往復書簡17通目】残暑見舞いに、梨と白キクラゲのデザートスープをどうぞ
みやうへ
早いもので、もう8月も終盤だね。日中は残暑が厳しくても、夕方にはひぐらしや秋の虫たちが賑やかに鳴いて、体感よりも先に環境から秋の気配がじわじわと迫ってきている。どうにも抗えない自然の移ろいにちょっと寂しさを感じる今日この頃です。お盆の頃、例年になく大雨と低温が続いたので、天候が回復してからスープ・ポタジェの様子を見に行った夕暮れ時の空は、それはもう秋の空のように高く、青い月が輝いていたよ。稲穂は首を垂れていて、あんなに野菜と雑草に追われた日々が噓のよう。先日は、夫が草むらと化したポタジェを一生懸命耕うんしてくれて、雑草は一掃できて、今は終わりかけのオクラと、高く伸びたケール、種をつけた香り高いバジル、そして遅く植えた小玉スイカが草むらの中にコロコロと転がっているばかり。このスイカが、この夏最後の楽しみになりそうだよ。
さて、夏の真っ盛りに贈ってくれた「水茄子、西瓜と胡瓜の青唐辛子塩サラダ」、ごちそうさまでした。目にも涼し気で瑞々しく、身体にすーーっと入り込むようだったよ。私もね、最近、果物を食べたときに「あぁ私が今欲していたのはこれだ!」と実感することが何回かあって、果物のパワーをすごく実感している。特に汗をたくさんかいて、水分もミネラルも蒸発してしまった身体には果物は最高のご馳走。だから、このサラダはまさに畑しごとの後に食べたい一品よ。小玉スイカはポタジェに5個もできたから、こんな風に応用できるんだって、とても参考になる。水茄子は関西特有だね。お漬物としてしか食べた記憶がないな。畑仕事の後、これが食卓に用意されていたら最高なのになぁ、て心から思います。
私が暮らす栃木県南部は、昔から「江戸の穀物庫」と言われる米作りが盛んな土地なのだけど、果物では梨やぶどうの栽培が盛んなよう。町内にも何軒か梨園があります。どこが美味しいのかわからないまま20年も暮らしていたけれど、今年から一緒にジャムづくりを始めた友人が、町内の美味しい梨屋さんと仲良しで、予約以外はほぼ入手困難(上等品は市場に出回らない)という幸水梨を先日いただくことができたの。こぶし4個分くらいの大きな梨を、普通は何回かにわけて食べるものだけど、あまりに美味しくて、ジューシーで、2個もらったうちの1個は一人で食べきっちゃった。どうにも手が止まらなくて、残しておけなかったよ。(笑) ドリンクを飲むのとは違う浸透圧で身体に吸い込まれていく感じ。みやうが、スイカで体感したのとまさに同じような感覚だろうね。
さて、その梨。お爺さんの代から大人気だそうで、上等品は子どもの頭くらいの大きさになるのだそうだけど、それだけのものを栽培するためには毎日大量の梨を摘果しなければならないらしく、廃棄するだけでも大変なのだそか。話には聞いていたけれど、実際に農家さんから聞かされると、本当にもったいないと思う。その実情と、摘果梨でも十分に美味しいことを知った私たちは、今、その梨を活用してジャムを作っています。そんなわけで我が家には最近いつも梨が転がっているので、今回はこんな一品を作ってみました。残暑に疲れた身体に沁みわたる、冷たい薬膳のデザートスープです。梨と白キクラゲは肺や喉を潤す効能があるので、毎日毎晩のエアコンで、肺も喉も乾いたこの季節にうってつけの一品じゃないかな。梨と白キクラゲをひと口大に切って、水ときび砂糖でサッと煮てから仕上げにレモンをキュっと搾り、冷凍庫でしっかり冷やしてからいただきます。スープにも梨の香りが広がって、きび砂糖の自然な甘みがうまく全体を調和してくれています。朝のおめざとして、用意してみました。
「梨と白キクラゲのデザートスープ」
それでは、どうぞ召し上がれ。
五十嵐洋子