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通ってるカフェで1日店員をしたはなし。

「今度の土曜日、バイトの子がいないんだけど1日お手伝いで入らない?」

常連客になりつつあるカフェの、オーナーからDMが来た。
私は飛び上がって、即座に「いけます!!!!!!」と返答。

とりあえず家の中を飛び跳ねながら走り回り、ひとしきり喜びの舞で嬉しさを発散したのちに、我に返って「ありがとうございます。1日どの時間帯でも大丈夫です。」と現実的な話題へと戻る。

3月9日。土曜日の午前10時半から午後18時まで。
1日限定で、カフェ店員をした。本当に、素敵な体験だった。
こんなにも丸ごと1日が有意義で、満ち足りた気分で過ごせることは滅多にないことだ。

紅茶と、珈琲と、手作り焼き菓子のお店。
大好きなお店のカウンターに立ち、語れるくらい良さがわかるこだわりの紅茶を提供する側として淹れ、憧れの ”カフェ店員” として1日を過ごした。

「あーーー、この界隈で生きていきたい。」

これがいちばん大きな感想だった。

今年に入ってオープンしたカフェで、今も通い詰めているコーヒー屋さんのスタッフが2年間の修行を終えたのちに独立して開いたお店だ。

カメラが好きなこともあって、元スタッフのオーナーさんとはInstagramで繋がっていた。お店がオープンしてからは、月1換算くらいで通うようになったお気に入りのカフェで、毎回カウンターに座っては会話が盛り上がる。3回目くらいの訪問で、急にバイトの子が入ったと初めて知ったときには、「えー?募集してたなら言ってほしかったです………ぶつぶつ…」と目を細め口を尖らせていた。「えー?だって公務員でしょ。」と言い返され、「いや、辞めたんですよー」「そうなのー?!」という話題から、私がハーブティー専門店に転職し、将来的には自分のお店を開きたいということまで軽くお話ししていた。

そんなくだりのおかげか、ありがたいことにお気に入りのカフェで1日店員という嬉しい話が舞い込んできた。何より、そのカフェはこだわりの美味しい紅茶が飲めるのが私にとって大きなポイントだ。

ハーブティーの世界に方向性を固め始めてからも、紅茶と珈琲は変わらず好きで家でもカフェでもよく飲んでいる。珈琲は全国どこでも飲めるお店はあるけれど、紅茶はそこまで多くない。

このカフェの紅茶へのこだわりは、ダージリンを3種類用意しているところ。全てダージリン「春摘み」「春と夏の間」「夏摘み」と摘んだ季節によって茶葉が分けられているところだ。

そして面白いのが、どれも全く違う香りや風味を楽しめるところ。
春摘みは、優しく柔らかな印象。
夏摘みは、甘さがしっかり感じられる一杯。
春と夏の間は、バランスが取れているようなイメージ。
生産者によってそれぞれの良さを感じられる浅煎り珈琲のように、茶葉によって各々の特徴を堪能することができるなんて、とても魅力的だ。

それもそのはず、紅茶は生産地まで足を運ぶほどに信念を持って取り組んでいる紅茶の専門店から仕入れている茶葉なのだ。一瞬でこの紅茶の虜になった私は、来月にでも店舗に行ってみようと目論んでいる。ふふふ。

手前から、夏摘み、春摘み、春と夏の間。色もそれぞれ。

「あーーー、この界隈で生きていきたい。」

そう思ったのには、明確な理由が3つほどある。
人、空間、会話。この3つ。

ー 人。

何よりお客さんが素敵な人たちばかり。というか、プライベートでも繋がっていたいような界隈の人たちばかりが集まってくる感じ。
紅茶や珈琲、カフェやカメラ、美味しい焼き菓子が好きな人たちが訪れるので、なんだか趣味の集まりのような感覚に陥る。「どこそこのスコーンが美味しい」だの「このカメラは人気すぎて販売が間に合っていない」だの。常連さんもすでに多いようで、「今日はニカラグアのエイジングがぴかいち」「あれ、また来てくれたの」などと声をかけてオーナーもとても楽しそう。「ずっと気になってて、、初めて来たんですー。」と少し照れながらも嬉しそうに打ち明けるお客さんたちも幸せそうな笑顔を浮かべている。はぁ、微笑ましい光景を一緒に共有するだけで癒される。

ー 空間。

店内には、色とりどりの鮮やかな生花が一つひとつ形の違うユニークな花瓶に飾られている。暖色のランプの灯りがあたたかくて、心地よい音楽が流れている。
お客さんが多くても、少なくても、居心地が良くて穏やかな気持ちでいられる。まさにこんなところにずっといたかったんだ、と思えるような空間が作り上げられていた。

ー 会話。

特に楽しかったのは、カウンター越しにお客さんと会話をする時間。人とコミュニケーションをとること、話を聞くこと、意見を交わすこと、ジョークも交えながら笑い合うこと、新しい情報に触れること、親しくなること、相手に歩み寄る努力をすること、笑顔を向けること。どれもが私に合っていて、好きだなあと思えた。というより、難なく楽しめていた。
立ち仕事ゆえ、足が疲れることはあっても、気疲れすることはなかった。初めましての方々も多くいて、仕事の内容もその日に教えてもらったにも関わらず、精神的な疲労がないことが不思議だった。やっぱり思った。

「あーーー、この界隈で生きていきたい。」



至福に満ち足りた帰り道、電車に揺られながら考えた。
自分のお店を開いてサービスするものは、絶対にいいものだと断言できて、自分もそれが好きで、知識を蓄えていて、広めたくて、アピールできて、飲んでほしいと声を大にして前のめりに伝えたくなるところを必死にこらえて、なんとか平静を装って説明するくらいに熱量を捧げられるものに限定したい。お客さんの元に運びながら、ついついニヤけてしまうような、そんな飲み物やおやつを用意したいなと思う。

敏感で繊細な自分の気質は、丁寧な所作と思いやりを込めた言葉選びや会話、洞察力を通して相手を気遣える心へと活かしていけるのかもしれない。

うん、この界隈なら本領発揮できそうだ。
ありのままの自然体で、自分も相手も嬉しい、幸せ。そんな空間と働き方が存在することを遂に見つけ出してしまったみたいだ。

1日カフェ店員。未来につながるとても貴重な経験を積んだ気がする。

「あーーー、この界隈で生きていきたい。」


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