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Kindle本「カフカの『田舎医者』を読み解く」を出版しました

Kindle本を出版しました。「カフカの『田舎医者』を読み解く」です。『田舎医者』の翻訳とその詳しい解釈を1冊にまとめています。

『田舎医者』はカフカの全作品の中でもっとも不可解な作品だと思います。吹雪の夜、医者のもとに遠くの村で重病人が出たという知らせが届きます。しかし、馬車につなぐ馬が死んでしまって出かけられません。ところが、医者が豚小屋(!)の戸を蹴ると、見知らぬ馬丁と二頭の馬が突然現れます。この馬丁、いきなり医者の女中に襲いかかります。でも馬は、馬丁と女中を残して、医者を病人の家に運んでしまいます。病気の少年の脇腹には気味の悪い傷があって……。

と、こんなふうに幻想的で非現実的な出来事が次々に起こりますが、それらの間のつながりはまったく不明です。読者は理解できないまま、一つのイメージから別のイメージへと引っ張られていくことになります。

「解釈」篇では、この物語を、カフカの無意識が表現された一種の夢とみなし、精神分析的な夢解釈の手法を使って分析しています。それによって、この物語にカフカのどのような心の問題(トラウマ)が潜んでいるのかを明らかにします。

目次は以下のとおりです。全体は二部に分かれ、前半は筆者による『田舎医者』の全訳を掲載。後半は「解釈」となっています。これは、別に出版した『カフカ―世界への異和感』に書いたものとほとんど同じなので、そちらを買われた方はこの本を読む必要はありません。

カフカの『田舎医者』をまだ読んでいない人、読むには読んだが茫然自失してしまった人、カフカの抱えていた心の傷がどのようなものだったかを知りたい人――そのような方はぜひこの本を読んでみてください。

【目次】

第一部 『田舎医者』

第二部 解釈
 はじめに
 一 トラウマに向き合うことへの心理的抵抗
  (1)前半――出かけることへの抵抗
  (2)後半――トラウマとの遭遇
 二 傷とは何か?
  (1)傷は性的トラウマ
  (2)何が問題か?
  (3)なぜ性機能不全?
 むすび

あとがき

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