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山崎与次兵衛アーカイブ:三輪眞弘

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これまでWebページ、Blog記事などの形で20年に亘って公開してきた三輪眞弘さんについての文章をアーカイブ。
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#ベイトソン

モノローグ・オペラ「新しい時代」の再演に接して(後半)

(承前) 0.はじめに 以前私はこの作品を含む「新しい時代」の系列の作品群について「ミイラ取りがミイラになる」危険について記したことがある。この作品に先行し、かつ四人のキーボード奏者がフォルマント合成の原理によって「言葉の影」を浮かび上がらせるという側面を共有する「言葉の影 またはアレルヤ」ともども、少年Aの事件やオウム真理教の事件との関わりについてはしばしば言及されてきたのだが、「ノンフィクション作曲」であったり、架空の教団の典礼音楽という体裁を取ることは、そこに批判

「新しい時代」への応答のための準備作業(4):(不)可能なアルゴリズミック・コンポジションの周辺を逍遥する

人間は、今我々の生きている文明の中で形成され、維持されてきた意識の様態の下では、 言葉なしで生きることはありえない。過去の記憶と未来への予期という時間の中で 自伝的な「自己」を形成し、維持していくことは、そもそも言葉なしには可能ではない。 そしてそのような自己の様態は例えば法的な権利・責任といった倫理的な価値が 成立するための根拠になっている。 言葉を紡ぎ、文字を書いて定着させることは、一見すると記憶にとって二次的なものに見えるけれども、 実際には時間の構造の具体的な在り方

「新しい時代」への応答のための準備作業(3):再び「言葉の影、またはアレルヤ」について

フォルマント兄弟による「MIDIアコーディオンによる合成音声の発話及び歌唱の研究」において、リアルタイム性が、「人間」の演奏として介在するという点に おいて生じていることを振り返ってみよう。規則合成方式による、人間であるかどうかもわからない「誰でもない声」が歌うのだから、それを人間が演奏することにより、 人間に生物学的に事前に備わっているのとは別の、もう一つの発声器官を持ったことになるだろう。その時、生物学的な人間とは別の身体を持った 「種族」が歌っているのだということができ

「新しい時代」への応答のための準備作業(2):ワーグナー「パルジファル」についてのメモ

三輪眞弘 モノローグ・オペラ「新しい時代」(初演:2000.4.22 京都、アルティー / 4.27 東京、紀尾井ホール, 前田真二郎(演出&映像)) 50台のiMacとオペレータのための「新しい時代」(1999) 2人のオルガニストとメガフォンを持ったアシスタントのための「新しい時代」(1999) Webのための「新しい時代 http://www.the-new-era.org/」 (1999) 混声合唱のための「新しい時代」(2001) 声(歌と語り)のための"Wach