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山崎与次兵衛アーカイブ:三輪眞弘

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これまでWebページ、Blog記事などの形で20年に亘って公開してきた三輪眞弘さんについての文章をアーカイブ。
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#芸術

落穂拾い:『人新世の「資本論」』における芸術の価値についてー「ドイッチュ『無限の始まり』における持続可能性批判についてのメモ」余録(1)

公開にあたっての注記:以下の文章は2021年7月に本ブログに公開した記事「ドイッチュ『無限の始まり』における持続可能性批判についてのメモ」の内容の謂わば前段に相当し、斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書, 2020)を読んだ感想についてのメールの中で上記記事では主題的に取り上げていない背景をなす部分のうち、三輪さんの唱えられている「人文工学」について触れた箇所や「芸術」特に「音楽」について言及した箇所について、再編集をした上で公開するものです。『人新世の「資本論」』の感

「アルゴリズミック・コンポジションの(不)可能性」についてのメモ

第93回情報処理学会音楽情報科学研究会 招待講演 「アルゴリズミック・コンポジションの(不)可能性」 2011年12月11日首都大学東京日野キャンパス アルゴリズミック・コンポジションの(不)可能性という題名は、アルゴリズミック・コンポジションが 「神に見放されない」ための方法としての可能性ではあっても、それだけでは不十分であるという事態を 告げているのではないか。逆シミュレーション音楽は、単なるアルゴリズミック・コンポジションが、 神話の代補たりえない点を補い、そのことに

「三輪眞弘音楽藝術」の題名についてのメモ

「三輪眞弘音楽藝術 全思考1998-2010」(アルテスパブリッシング 2010年8月25日初版発行) 能「三輪」の後場で杉小屋の作り物の引回しが下ろされ、作り物の中に居るシテである三輪の神が現れる瞬間、 私が拝見した最高の上演においては、光と空気の調子が一変し、光が舞台の上に満ち溢れ、見所を照らし、 能楽堂全体が光に包まれるような圧倒的な光景が繰り広げられた。「三輪」の能は、神楽の起源の物語であると同時に、 「面白」という言葉の起源の物語でもあって、 「また常闇の雲晴れて

「いま中部電力芸術宣言について考える」。またもや遅れて、別の場所で、別々に、だが、にもかかわらず、共に

「いま中部電力芸術宣言について考える」 東京藝術大学芸術情報センター:芸術情報特論A 2011/6/16(木) 5限(16:20~17:50) 東京芸術大学 美術学部中央棟第一講義室 (…)いつもの通り、前提から。私はこの特別講義をリアルタイムに聴講することができなかった。勿論偶々ではなく、営業時間中・勤務時間中であったから、 余程の僥倖に恵まれない限りは断念せざるを得ないのだ。だが幸いにして特別講義はライブストリーミングで公開されているだけでなく、アーカイブされた 映像を

「中部電力芸術宣言」を読んで

中部電力芸術宣言 終結版(2009/8/25) 2011/3/13 Webページにて公開 2011年3月11日の地震の日、私は自宅に帰らずに都心にある勤務先のオフィスに留まり、翌3/12の朝、復旧した電車に乗って帰宅した。 3月14日、今度は万全の備えを公言していた原子力発電所の「想定外」であるらしい事故を理由に「計画停電」を自称する突然の 電力供給制限のために運行休止を余儀なくされた鉄道の運休により勤務先に赴くことが不可能となった。鉄道事業者の夜を徹しての 対応により翌日