マガジンのカバー画像

山崎与次兵衛アーカイブ:三輪眞弘

67
これまでWebページ、Blog記事などの形で20年に亘って公開してきた三輪眞弘さんについての文章をアーカイブ。
運営しているクリエイター

2024年12月の記事一覧

落穂拾い:『人新世の「資本論」』における芸術の価値についてー「ドイッチュ『無限の始まり』における持続可能性批判についてのメモ」余録(2)

公開にあたって:既にマーラーに関して別に、「備忘:mathesis singularisとしての「マーラー学」?―アドルノのモノグラフを手掛かりにして―」という記事をnote上で公開していますが、その中で本稿(1)の末尾で展望した「音楽をはじめとする芸術の価値の扱いに然るべき修正を施すことによって「価値」概念自体の組み換えを行うこと」についての若干の補足を行っているので、この文章との繋がりを確保するための若干の編集をした上で、末尾に追加させて頂きます。その上で、私にとってマー

落穂拾い:『人新世の「資本論」』における芸術の価値についてー「ドイッチュ『無限の始まり』における持続可能性批判についてのメモ」余録(1)

公開にあたっての注記:以下の文章は2021年7月に本ブログに公開した記事「ドイッチュ『無限の始まり』における持続可能性批判についてのメモ」の内容の謂わば前段に相当し、斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書, 2020)を読んだ感想についてのメールの中で上記記事では主題的に取り上げていない背景をなす部分のうち、三輪さんの唱えられている「人文工学」について触れた箇所や「芸術」特に「音楽」について言及した箇所について、再編集をした上で公開するものです。『人新世の「資本論」』の感

ドイッチュ『無限の始まり』における持続可能性批判についてのメモ

ドイッチュが『無限の始まり』(デイヴィッド・ドイッチュ『無限の始まり : ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』 熊谷 玲美, 田沢 恭子, 松井 信彦, インターシフト, 2013)の中で展開している持続可能性批判について、斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書, 2020)の所説に対する批判的検討の足掛かりとすべく、現時点で私に見えている限りの風景を以下に簡単に記述してみたい。ここでの目的は「二分心崩壊以降、シンギュラリティ以前」という視点から持続可能性がどのようなもの

落穂拾い:「人工知能と音楽の未来」の準備のための対話より(2018.3)

公開にあたっての注記:  以下の文章は2018年3月にローム・シアターで行われた「音楽と人工知能の未来」の対談の準備の段階での三輪さんとのメールでの「対話」のうち、「音楽と人工知能の未来」の本編では十分に展開しきれなかったテーマに関する検討の部分を、若干の編集をした上で公開するものです。「音楽と人工知能の未来」の落穂拾いという位置づけになりますが、その後「三輪眞弘を理解するための要約表」を作成するにあたっては、ここで拾い上げた視点も取り込まれたこともあり、その背景についての

「時の逆流」および時間の「感受」のシミュレータとしての「音楽」に関するメモ

私は以前より「時の逆流」に関心を持ってきました。これはもともとは、ホワイトヘッドのプロセス哲学の拡張の議論の中で出てきたアイデアで、プロセス神学的な枠組みでフォードが提示したものを意識の場に移し、意識の解明に寄与すべく修正することを試みた遠藤弘「時の逆流について―フォード時間論の批判的考察―」で検討が行われているものです。これを出発点として、私が試みたいのは、自伝的自己のような高度な心性を備え、(やまだようこの質的心理学における意味において、或いはまた、藤井貞和さんの物語理論

「参考文献要約表:三輪眞弘を理解するために」 表の見方と説明(2019.8.15)

[はじめに] 以下のレジュメは、「参考文献要約表:三輪眞弘を理解するために」の説明を目的として、2019年8月15日に大垣のIAMAS(情報科学芸術大学院大学)で開催された、共同研究「『システム内存在としての世界』についてのアートを媒介とする文理融合的研究」の研究会で行った発表用に用意したものです。要約表は、「参考文献:三輪眞弘を理解するための300冊+3冊」の文献を、文献が描き出す「星座=布置」の或るバージョンを提示することにより要約することを目的としたものです。発表の機