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山崎与次兵衛アーカイブ:三輪眞弘

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これまでWebページ、Blog記事などの形で20年に亘って公開してきた三輪眞弘さんについての文章をアーカイブ。
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2024年7月の記事一覧

「魔法の鏡」に関する三輪眞弘氏に宛てた応答の断片、または「新しい時代」への応答のための準備作業

三輪眞弘「魔法の鏡、または、三浦基氏に宛てた「光のない」の私的パラフレーズ」(F/Tジャーナル創刊号) (...)「パルジファル」の第2幕、魔術師クリングゾールは様々な魔法の道具が置かれた部屋の 中で、とりわけ鏡を扱うというト書きの指定がある。例えばクプファーの演出では、構造上 クリングゾール/クンドリーによる前半と、パルジファル/クンドリーによる後半の場面転換の繋ぎ、 両者を橋渡しする幕間の狂言の如きものとしての「花の乙女」の場面を、多数のモニターに 映し出させる花と乙女

「科学技術終結期」に旧人によって書かれたメモ

三輪眞弘「感情礼賛」(2008年11月7日初演)「今年の感情礼賛について 《学長の挨拶》」(「三輪眞弘音楽藝術」所収) (...) 意識は存在しないのか?クオリアは存在しないのか? 意識は存在しない、或いは、クオリアは存在しない、といった言い回しは、 人を驚かし、興味を惹き付けるレトリックとしての意義はあるだろう。 だがそうした主張は、決まってまず、意識なりクオリアなりの定義が曖昧であることを 指摘し、自分なりに意識なりクオリアなりを定義し直し、そして自分の定義した 意識

「言葉の影、またはアレルヤ」について(前半)

I. 1970年の今日、5月12日はパリ郊外のある墓地でツェランの葬儀があった日です。 日付というものは、そのように記録し記憶されなくてはならないと私は思います。 そして「言葉の影、またはアレルヤ」におけるそれ、「子午線」における1月20日に相当する 日付、私達の「1月20日」は、5月24日なのでしょう。(自己の出会うすべてに対して 払おうとする心遣い、すべての日付を記憶しようとする集中力は、更に「子午線」の中に、 偶然にも、もう一つの5月24日が書き留められていることに

「アルゴリズミック・コンポジションの(不)可能性」についてのメモ

第93回情報処理学会音楽情報科学研究会 招待講演 「アルゴリズミック・コンポジションの(不)可能性」 2011年12月11日首都大学東京日野キャンパス アルゴリズミック・コンポジションの(不)可能性という題名は、アルゴリズミック・コンポジションが 「神に見放されない」ための方法としての可能性ではあっても、それだけでは不十分であるという事態を 告げているのではないか。逆シミュレーション音楽は、単なるアルゴリズミック・コンポジションが、 神話の代補たりえない点を補い、そのことに

地球外からの「極東の架空の島」の眺望:三輪さんと吉岡さんの「ありえたかもしれない<音楽>」への応答の試み

吉岡洋「ありえたかもしれない、<音楽>」 詩と音楽のための「洪水」第3号 特集「三輪眞弘の方法」(2009, 洪水企画)所収 岡田暁生・三輪眞弘・吉岡洋 「討論:いま「癒し」を超える芸術は可能か」 季刊「アルテス」Vol.01 特集「3.11と音楽」(2011, アルテスパブリッシング)所収 はじめに 三輪さんの音楽の特集である「洪水」誌第3号には、「ありえたかもしれない、<音楽>」というタイトルの 吉岡さんの文章が収められている。東日本大震災後に開催されたシンポジウム

「三輪眞弘音楽藝術」の題名についてのメモ

「三輪眞弘音楽藝術 全思考1998-2010」(アルテスパブリッシング 2010年8月25日初版発行) 能「三輪」の後場で杉小屋の作り物の引回しが下ろされ、作り物の中に居るシテである三輪の神が現れる瞬間、 私が拝見した最高の上演においては、光と空気の調子が一変し、光が舞台の上に満ち溢れ、見所を照らし、 能楽堂全体が光に包まれるような圧倒的な光景が繰り広げられた。「三輪」の能は、神楽の起源の物語であると同時に、 「面白」という言葉の起源の物語でもあって、 「また常闇の雲晴れて

「いま中部電力芸術宣言について考える」。またもや遅れて、別の場所で、別々に、だが、にもかかわらず、共に

「いま中部電力芸術宣言について考える」 東京藝術大学芸術情報センター:芸術情報特論A 2011/6/16(木) 5限(16:20~17:50) 東京芸術大学 美術学部中央棟第一講義室 (…)いつもの通り、前提から。私はこの特別講義をリアルタイムに聴講することができなかった。勿論偶々ではなく、営業時間中・勤務時間中であったから、 余程の僥倖に恵まれない限りは断念せざるを得ないのだ。だが幸いにして特別講義はライブストリーミングで公開されているだけでなく、アーカイブされた 映像を

「舞楽 算命楽」日本初演を聴いて

聲明付「舞楽 算命楽」 日独交流150周年<創造する伝統>委嘱作品(日本初演) 雅楽:東京楽所 舞人 <東の舞人> 笠井 聖秀 <西の舞人> 小原 完基 鞨鼓 松井 北斗 太鼓 高多 祥司 鉦鼓 金澤 裕比子 笙 野津 輝男 中村 容子 篳篥 山田 文彦 四條 丞慈 笛 片山 寛美 植原 宏樹 声明:真言宗法響会・天台聲明音律研究会 2011年6月19日:東京オペラシティー コンサートホール (…)ここでもまた、日付の跨ぎ越しが起きていることに気付かざるを得ない。3月11