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ブラックコーヒーと永遠の夜【短編小説】

 明日なんていらなかった。ずっと夜のままがよかった。

 だからいつも眠るのが嫌だった。眠ってしまったのなら、朝が来てしまう。明日になってしまう。

 そんな私の夜のお供はブラックコーヒー。私のお守り。明日を連れてきてしまう眠気を追い払ってくれる。

 パソコンとスマホの光だけがある暗い部屋の中、コーヒーの水面はその光を受けて夜空みたいにきらきら輝く。まるで夜そのものみたいで、飲んだのなら、夜に溶け込めるような気がした。

 そのまま夜になってしまえたのなら、朝に出会わなくて済むのに。

 結局は、明日になってしまう。どんなにコーヒーを飲んでも。やっぱり眠ってしまうから。

 次に目を開けたのなら、世界は朝になってしまっている。

 けれども、ある夜、うっかり眠ってしまって目を開けても、世界は夜のままだった。

 もう眠らないぞと、コーヒーをおかわりする。夜を自分の中に取り入れる。

 それでもまた眠ってしまって、ところが世界はまだ夜で。

 どんなに寝て起きてを繰り返しても、世界は暗いまま。

 ようやく永遠の夜を手に入れられたみたい。

 ……ただ完全に昼夜逆転して、太陽がある間に起きていなくなっただけなんだけど。

【終】


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