見出し画像

言葉の宝箱 0706【イメージというのはその場凌ぎの満足感でしかない。だがクリエイティブは違う。物に息吹を与えるとともに、世界観まで変えてしまう】

画像1

『シューメーカーの足音』本城雅人(幻冬舎2011/10/5)

この世には靴を見てからその人間の価値を決める世界がある。
斎藤良一は紳士靴の名店が軒を連ねるロンドンの
ジャーミン・ストリートで注文靴のサロン兼工房を経営する靴職人。
彼が作る靴は英国靴の伝統を守りながらも
斬新なデザインに仕上げることで人気を博していた。
更なる成功を目指し、計略を巡らせる斎藤。
狙うは「英国王室御用達」の称号だが、
そんな斎藤の野望を阻む若者、日本で靴の修理屋を営む榎本智哉がいた。
二人の因縁は13年前にまで遡る。

・素晴らしい品をコレクションすることは下品なことではなく、
本来賞賛されるべきことである。
こうした欲求は、人間の本能に組み込まれているものであり、
労働への活力にも繋がっていく。
ただし、忘れてはならないのは、
コレクションというものは自己陶酔のためでなく、
あくまでもスタイルの一環として行わなくてはならないということだ。
スタイルだからこそ評価のマイナスになってはいけないし、
バランスが大事になる。
ある部分だけに金をかけて他をおろそかにすれば、
それこそただのオタクと見向きもされない P10

・見る角度によってまったく異なるものに映る。
だからこそ他人の物がよく見えるんです P23

・姿勢を正して、堂々としていれば、
周りの景色の方が合わせるように馴染んでくれるものだ P38

・妄想は想像より創造に近い P63

・美しい言葉を話す人間が美しい心を持っているとは思わない P74

・言葉など道具であり、通じればどうでもいいと甘く見てしまう男たちは、海外で仕事をしても成功して日本に戻ることばかりを夢見る。
しかし女は違う。
骨を埋めてもいいとばかりに本気でその国の人間に成りきろうと努める(略)
世界という単位で見れば、男より女の方がはるかに逞しく生きている P103

・男の優しさほどいい加減なものはない。
そういう男こそ、いざという時に真っ先に逃げ出す P116

・大事な仕事に行き詰まったらまず靴を磨くべきだ。
そうすれば、心の迷いが吹っ切れ、
曇った鏡から湯気が取れるように困難が取り除かれていく P119

・その国を知るには
良い分かと悪い文化の両方をバランスよく知ること P139

・情熱なんてものは血の通った人間なら多かれ少なかれ持っているものだ。熱い気持ちだけで生き抜けるほどこの世界は甘くはない――。
心の熱さというものは、時として邪魔になる P184

・体が仕事のリズムに合わせるのではなく、
仕事が生活にまで入り込んでいた。
そこまでいって初めてプロだと痛感させられた P187

・対立する感覚というのは
実は隣り合わせに並んでいて、その境界線はまさに紙一重だ P197

・あまりに一つの理想に向かって自分を作り過ぎてしまうと、
精神まで追い詰められていく。
人間というのは本来、周りに目など気にせず、
だらしないと言われようが好きなように生きる方がよほど楽だ。
それこそ人間本来の生き方なんだから P200

・ソウゾウって想像じゃないわよね。創造ってことよね(略)
イメージというのはその場凌ぎの満足感でしかない。
だがクリエイティブは違う。
物に息吹を与えるとともに、世界観まで変えてしまう(略)
イメージというのは一方通行だからな。
一人で楽しむ分は勝手だが、
そんな一方的な満足感を押し付けられても
周りの連中は迷惑するだけだ(略)
クリエイティブとは、
目の前にあるものを頭の中で別の物に置き換えて、作り替えることだ。
前から見たものを後ろからだとどう見えるか、
あるいは上から見たものを下からだと
きっとこんなふうに見えるのではないか、
と実物とはまったく違ったものに作り直すことにある P202

・商売というのはある種、宗教と同じだと思っている。
客がお金を払うのは商品に対してではなく、
売り手のセンスや概念に対してだ。
それぐらい客を惹き付け、信者にしていかなければ、
物を買ってもらうことなんてできないからな P238

・野心というのは、言い換えればプライドだ。自尊心でもある P290

・金というのは、そして儲かるといううまみは、
その人間が生まれついて持っていたセンスまでを
品のないものに変えてしまう P314

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集