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言葉の宝箱 0246【はぐれていた自分自身をたぐり寄せることができた?】

『エンディングドレス』蛭田亜紗子(ポプラ社2018/6/7)


32歳の若さで夫に先立たれてしまった麻緒は自らも死ぬ準備をするうち、
刺繍洋品店で小さなポスターを見つける。
◆終末の洋裁教室◆
講師 小針ゆふ子
毎週日曜午後一時から。
春ははじまりの季節。
さあ、死に支度をはじめましょう。
あなただけの死に装束を、手づくりで。
死に装束=エンディングドレスを縫う教室。

人生最後に着る服を自分でつくるということに興味が湧いた。
教室へ足を運んだ麻緒が出会ったのは
ミステリアスな先生と3人の陽気なおばあさん。
エンディングドレスを縫う前にいくつかの課題があるという。
先生やおばあさんトリオの助けを借りながら、
麻緒は洋服づくりに無心で取り組んでいく。
夫の弦一郎に命にかかわる持病があることはずっと知っていた。
それでも二人は一緒にいることを選んだ。
洋服の思い出が、忘れていた想いや出来事を次々に引き出していく。
『終末の洋裁教室』
『はたちのときにいちばん気に入っていた服はなんですか?』
『十五歳のころに憧れていた服を思い出してみましょう』
『思い出の服をリメイクしましょう』
『自分以外のだれかのための服をつくってください』
『自己紹介代わりの一着を縫いましょう』
『つぎの季節のための服をつくってください』7話連作短編集。

・わたしだって以前は無意識にだれかを傷つけていたかもしれない P10

・その日一日をやり過ごすことだけを考えて生きていれば
いつかは楽になるはず P34

・わたしだけが特殊で、わたしだけが不幸。
ずっと、そう思っていた気がする。
むかしの知り合いから遠ざかっていたので、
どうせわたしたちの事情はだれにも理解できないという
驕りじみた意識があったからじゃないか P97

・ものをつくるのって、
外の世界に向けてアピールするのとイコールで語られることが多いでしょ。ほら、自己表現とか自己発進とか(略)
でもわたしが教室で教えているのは、
外側ではなく内側に踏み込んでいくものづくりなの。
自分のための服を縫うこと、
それは自分の内側を掘り進むことでもある(略)
はぐれていた自分自身をたぐり寄せることができた? P229

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