
言葉の宝箱 0973【芸術っていうのはどれだけ他から吸収できるか。そしてそれをどう表現するかっていうのが、大事なこと】

熟練の顧問が転出し、
美術担当二十代後半の女教師が「今年から顧問になりました上原です。
陸上のことはわからないし、顧問する力も足りないけど、
できる限りのことはやろうと思うので、よろしくお願いします」と
なんとも頼りない挨拶をし、一人がんばざるをえない新部長はこう結ぶ。「絶望的で悲惨。おれの中学校最後の駅伝は、最悪のスタート切った」
最悪のスタートが最高のゴールになる
中学校駅伝県大会出場を目標にがんばる駅伝青春小説。
・僕はがんばってと言ってもらえることが、
幸せなことだと知っている P10
・がんばれという言葉が、僕にはよく響く。
ありきたりの言葉がありがたいということを、
僕はここにいる誰よりも知っている P54
・昔、先生が言ってたんだ。
中学校っていくら失敗してもいい場所なんだって。
人間関係でも勉強でもなんだって好きなだけ失敗したらいいって。
こんなにやり直しがききやすい場所は滅多にないから。
まあ、中学に限らず、人生失敗が大事だって、よく言うじゃん(略)
だけどさ、取り返しのつかないこともごくたまにはあるでしょう?
失敗しちゃだめな時って(略)
それが今だよ。今は正しい判断をする時だよ。
妙な意地とかにとらわれないで、
自分のためにも、手を差し伸べてくれている人のためにも P94
・闇にいないと光が描けないように、
音の中だけにいちゃ、本当の音楽は奏でられないでしょう(略)
本当の芸術っていうのは、芸術の中だけで生まれるんじゃないんだよ。
音だけに囲まれた中で生まれた音楽は誰の心も打たない。違うかな?(略)どれだけ他から吸収できるか。
そしてそれをどう表現するかっていうのが、大事なことでしょう? P144
・誰も間違ってはいないけど、痛々しい。
つくろっているのは、俺だけじゃないんだ。
誰だって、本当の部分なんて見せられるわけがない。
生きていくってそういうことだし、
集団の中でありのままでいられるやつなんていない P163
・親友どころか、俺には友達と言い切れるやつもいない。
ずっと自分をつくろっているんだから、当り前だ。
どういうのが親友かって難しいけど、
自分の中を見せてもいいと思える相手は
親友って呼んでもいい気がする P175
・本当の自分がなんなのかわからない。
いくら考えたってわかるわけがない(略)
どちらがより本気なのか。
そのほんの少しの気持ちの差が勝敗を決める(略)
今まで俺は何かをほしいと思ったことなどなかった。
好きなものが何かもわからなかった俺に、
手に入れたいものがあるわけがなかった。
でも、今は渇望している。死ぬほどほしいものが、すぐ目の前にある。
つかみたい。もう少しこんなふうに走っていたい P179
・おおきくなるにつれて、少しずつ楽しさの持つ意味が変わってきた。
今だって仲間と笑って遊んでいれば楽しい。
でも、もっと深い楽しさがあることも知っている。
無駄に思えることを積み上げて、ぶつかり合って、苦労して。
そうやって、しんどい思いをすればしただけ、
あとで得られる楽しさの度合いは大きい P239