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フローリングとミルフィーユ 〜床ブカブカ対策のお話

現地調査に伺った先で、廊下の床がぶかぶかしてシロアリが心配で、という話になることが、結構ある。

水回りに近いわけでもないし、どうなのかな?と思いながら、どれどれと拝見する。
よく人が通る所の板床を踏むと、確かにたわんで怖い感じになっているものの、下地の材(根太[ネダ]という、ちなみに自分が設計事務所に丁稚で入った頃、ネブトと読んで番頭さんに呆れられつつ大爆笑されたことがある)のところは踏んでも下がらない。


これはだいたい、合板のフローリングがミルフィーユ状になっていることに由来する。残念ながら味覚的な意味ではない。あくまで形状の話。

合板系の材料は、薄板を接着剤で何枚か貼り合わせて、厚みのある材料と同じような強度を出そうとしている。
ちなみに最近の奴は防音性能を持たせたりなど、もっと断面構成が複雑になっているが、接着剤でくっつけているということは変わらない。むしろ本当にスポンジが入っていたりして、リアルにケーキに近づいている。

そして、上から荷重がかかると材料の下側は伸ばされることに抵抗し、上側は押し潰されることに逆らい耐えるので、一般的に厚い材料ほど撓みにくくなる。

でもそれがひたすら繰り返されると、接着剤が先に音を上げて、厚い板として振る舞っていたフローリングは、薄い板を何枚か重ねただけの状態にもどる。古い建物は、いきなり根太の上にそれらを張ってあるので(直張りという)、それでは撓むしかない。



というわけで、あまりにもブカブカになった箇所はそのまま放置するといつかは踏み抜く。なのでみなさん、上に敷物やらベニヤ板やらを敷いて応急処置をされていたりして、それはそれでないよりはマシではある。
しかし今度はその縁に躓いたり、乗って滑ったりの危険箇所にもなるので、そうなる前に何かしら考えなくてはいけない。


簡単なのは、根太が無事なら接着剤を併用しながらその部屋全体にフローリングを重ね張りすることである。
悪くなった部分の解体工事がほぼ不要になるので、仕事としては頂いたお代がほぼ新品のためという計算になるし。なんせ同じ高さに床を再生しようとすると、解体がむちゃくちゃ手間なのだ。


ただ、これはあくまで根太が無事なことと、12mm程度床が上がっても、その部屋に面するドアの類が開閉できること(ドアの高さを詰められる場合もあるが)が条件になる。
さらに、それぞれの部屋の敷居は平坦、いわゆるバリアフリー床でなく、少し出っ張っている方が話が早い。そこが施工上、良い境界線になるのである。これ、業界用語で見切りと言う。

また、壁との周囲はあえて少しだけ離して(1mm程度だが)離して大工に施工してもらうのも実は大事である。ギチギチに作ると湿気で伸びたりしたときに床鳴りの原因となって、クレームにつながる。大変なんですよ、床鳴りを止めるの。
なお、その隙間にはちゃんと似た色のボンドコークで埋めて、ゴミが詰まったりということがないようにしておく。



でも、撓みが大きくなるとミルフィーユの上の方が剥がれて、そのやり方もだんだん難しくなる。

患部を綺麗に切除し、補強の根太を入れた上で、周囲のと同じ厚みのフローリングの新品を、開けた穴のサイズに切り抜いて、目立たないように止める手もあるが、綺麗にバラすのが手間であるためコスパは悪い。 


というわけで、ミルフィーユ放置は棘が足裏にも刺さるようになるし、まだしばらくそこに住む予定があるのなら、是非とも早めに相談いただけたら、と思っている。
ついでに床を切ってシロアリの被害があるのかも確認できるし、身体で例えると五十肩の診察に行って、骨のがんまで検査してもらえるようなものである。

日常使いの不安が解消されるだけでなく、人間ドック的なお得感がある工事でもあるので、時折お客さんにお勧めするのだが、
いきなりやるとリフォーム詐欺関係か?と思われる節もあるので、柔らかな床に出会うたびにそのタイミングに悩むのであった。

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てすり屋のひとりごと 橋本 洋一郎(合同会社 湘南改造家)
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