てすり屋のひとりごと 橋本 洋一郎(合同会社 湘南改造家)

湘南地域で住まいを身体に合わせる仕事をしています。 これまで20年、2500件の仕事を通して学んだこと、感じたことをアウトプットしていきます。 皆様が住みたい場所に住み続けるための、暮らしのヒントを転がすことができたなら幸いです。 mail@shonan-kaizoya.com

てすり屋のひとりごと 橋本 洋一郎(合同会社 湘南改造家)

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脳内棚卸しの中間報告 ~注目記事大公開と、ここまでの動機と感想文

だいたい今年度の始まりから文章をあげていくつもりで、3月くらいから準備はしていたのだけれども、そもそもnoteを始めようと思った理由はいくつかある。 ひとつは、住環境整備を生業とする自分の、単なるアリバイのような企業ウェブサイトをつくってもたいして見てもらえないだろうし、そもそも自分がつまらないのでその代わりに、ということ。でも、ほとんどソロプロジェクトのような会社なのだから、自分ダダ漏れのほうが読む方も面白いだろうと考えたのだ。リアルでの利用者さんやケアマネさん、自分が公

    • 車いすになっても慌てない ~介護保険で借りる外部用スロープ

      先日、リフトの話を2週にわたりご紹介したのですが。 段差解消機や可搬階段昇降機の話をしたからには、これも書かねばなあ、と思っていたところに、前回の記事にしたところ(旧朝香宮邸)のエントランスでこんなものを見かけたのでした。 他の方が書かれた過去のこちらの紹介記事を見ると、以前は手前の段差部分に直線型のスロープを掛けて、奥の小さい段差が残る形になっていたのですが、これは段差まるごと、太鼓橋のように跨いでおります。良いぞ。 ということで、どこのいかなる品物か、知らなかったら

      • 朝香宮妃の夢、内匠寮の技 〜突撃!例の建築家の手すり ⑧

        こちらの国際福祉機器展おまけネタの、更に続編です。 高輪ゲートウェイ駅ホームに降り立ったものの、保存が決まった築堤の石積はまだ見ることが出来ないとのことで、そのまま山手線に再乗車。 行き先は目黒で。 駅に降り立つと飛行機の気配。羽田空港への着陸ルートになったこのあたり、数分おきに大きな影がゆっくり降りていきます。 まずはA・レーモンド設計の聖アンセルモ教会(1954)に寄ってみます。駅から徒歩5分くらい。採光に工夫をこらす教会は夕方に来るのが良いのです。しばし座ってひと

        • 自立のための持ち上げメカ ~介護保険で使えるリフト、いろいろ(後編)

          介護保険におけるリフトいろいろ、後編です。 前編はこちら。 実はこのリフト一族、利用者さんご本人が自発的に動くことにフォーカスして作られたものも、結構あります。利用者さんが、立ち座りや家事などの際に動きやすくする方向性のリフト、並べてみましょう。 床座の暮らしを支える たとえば、掘りごたつでの暮らし。 こたつむりライフを人生で一度でも送ったことがある方なら、全ての必需品が立って動かずとも手が届く環境を整えて、とことんダラダラして暮らす快適さを知っているはず。 でも、

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        • 突撃!例の建築家の手すり
          9本
        • 「福祉用具」に物申してみた
          41本
        • 身体に合わせた住環境整備、施工のもろもろ
          47本
        • 湘南改造家とその周辺
          34本
        • 身体に合わせた住環境整備、そのための理論
          44本
        • 住環境整備、介護保険と法令のあれこれ
          17本

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          持ち上げ介助で腰を壊す前に ~介護保険で使えるリフト、いろいろ(前編) 

          介護保険で使える福祉用具に、リフトというジャンルがある。貸与品は移動用リフト、と定義されていて、原則要介護2以上で使えます。 これ、移動用という言葉が曲者なのだが、実際にはその場から動かさずに使うものも(住宅改修工事を必要とするものは✖)あり、その範囲も結構広い。どうやら、厚労省は利用者の高さを上げ下げするものは、用途や形状はどうあれ、ほぼ全てをこのジャンルに含めている。 ちなみに法的な定義は以下であります。 排泄・入浴と並んで介護の現場で大変なのは、利用者さんの移乗(

          持ち上げ介助で腰を壊す前に ~介護保険で使えるリフト、いろいろ(前編) 

          台所の立ち仕事と手すり 〜福祉用具の隠し技⑥

          我が家に玉ねぎラッシュがやってきた。 その時々の旬の野菜が選ばれてくる定期配送の野菜便にも大きな玉ねぎが入っていて、週末に寮から帰ってくる息子の手の中にも玉ねぎがあったらしい。 どうやら春蒔きの玉ねぎの出荷は順調のようで、今年になってから高いな〜と思っていた玉ねぎの価格も、ようやく平年並みに落ち着いているようである。 だが、冷蔵庫の最下段の半分近くを玉ねぎが占めるというのは尋常でない。というわけで急遽、玉ねぎを飴色に加工し隊の出動が要請された。なお隊員は自分だけであります

          台所の立ち仕事と手すり 〜福祉用具の隠し技⑥

          ル・コルビュジエと輝ける水 〜突撃!例の建築家の手すり ⑦

          若かりし頃のお蔵出し第二弾、かつ手すり屋の原点のひとつかもしれないお話です。 大学卒業後、どうもこのまま就職は違うな、とプー太郎の道を選んだわたくし。某T中工務店の現場事務所での模型屋さんバイトを続けながら、JIAの建築セミナーに通いつつ、とある国立大の大学院も受けてみたりして(しっかり玉砕)、でもその一年は決して無駄ではなかった。 セミナーのワークショップで教えていただいた、◯山先生のところに晴れて翌春から丁稚で潜り込むことになり、その前に、海外で見たいところを見てくるぞ

          ル・コルビュジエと輝ける水 〜突撃!例の建築家の手すり ⑦

          亀の上で踊る諸々と、死に体の亀 ~日本における約束された経済的虐待について

          中世における地動説をテーマにしたアニメが始まった。 「チ。-地球の運動について-」というタイトルだが、残念ながら日本放送協会との契約を解除した我が家では観覧できず。ロゴデザイン、秀逸です。 なお原作まんがはいろいろと凄かった。知的好奇心が指し示す真実を公に述べるだけで、生爪を四十幾枚も剥がされたり(生えてからまた剥がされる)、火炙りになるような、現代日本がそんな世の中でなくて本当に良かった。 でも、地動説以前の天動説モデルというのも自分は結構好きで、その中でもインドの宇宙

          亀の上で踊る諸々と、死に体の亀 ~日本における約束された経済的虐待について

          インフレが生んだ?新型シャワーキャリー ~福祉用具の隠し技⑤

          先日、浴室洗い場の、すのこの嵩上げのご依頼を頂いた。 この手のご依頼、「はい喜んで!」と取り掛かると落とし穴に落ちるやつである。 出入口の段差を解消するために、洗い場のレベルをむやみに上げてしまうと、逆に洗い場から浴槽に入りにくくなりがちなので(浴槽の底面から洗い場の床面までのレベル差は階段一段分が、跨ぎ出入りの限界なのです)、そういうときは利用状況をきちんと把握するのである。 聞けば、高齢の父母二人を娘さんが介護していて、お母様がいよいよシャワー浴のための移動が困難に

          インフレが生んだ?新型シャワーキャリー ~福祉用具の隠し技⑤

          バブル期建築とハイテックデザイン 〜突撃!例の建築家の手すり ⑥

          前回のおまけ的続きモノでもあります。 せっかく東京ビッグサイトに行ったのです、ならば手すりもチェックせねば。 その前に、こんなサイトを見つけたのでご紹介。当時、東京都にいらっしゃった方の裏話たっぷりの記録でした。リフトアップ工法の話もありますよ。 ここに来ると思うのは、とにかくいい建材を使っているなあということ。塩害バリバリの筈の土地なのに、あまり錆びたり汚れたりしていない印象なんですよね。築30年になろうというのに。 佐藤総合計画(佐藤武夫設計事務所)について 東

          バブル期建築とハイテックデザイン 〜突撃!例の建築家の手すり ⑥

          福祉用具、こんなん出てました ~国際福祉機器展HCR2024 極私的レポ 

          2003年くらいからほぼ欠かさずウォッチしている、こちらの展示会の季節となりました。昨年はユニットバスの現場から3日間離れられずだったので、2年ぶりの参加。五輪前にいちど青海地区の変な仮設のところに回されたことがありましたが、基本ずっとココでやっております。東京国際展示場ビッグサイト。 このデカイやつ、下で組んで持ち上げて造ったんですよね。すごい。 さて、ここまで神奈川方面から行くとなると、やはり大崎からりんかい線かな?と思って検索したら、なんと新橋からが最速と出ます。あ

          福祉用具、こんなん出てました ~国際福祉機器展HCR2024 極私的レポ 

          ウッドデッキ×物干し=介護保険? ~「自立した日常生活」に必要な段差解消

          「ウッドデッキをつくりたいのだけど」 介護保険を使った住宅改修の調査にお伺いしたときに、そんな利用者さんからの要望をいただいたとき、こちらは笑顔を保ちつつ、実はちょっと身構えている。 介護保険をつかって行う住宅改修は、給付対象になる内容がそもそも限定されている。手すりの取り付け、段差の解消、床材の変更、扉の取り替え、便器の取り替え、それらに伴う付帯工事。 ウッドデッキ、場合によっては段差解消になるのである。しかし。 以前もいくつか記事にしたが、介護保険では「要介護状態

          ウッドデッキ×物干し=介護保険? ~「自立した日常生活」に必要な段差解消

          建築界の高田渡、松村正恒 〜突撃!例の建築家の手すり ⑤

          かつて九州は大分で、設計監理の名のもとに現場で掟破りのハンドメイド作業をしていたころ、休日には周辺の建物を、時には海を渡って見に行ったりしておりました。そんなとき、気まぐれに撮っていたスライドが先日発見されたので、奮発してデジタル化してみたのです。 そしてそこに、建築家の皆様がいろいろやらかしている今だからこそ、この方を知ってほしいという無級建築士(自称)の手掛けた学校の画像があったので、お蔵出ししてみます。ちなみに撮影日時、1998年2月1日。 松村正恒という建築稼(け

          建築界の高田渡、松村正恒 〜突撃!例の建築家の手すり ⑤

          急勾配の坂道と手すり(と、高齢者モビリティ) ~丘陵地開発の泣きどころ

          今週から入っている現場は、神奈川の東海道線沿線では知らぬものはいないであろう、伏し目がちであるが巨大な観音様が屹立しているところの麓にある。 このあたり、麓を流れる柏尾川も流れが緩やかで、そしてそのすぐ横に目に付く丘陵部という丘陵部は、かつてはほぼすべて後北条氏の城郭のようなものだったらしい。川が外堀と輸送ルート兼用、さらに船から直結徒歩1分の好立地ですからね、ただし広大な敷地内でちょっとした登山が必要ではありますが。 そしてこの地域、掘ると土丹(どたん)と呼ばれる泥岩がで

          急勾配の坂道と手すり(と、高齢者モビリティ) ~丘陵地開発の泣きどころ

          ケアマネさん必見、住改リセットの罠 〜3段階と転居、知らないと困る申請細部の話

          前回の話からのつづき。 住宅改修、特に「住宅改修が必要な理由書」というものがケアマネ泣かせだよ、建築会社などはその理解度が浅いことが多いよ、そのギャップがあると利用者さんトラブルに繋がりがちだよ、というお話でした。 でも、実はそのトラブルの種は介護保険の制度設計のほうにもあり、それをそのプロであるケアマネが撒いてしまうこともある。 住宅改修費の給付枠の、リセットの問題である。 介護保険における住宅改修費の支給は、被保険者ひとり当たり20万円の枠が設定される。ただし、無条

          ケアマネさん必見、住改リセットの罠 〜3段階と転居、知らないと困る申請細部の話

          ケアマネ泣かせの住宅改修 〜「住宅改修が必要な理由書」の話

          介護保険給付における住宅改修という項目は、その制度の中でとても微妙な位置にある。介護保険で唯一、その指定事業者でない事業者(すなわち、われわれ建築関係者である)が関わるからだ。 なので、ケアマネの皆様方としては住宅改修に関わるとき、制度としては確実に専門外の部分に触れることになる。正直、厄介だなあと思われる方も多いと思う。だって、自分が逆の立場なら、身構えますもん。建築業界には専門用語もけっこうありますしね。 手すりをどこに付けたらいいかはだいたいわかっても、何をどのように

          ケアマネ泣かせの住宅改修 〜「住宅改修が必要な理由書」の話