某日のブログから 2015年 目に見えないものを見落とす危険性
某日のブログから
あるところで、一般公開していないブログを書いていました。週一くらいの更新です。昨年度のブログの中から、ある日の記事を再掲していきます。
目に見えないものを見落とす危険性
今週は、月曜日が登別市で人事評価の研修、火曜日は恵庭市でプレゼンテーション研修、水曜日は旭川医大で人事評価研修、木曜日は岡崎市の社会福祉協議会で管理署研修、金曜日は東京都の板橋区で戦略思考開発のための研修です。先週から今週にかけて、人事評価の研修が続きます。
地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律が、平成26年5月14日に公布されました。地方公務員ついて、人事評価制度の導入などにより、能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図ることを内容とするものです。施行については、公布の日から逆算して2年を超えない範囲内において、法令で定める日から施行することとされています。
人事評価の研修を行う際には、人事評価の目的からお話しします。
人事評価制度は、評価すること自体が目的ではありません。もちろん評価することによって、その評価結果を利用することは結構です。しかし、評価することが目的化してしまうと、人事評価制度の本来の目的を見失い、評価制度自体が形骸化してしまいます。人事評価制度の本来の目的は、以下の2点になります。
1.人材育成機能
能力や貢献度について、現状の水準と組織や本人が期待する水準との差を明確にし、その差を埋めるための成長(学習)を促すこと
差を明確にするのが目的なのではなく、成長をする責任を果たせるように、差を埋めることが目的です。
2.戦略達成機能
組織戦略や事業戦略の達成に向けた様々な活動と職員の行動や成果を結び付けていくこと。
進むべき方向や期待行動を人事評価の基準として設定することで、職員はどのような行動・どのような成果を目指すべきなのかを共有することができます。
つまり人事評価制度は、全庁的な戦略や方向に向けて、職員の一人ひとりが「成長する責任」を果たせるように支援するための道具(ツール)だということです。
職員は他のものでは代替できない唯一の価値ある経営資源です。その職員の価値を増大させる人材育成に関する活動は、優先順位の最も高い活動の一つです。そして、その人材育成に関する活動を支える人事評価制度を軽視することは、職員一人ひとりの成長の可能性に封印することと同じことです。
人事評価は、業績評価と能力評価で行われます。業績評価は仕事の成果を評価します。目標を立て、目標の達成度で評価していきます。能力評価は、職務遂行上の能力を評価するものです。
業績評価では、目標管理の方法を用います。目標管理(MBO)はドラッカーの提唱した方法です。ところがこの目標管理は、誤解されているとところが多いのも事実です。
MBOはManagement By Objectivesの略で、目標管理と訳されています。目標管理という言葉から、目標を立て、目標によって管理されるシステムとの誤解が生まれています。
ドラッカーの提唱するMBOは、決してそのような意味ではありません。Management By Objectivesの後には、次の言葉が続いています。Management By Objectives and Self-controlです。
つまり、目標によるマネジメントと自己統制です。自らが目標を立て、その目標に向かって自分で自分の仕事をコントロールしていくことです。これがドラッカーの提唱したMBOです。
目標を設定する際には、目標を評価しやすい、管理しやすいように定量化(数値化)することが望ましいと言われています。確かに定量化しておくと評価はしやすいですが、全てを定量化する必要はありませんし、無理に定量化することは危険を伴います。
ドラッカーは、定量化を行えば管理はしやすくなるが、定量化を行うほど、目に見えないものを見落とす危険性があると警告しています。
測定と定量化に成功するほど、それら定量化したものに注目してしまう。したがって、よく管理されていると見えれば見えるほど、それだけ管理していない危険がある。
P.F.ドラッカー『マネジメント』
目標を定量化し、判定しやすくすることで、評価はし易くなります。しかし評価のし易さのみに注視し、定量化を進めることは、人事評価本来の目的である、人材育成の面が阻害されてしまいます。
数値による評価のフィードバックだけであれば、文書で十分です。上司が部下に評価を伝えるだけではなく、部下の自己評価と上司評価を合わせてみます。評価が食い違う場合には、その差はどこからくるのか、その差の食い違いはなぜなのかを、真摯に話し合う必要があります。
評価面談を実施し、評価面談を上司と部下の信頼関係を構築する場としてとらえ、人材育成に寄与するような面談を行いうことが重要です。
かんじんなことは、目に見えないんだよ
サン・テグジュペリ「星の王子様」