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11年目のまちと人と

今日は2022年3月11日。

毎年この日を迎えると、普段は筆無精なのになにか書き残しておきたくなる。ちょっと前にもnoteに3.11を振り返る記事を書いたっけ、と思ったらもう7年も前の記事だった。書き残したい気持ちだけはあるけど実際はあまり書いていないということか。

いろんなところで言っているのでことさら書かないけれど、僕は2011年の4月に初めて宮城県の石巻というまちに行き、ドロ掻きのボランティアなどに参加し、ISHINOMAKI 2.0というインディーズ団体を立ち上げて、まちづくりというフィールドに身を投じることになった。

石巻には3年半ほど住み、まちにはたくさんの友人が増えた。今も多いときは月に一回程度なにかしらの仕事で石巻に行っているけれど、そのたびに新しい人に出会うことができているし、石巻を経由して全国各地に羽ばたいていった同世代とも交流が続いている。ひらかれた、震災前からバージョンアップしたまちにするという当時の目標は少しは達成されたのかもしれない。

3.11という日になにか思いが溢れてくるのは、ライフシフトというか、人生の変わり目になった日だからなのだろう。自分の誕生日にSNSで祝われても、一つ年を取ったなという感慨しか湧いてこないが、自分が選び取った道の分岐点が毎年やってくると、その時からの自分の進歩を顧みざるを得ない気がしている。

今日は横浜にいたけれども、昨日と一昨日は石巻に行っていた。ワールド防災ウォーク東北+10という企画を手伝っていて、世界防災フォーラムという国際会議を2年に一度仙台で開催しているチームが、コロナで開催できなくなったフォーラムの代わりにいわきから八戸まで復興の現在を発信しながら踏破するものだ。3月9日が石巻の行程だったので僕がアテンドをさせてもらった。

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一行の代表であり、防災の専門家である東北大学・小野裕一教授と魚町を歩いているとき「キャパシティ・ビルディング」という言葉を教えてもらった。小野先生は20年以上国連の機関で働いてきた国際協力のスペシャリストでもある。これは途上国支援などの文脈で、ある課題に対して現金や物資を直接提供するだけでなく、課題解決の能力(キャパシティ)を支援を受ける側の市民に教育し構築し(ビルディング)、自ら次の課題を解決できるようにする取り組みのことを指す。90年代以降日本のJICAが取り入れ、今ではグローバルスタンダードになっているそうだ。魚が欲しがっている人に魚を与えるのではなく、釣り竿を与えてその釣り方を教えよう、というやつだ。

7年前に自分のnoteで3.11や復興◯年目というのは節目ではあるけれども、時間の流れはずっと連続していて、その間復興に取り組み続けてきた人たちへの想像力と敬意を忘れないようにしよう、というようなことを書いた。僕がいたISHINOMAKI 2.0でも当時始めて、その間紆余曲折ありながらもしぶとく続けているプロジェクトがいくつかある。その中の一つに「いしのまき学校」というものがある。高校卒業と同時に石巻を離れ、大した愛郷心も持てないまま地元に帰ってくることがない若者たちを見て、もっと街のことが好きになれるきっかけと、彼ら自身の成長に資するような学びの機会をつくろうというプログラムで、僕や当時20代の同僚、他団体の職員を巻き込んで石巻の高校生相手に手探りで始めた。

僕は0から0.9くらいまでの立ち上げまでしかできなかったが、その仲間の一人、斉藤誠太郎がずっと若者たちと向き合い、めげずに続けてくれたおかげで、いしのまき学校は石巻内外のちゃんとした学校機関やちゃんとした教育系団体と連携し、まちぐるみで若者を育てていくというマインドをこのまちに醸成した。とても先生と呼べるような立派な人物ではないが、うーんと唸り頭をかきむしりながら若者たちの可能性と向き合い続けている斉藤くんを僕は尊敬している。

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若かりし頃の斉藤誠太郎

そしてこの春、ISHINOMAKI 2.0内のいちプロジェクトだったいしのまき学校をより発展させるため、斉藤くんとその仲間たちが「一般財団法人まちと人と」という組織を立ち上げる。高校生より少し年上の大人たちが、彼らの課題解決の力を伸ばしていく。途上国と支援国という大きな枠組みでも上から目線でもないそれは「わたしたち(We)のキャパシティ・ビルディング」とでも呼ぶべきものかもしれない。

詳しくはぜひ公式ウェブサイトを見てほしいけれども、この組織が活動していくことで、石巻のみならず宮城の、東北の若者たちと彼らが生きる街に希望の光があたっていくだろう。

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一般財団法人まちと人と設立メンバー

ところが、迂闊な彼は公益性を重んじたいがために一般「社団」ではなく一般「財団」法人にしてしまったらしい。そこには設立のために300万円という資金が必要で、それがないとそもそも団体を立ち上げることができない。そして今、その資金を集めるために寄付を募っている。2022年3月に設立するための期限は3月16日。この日までに集めないと設立できないそうだ。

3.11、みなさん被災地のことを思い出してなにかアクションを起こしたいと思った人もいるかもしれない。Yahoo!で検索することもその一つだとは思うけれども、もうワンアクションしてぜひこの「まちと人と」の設立に力を貸してください。寄付はここからできます。https://syncable.biz/associate/machihito/

石巻の、ずっと連続している「わたしたちのキャパシティ・ビルディング」をぜひ応援してほしい。そしてその先にある未来をともに見届けてほしい。

あの日失われた命に祈りを。これからを生きるみんなに幸せを。

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