2023年読書評21 赤い猫 仁木悦子
「赤い猫」
仁木悦子 短編集。
他の短編集で読んだことのあるものもありました。
仁木悦子は「猫は知っていた」で有名ですが、実際に小説に猫が出て来るのは数偏しかないそうです。この短編でも実際に猫は出て来ません。
赤い猫・・・両親を亡くし、親戚から邪険にされ職場が倒産した女性が見つけた新しい仕事は金持ちの老女の世話をする家政婦のようなものだった。
この老女、愛想はないが頭はしっかりしていて推理の才能がある。女性の母は彼女が5歳の時に殺されたのだが未解決だった。その老女に話すと、老女は犯人を言い当てる。
いわば安楽椅子探偵です。
でも娯楽的ではなく、数奇な話となっています。
感動的でもある不思議な小説。
賞を獲ったもの。
「白い部屋」・・・私立探偵三影潤もの。
撃たれて入院している三影。同室の患者とおしゃべりをしていて老人の殺人事件の話になる。彼らが現場の話をし三影が推理する。
いわば安楽椅子探偵もの。
これは以前他の短編集で読んだことのあるものでした。
仁木悦子は障害者だったので、病院とは縁があり、そのためこんなシチュエーションにしたのでしょう。
仁木悦子について簡単に紹介しますが、彼女は元々障害者で子供の頃から寝たきり。しかし読書が好きで、姉などが推理小説を買ってきてくれ、執筆するように。それが賞を獲り、江戸川乱歩などの励ましで職業作家に。寝たきりだったが手術で車椅子に乗れるまでになる。
本書の「赤い猫」や「白い部屋」はそんな背景を想像させる。
兄弟は多いようでその中の兄と自身をモデルに仁木兄妹ものを書いたりしている。
58歳で没。
私は大昔数冊読んだきりでしたがツイッターの人に勧められ、また手を出すように。
仁木さんの小説は現代ではあまり出回っていないよう。新装丁で、読みやすい形で再版するべきであると思います。
ポプラの新しいものが数冊出ていますが、そちらは読みやすいと思います。
「青い香炉」
山荘に集まった面々、嵐で閉じ込められ、そこで過去に起きた事件について話し合いが成される。
いわば安楽椅子探偵もの。
中に「植物学者」がいるが、それが探偵仁木兄弟の兄であった。
「子をとろ、子とろ」
子供をさらって行くという妖怪のうわさが主婦の間で広まる。実際に見たとヒステリックになる奥様も。
しかしその裏にはそれを利用した犯罪が。
「ウサギさんは病気」
おばあさんの死を予見する少女。ピアノ教室で起こったこと。
教室の講師が事件を探るとおばあさんは強盗を目撃して殺されたらしいと分る。そして犯人を追いつめる。
ピアノ講師は仁木兄妹の妹、悦子。
「乳色の朝」
これは誘拐もの。ある家の女の子が誘拐される。そこに居合わせた記者が謎を解く。
誰が犯人か、その辺の謎を解く趣向。
この短編集を通し、「赤い猫」が一番印象深かったです。
謎の部分より、やはり人の感情、人間関係、そのようなものが描かれ、単なる推理ものとしてではない味わいがあります。
ココナラ
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