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2024年読書評9 都筑先生と、三毛猫ホームズ

「危険冒険大冒険」
都筑道夫
コミカルアクションといったところ
片岡直次郎ものと、近藤庸三と土方利夫ものの2つの他、短編3つが収められている。
片岡は何でも屋。絵画を盗む依頼を受ける。
100ページものなので中編だが、薄い長編小説ともいえなくもない。

3つの短編もアクション、犯罪ものだけれど、あまり出来は良くない。

そして近藤庸三ものはコミカルアクション。
金持ちの息子がスパイになりたいなどと言い出したので、欲求を満足させるためにプロの何でも屋に依頼する。
そこで出所した銀行強盗犯がいるが金の行方が未だ分からない事件から金を見つけ出そうという話になる。

以上、中編2編はまあまあ面白いと言えます。


「哀愁新宿円舞曲」
都筑道夫 再読
この本は重いので~物理的にではなく、もう読まないと思っていたのですが内容を忘れたのでまた読んでみました。
短編集ですが、中には印象に残っていて覚えているものもありました。

昭和初期の繁華街新宿、悲しい売春婦たちがいる。
麻薬中毒のような女性、客をひっかけたら父だったとか、ヒロポン中毒で痩せ細り身体中注射の跡がある死体とか。
戦後の暗い世相が読み取れます。

しかし今も東横には少女らが集まり、売春をしたりしているとか、ホストに貢ぐとか、快くないことが繰り返されています。
外国人観光客は日本の清潔感や倫理観に魅かれるかも知れませんが、裏の闇もあるということで、
そんなことで、みんなあんまり幸福感を感じないのはどういうことか、
私はこう思うのです・・・。

それは人間は単独では幸せになれない、ということ。
バブル以降の日本では失業者が見殺しにされ、不景気ゆえか売春婦も増え、売春婦とは言わないAV女優というのがセクシー女優などと言われ、結局この小説のように幸福ではなく、国がそのようないわば被害者を助けないから、
国全体が幸福ではない、
ということなのです。
そんな風に感じました。

政治家とか、自分たちの政権維持や金、権力だけを考え、カルトに従い、国を売り、結果、国は凋落し、
一部金持ちや生活に不満のない人もいるでしょうが、全体をないがしろにしているから、みんなの幸福度が低くなっているのだと思うのです。



「三毛猫ホームズと炎の天使」
赤川次郎
2023年の作品。現時点ではシリーズ最新作。

観光地の洞窟内に閉じ込められる7人の観光客。無事救出されるがその間、中の誰かが死を覚悟して自分が過去に殺人を犯したことを明かす。救出後、そのことは忘れられていたが、救出者が次々に殺される。
というもの。

プロットは単純なので、連続殺人の犯人と動機などを探るという意味で興味深いのですが、被害に遭った人物たちを中心とした群像劇になってしまっている。
後期の三毛猫ホームズはこれがいけない。
探偵ものは第三者の物語に探偵が背後にいるということは珍しくありません。ホームズの長編や、ポアロものや金田一ものも。
しかし探偵が主軸になることもあるわけです。というか、小説としては主人公がはっきりしている方が読みやすい。
これは映画でもそうです。オールスターキャストとやらで、群像劇になると大概面白くない作品になる。

三毛猫ホームズの後期の作品がだいたいこれで、読者としては誰に主軸を置いていいか分からない。それに感情を置くこともできない。
昔のシリーズは刑事片山と妹の晴美、石津が主になり、猫も活躍しており、基本ユーモア小説の態を成していたものです。

ところが後期になると、ネタ切れか、誰を主人公にしても良い物語に片山をとってつけたような作品になっているのです。
これは作者が超売れっ子で、原稿をかけもちし、アイデアをたくさん持ち、1つの作品に集中しなくなったためでしょう。
そこで、今回の三毛猫はこの話で行こう、刑事を適当に配置して、猫の推理も適当にねじ込もう、という感じなのでしょう。

ですからほぼユーモアは消え、主人公が誰か分からず、グレーな群像劇になってしまっているというわけなのです。



ココナラ
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