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2023年読書評18 三毛猫ホームズとシャーロックとマリイロジェ

「三毛猫ホームズの黄昏ホテル」

赤川次郎。
1990年の作品。

ホテルでのピアノコンサートで小さい女の子が殺される。犯人は捕まらないまま時は流れ、その時いた宿泊客がホテルの閉館時に招待される。女の子の祖父である支配人はそこから犯人をあぶりだそうというのだ。
一方、刺殺事件に出会った片山刑事、被害者の主婦と不倫関係にあった男の母親がたまたま彼のアパートの下に住んでおり、その女性からホテルの招待券をもらう。
ただで宿泊、食事ができると出向く一行であるが・・・。

というもの。

物語は読んでいて、あまり面白くはありません。先がどうなるのだろう、という筋ではないからでしょう。主人公が危機に遭うとか。
しかしラストの犯人は意外でしたし、ちゃんと「三毛猫ホームズ」になっていました。
というのも後期になると体裁は三毛猫ホームズでも、物語がそうでないものが多くなるからです。寅さんシリーズが当初、コメディであったのに後期ではつまらないシリアスドラマになってしまったのと似ています。
三毛猫ホームズは基本、ユーモアミステリであることを作者は忘れてしまっているのでしょう。

この小説は映画化されたらしいですが、
監督の大林というのは音楽を取り入れるのが好きな人なので、またこの物語がホテルを舞台にしているので撮りやすいと思ったのでしょう。
しかし私見では、あまり良い題材ではないと感じます。

三毛猫ホームズは多々映像化されており、石立鉄男のもの以外は全て失敗しているのではないでしょうか。
1つの理由は、

赤川次郎がもう多額の財産を持っているので、これ以上儲けなくてもいい状態にあるから、というのが私の意見です。
つまり、天の采配で失敗作が作られるというわけなのです。
小説も駄作になっているのも同じ理由。

しかし繰り返しますが、新作が書かれていることは喜ばしく、40年くらいこのシリーズは続いていることになります。
それはすごいことです。
何だかんだと読み続けるので、書き続けて欲しいと思います。

・・・あと、彼のジュブナイルを読みたいのですが、どれがそれに当たるのか全く分からないので、つまり線引きが難しいので、子供向けの本だけを集めて編纂してもらいたいと思います。


「シャーロックホームズの冒険」

何回も読見返しているホームズもの。
バスカービル、四つの署名、事件簿とまたぼちぼち読み返しています。
今回は角川の石田という人の訳で読み始めましたが、どうもしっくりこない。読みすぎて新鮮さがないのかも知れませんが。
そこで引っ張り出したのが大久保訳。しかし本が古く字が小さいので、深町訳も出す。
石田という人は1961年生まれだそうで宮部みゆきと同じくらいか。後のホームズシリーズは別の人が訳していますが、なぜなのか判然としません。調べても分りませんでした。
結局深町訳で読むことに。
でも創元は文字が小さいので、やっぱり角川を読むという感じ。

ある作品は改めて見るとまた発見があるという人がいます。
映画「第三の男」は何回見ても発見があるという人がいます。

今回、私はこの作品=「冒険」で改めて印象的だったのは
「技師の親指」・・・
ラストで依頼者が言います。お金も得られず、怪我もして、何もいいことがなかったと。
そこでホームズが言うには「経験ができたじゃないか」と。
どんな酷いできごとでも、考えようによってはプラスにできると言っているわけです。
どんなに嫌な目に遭っても教訓とし、それを踏み台にすることが出来ると、知るべきだということです。

「緑柱石の宝冠」・・・
ラストシーンで愚かな女について言及されます。
~その悪事はいずれ償うことになると。
もし我々が誰かに害されたら、または客観的に悪人のニュースを見たり、不当に益を得ているような人を見た時、
そのような人たちはいずれ罰される、淘汰される、と言っているわけです。
つまり、我々はそのような人たちを憎んだり、嫉妬する必要はない、いずれ彼らは処分される、そのように考えると良いとドイル=ホームズは言っているわけです。


「マリイロジェ」
エドガー・アラン・ポー

世界で初めて推理小説を書いたのはポー。そして世界で最初の探偵はオーギュスト・デュパン。
デュパンをも(だけではないが)参考にしてホームズも書かれています。
しかしデュパンのシリーズは3作の短編しかありません。
「盗まれた手紙」と「モルグ街の殺人」と「マリイロジェ」
2つは有名ですが、マリイロジェだけはあまり本として見ません。他は児童書にリライトされているのに。

なぜかというと非常に読みづらく、わけがわからないものだからです。

物語は、実際にフランスで起きた未解決の殺人事件を作者のポーが探偵の言葉を借りて推理するというもの。
世間にある未解決の事件を推理力によって、謎を解いてみようという試みなのです。
ですから文章は、探偵の思考を追うだけでまったく物語に動きがありません。そして難解な推理が続くので訳が分からない、という感じです。

私はもっと分りやすい児童書はないかと思って調べましたが、どうやらないようです。
しかしマンガはありました。
いつかそれを読んでみようかなとも思います。

ある人はマリイロジェは面白いといいますが、一般には面白くないものであると思います。


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