2023年読書評10 事件簿
「シャーロックホームズの事件簿」
再読
ホームズものは幾度も読みかえしているので、何度目だか憶えていませんが。
事件簿はかつて版権の都合上、あまり出回らなかったものです。昔の全集だと欠けているものが多いです。
私は今回大久保訳を読みました。
なぜホームズものを読み返すのか。
都筑道夫は半七を読み返すと言っていました。人によって好みがあるのでしょう。彼はホームズを評価していませんでしたが私は半七をあまり評価しません。
井上ひさしはブラウン神父を評価していました。
さて私は今回読み返してみてやはり、ドイルの地の文が優れていると分かりました。
「ソアブリッジ」の最後でホームズは言います。
「ニールギブスンはこの世の教訓を教える悲しみの教室で何かを学びとったことを発見するだろう」
私はこれを「この世界は教室だ」と言っていると捉えました。もちろん「悲しみ」というものが人を学び成長させるという意味でもあるでしょうが。
そうすると、この世界、地球というのがみんなにとって学びの場であるということになります。
これは重要なことです。
このようなことをたまにホームズはつぶやいたりするのです。
「這う男」でも
碌でもない人間たちがもし不老長寿になったら、~善良な人たちが死んだ後、残るのはつまらないものばかりとなり、この世は下水のようになってしまう
と言っています。
これも含む所があります。
こんな風に、ホームズものは単に推理だけでなく、物語だけでなく、一目すべきものでもあるのです。
そこが私が魅かれる部分かもしれません。
ちなみにホームズものの経緯は
作者のコナンドイルは医師でしたが、開業しても暇なので小説を書くことにします。医学部だった時の教授をモデルにしてシャーロックホームズを創造します。
第1作が「緋色の研究」。長編であまりホームズは出て来ず、伝奇小説のようなもの。モルモン教が悪役となります。
このモルモン教、現在でも活発で町で見かけます。若い外人が二人組で道行く人を呼びとめて。
私も何回か話をしたことがありますが、私が転生の話をすると露骨に嫌な顔をしていました。
キリスト教では転生は異端だからです。
さて、2作目は「4つの署名」。これも長編。しかしホームズが活躍するもので、冒険活劇なので読みやすいものとなっています。
3作目から短編集となります。「冒険」「回想」。
つまり、ドイルはこの辺りでホームズものに飽き飽きして、ホームズを作中で殺すわけです。
当時の反発はすごかったらしく、猛抗議が来たといいます。今と違い娯楽の少なかった時代ですから。ホームズものの人気は絶大だったのです。
するとしばらく経って彼は「バスカービル」を書きます。これは長編伝奇ものですが、ホームズの
以前の物語という設定になってこの時点ではまだホームズは生き返っていません。
次の「復活」でホームズは生き返ります。言い換えるなら死んでいなかったということにしたのです。
次は「最後の挨拶」でよほど彼はホームズものと決別しかったのでしょう。
「恐怖の谷」はこれの後だったと思いますが、やはり長編伝奇ものです。「緋色」に似ています。
最後が本書「事件簿」ですが、これは晩年のドイルがポツリポツリと書いたものを寄せ集めた短編集です。最晩年なので、力量は衰えるかもしれません。というのも、以前の作品に似た設定が多いからです。
「高名の依頼人」は「ボヘミアの醜聞」
「マザリンの宝石」は「空き家の冒険」
「3人のガリデブ」は「赤毛連盟」
「覆面の下宿人」は「赤輪団」
「隠居した絵具屋」も「ノーウッドの建築家」に似ています。
似ているというか連想させる程度なので完全にオリジナルにはなっています。
それに何より、ドイルの哲学に曇りはありません。
ココナラ
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