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2023年読書評3 ウールリッチ

「黒衣の花嫁」
コーネル・ウールリッチ作。再読。

作家コーネルウールリッチは出版社の都合でウイリアムアイリッシュの名義を持ちますが、彼は後にそれを本名として役所に提出。ですからアイリッシュというのは彼の本名でもあるのです。
きっとコーネルという名が好きではなかったのでしょう。
都筑道夫も「巌」(本名)という名が嫌いだったそうで、グレゴリーペックもエルドレッド(本名)という名が嫌いだったそう。
私も子供の頃は自分の名がひどくカッコ悪いものと思っていましたが、大人になってから良いものだと思うようになりました。

みなさんも自分の名を誇りに思った方がいいでしょう。その上で、自分の人生を誇りあるものとなるようにするのです。

人間の魂にはライフシールというものがあり、人生そのものを本にした時の「表紙」が誰にでもあるのです。それを美しいものにしたかったら、誇れるものにした方が良いのです。
誇れるものにするというのは、自分がいかに他者にやさしさを示せたか、人を傷つけなかったか、誠実だったか、誰かを救えたか、良い心を持てたか、ということです。


時に本作は:

ウールリッチは作家をめざし、6作の普通小説を書きます。しかし全くウケず、日本でも翻訳されていません。後に1冊だけ訳されましたが、彼のファンである私も途中挫折。
その後彼はミステリに転向します。その一作目がこれ。
以降彼は「ブラック」シリーズを書くことになります。書名に「黒」が付くシリーズです。
ミステリに転向した彼は大衆受けするようになり、無数の短編と20くらいの長編を残します。

この本の物語は:

結婚前に花婿を殺された女。犯人は複数人いる。彼らを一人一人誘惑して殺して行く、というもの。

ですから一人一人が章となって、いわば短編集のような体裁をした長編小説なのです。
映画化もされていますが、たしかつまらない出来だったと記憶しています。トリュフォーが監督しジャンヌモローが主演。

小説は30年ぶりくらいに読むので細部は覚えていません。現在の感想はというと、あまり面白くありませんでした。そもそもウールリッチは、長編の評価はあまり高くないのです。「幻の女」だけで。もっぱら短編で評価が高い作家なのです。
それにこの本は主軸がない。殺人鬼である女と刑事が交互に描かれ、読者は誰に肩入れすれば良いかわからない感じで、長編としての一貫した流れが短編形式で途絶えるので、一気に読む気にならないのです。
その辺が欠点。
しかし一般的には評価の高い本ではあります。

*1つ気になることがあります。
この本の主題でもあるのですが、もし人が意図せずして人を傷つけた場合、その罪はいかほどかと。
私は意図せずして傷つけた場合、しかたないと思いますが、逆に被害者になった場合、赦すのは難しいのかなとも思います。

聖書では~モーセのくだりでは「逃れの町」という概念があり、「意図せずして人を傷つけた場合は赦される」とあります。一応裁判は開かれますが、放免されるようです。
これは単に人の世界の話ではなく、精神の話でもあって、愚かな人間が神の法を知らずに罪を犯すケースのことでもあります。

この本では意図せずして殺した人たちに復讐するという話ですが、果たしてそれは正義なのかということも考える機会かも知れません。
(オチはここでは言いませんが)


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