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年次有給休暇取得時の賃金に深夜割増は不要であるとの判示


例えば交代制勤務で深夜時間(22:00~翌5:00)を含む時間帯を労働契約上の所定労働時間として勤務される方が有給休暇を取得された場合には、深夜時間帯を働いたものと見做して割増部分(2割5分)を含めた賃金を支払わなければならないというのがこれまでの行政解釈であり、労働基準監督署からもそのように指導され、支払が無い場合には是正を求められてきました。

この件については2014年12月26日の当協会ブログ【ケースNo86】でもご紹介させて頂いています。

労働基準監督署の指導の拠り所としては、『労働基準法実務問答・労働調査会出版(厚生労働省労働基準局賃金時間課監修)』で記された次の記述のようです。

「深夜労働が常態となっている夜警業務の場合などは、その深夜労働自体が通常の労働(所定労働)と解されますから、この夜警業務に就く人が年次有給休暇を行使したような場合は、深夜割増賃金も当然含んだ賃金を支払わなければならない」

ところがこれに真っ向から反するような判断が地裁で示されました。

『時間外労働及び深夜労働に対して割増賃金を支払う趣旨は,時間外労働が通常の労働時間に付加された特別の労働であり,深夜労働も時間帯の点で特別の負担を伴う労働であることから,それらの負担に対する一定額の補償をすることにあると解される。年次有給休暇を取得した場合,実際にはそのような負担は発生していないことからすれば,年次有給休暇を取得した場合に,所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金としては,割増賃金は含まれず,所定労働時間分の基本賃金が支払われれば足りると解される。』(日本エイ・ティー・エム事件 - 東京地判 令2・2・19 労働経済判例速報2420号23頁)

深夜労働に割増を生じさせる法整備の本来の趣旨・目的を鑑みればこの地裁判断が正しいように思いますが、今後覆る可能性も残されています。

少なくとも現状は労働基準監督署や労働者等から年次有給休暇に対する深夜割増賃金の支払いを求められたとしても、この判例を根拠に正当に否認できるでしょう。

※但し、賃金規程等で深夜割増を含めて支払うことを具体的に規定している等のケースでは不利益変更の問題が生ずるため原則、個別同意が必要になります。

ご参考ください。

三浦 裕樹/MIURA,Yūki
Ⓒ Yodogawa Labor Management Society

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