数学教育は未だ目覚めず
6月はプライド月間であり、世界中でLGBT+の権利や文化、コミュニティーへの支持を示す、さまざまなイベントが行われます。もうじき7月になりますが、遅ればせながらプライド月間に参加したく思います。
さて、日本の数学教育がLGBTQ+的に如何に目覚めていないかということについて述べたいと思います。
中学校の標準的な数学の教科書である啓林館の「未来へひろがる数学2」では連立方程式の例題として以下のような問題が載っています。
解答では2年生の男子をx人、女子をy人とすると、
x + y = 165
という式が成立すると述べています。
カンの良い方はお気づきかと思いますが、この式では男子と女子以外のジェンダーの可能性が除外されています。
これは大きな問題です。
二元の連立方程式を用いる例題ですから、変数は2つしか使えない。つまり、ジェンダーが男子と女子の2つしかないという前提がなければこの問題は解けないように出来ています。中学生に対して、あらかじめジェンダーが男子と女子の2つしかないという認識を強要しており、これはトランスに対する排除であり、トランスコミュニティに対する攻撃です。包括性に欠け、家父長制を助長するものであり、抑圧的な資本主義を体現し、ええっと何だっけ?です。
一説によれば、今やジェンダーの数は437を越えます。啓林館は先の例題を少なくとも437元の連立方程式の問題として出題するべきでした。
仮に、男子と女子がジェンダーではなく、生物学的性別を表すとしたいなら、当然そのように明記するべきでした。
ある中学校の2年生の生徒数は165人です。そのうち、生物学的男子の50%と生物学的女子の60%はボランティア活動に参加したことがあり、その人数は91人でした。
この中学校の2年生の生物学的男子、生物学的女子の生徒数を、それぞれ求めなさい。
ちなみに、生物学的男子はxyの性染色体を持っており、生物学的女子はxxの性染色体を持っているので、生物学的男子の数は変数xではなくyに、生物学的女子の数は変数yではなくxにそれぞれ割り当てることがより適切です。
さらに、同じく啓林館の「未来へひろがる数学1」では次のような例題が記載されています。
正しい答えは、判らない、です。先生が自分の年齢に違和感を感じ、突然6歳の女子児童と自認する可能性があるからです。けいたさんもいつ、25歳のイケメンと自認するか判りません。
人間を取り巻く事象はかくも複雑なものに成り果てました。教科書もまた、その流れから無縁でいることは出来ません。それが嫌なら人間をあきらめて、リンゴとみかんの数で方程式の問題を作り続けるべきなのです。少なくともみかんと自認するリンゴ、リンゴと自認するみかんが現れない限りは。