しなすいすいすいすい
ついこの間行ったばかりのしながわ水族館にまたまた足を運んできました。今度は妻も一緒に。
前回はペンギンやらアザラシやらを見落としてしまったので、リベンジです。今日こそはちゃんとそのキュートなお顔を拝んでやりますとも、ええ。
今回は平日でしたが比較的遅い時間に行ったので、館内はすでに家族連れでわちゃわちゃとしていました。今回は妻も一緒ですし賑やかな雰囲気を堪能するとしましょう。
子どもの声というのは不思議で、そこにあるだけでその場の空気を作り変えてしまいます。それだけではなくて、その賑やかな笑い声は私の視線にも侵入して来て、カメラで切り取ろうとする景色にすら影響を及ぼすようです。
魚たちは相変わらず元気です。そして私はまたまたマニュアル限定レンズを付けてきてしまい(いい加減学習しなさいよ)、前回同様四苦八苦しながら写真を撮るのでした。
そしてついに念願のペンギンたちとご対面。こんなにたくさんのペンギンがいたなんて、実は前回は水族館の半分も楽しめていなかったのではないでしょうか。
その先にあるのはアザラシ館。ここも前回見忘れてしまったエリアです。縦長の2階建の作りになっていて、大きな一つの水槽に掘られたアリの巣のような通路から周囲を自由に泳ぎ回るアザラシを眺めることが出来ます。
……ですが肝心のアザラシたちは寝てばかりいてほとんど泳いではくれません。せっかくだから写真を撮りたいのに、彼らは自由で呑気で気まぐれです。
アザラシ館は何故か人が少なくゆっくりと観ることが出来ました。この間の私と同じでうっかりスルーしてしまう人が多いのでしょうか。
人もいない、アザラシも寝てる……。館内は妙な静けさに包まれていました。
360°水槽に囲まれた一面ブルーの空間に天井から光が差し込んでゆらゆらと揺れます。それはとても幻想的で、言葉にできないノスタルジーが押し寄せて来ます。そして、ふと思ったのです。
突然ですがみなさんは vaporwave という音楽ジャンルをご存知でしょうか。言葉で説明するのは難しいのでキーワードを挙げるならば、「ノスタルジー」「インターネット黎明期」「4:3」「VHS」「無機質」「80年代」「浮遊感」……と言ったらところでしょうか。
これらのワードにシンパシーを感じた方には是非とも聴いて欲しいです。
さて、このvaporwaveですが、先ほど私は音楽ジャンルと言いました。ですがvaporwaveにとって音楽はあくまで一つの要素であり、他にも色々な芸術的(文化的)要素が絡んで来ます。その一つがビジュアル(映像)です。
vaporwave は lofi hip hop なんかと同じくyoutubeを始めとする動画共有サイトで発展して来たジャンルです。なのでそこに映像という視覚的な要素が加わるのは必然なのでしょう。そして、その映像でよく使われるものの中に「誰もいないプール」の映像があります。
長くなりましたが、私がさっき感じたノスタルジーはこれに近いものだと、その時思ったのです。
そしてこれに気づいてから私のピントは少し自由になりました。私が水族館で撮りたかったのは魚やアザラシやペンギンではなかったのかもしれません。
相変わらずアザラシたちの泳ぎは消極的でサービス精神のかけらもありません。私はもうアザラシを待つのはやめて、誰かの気配がするけれども誰もいない空間に向かってシャッターを切りました。
アザラシ館を出ると再び喧騒に飲み込まれます。先ほどまでの静けさは夢であったかのようです。
さてさて、そろそろでしょうか。館内にアナウンスが響くと、子どもたちが一斉に同じ方向へ向かって行きました。みなさんお待ちかねのイルカショーの時間です。
観覧席は既に満席で屋内の空いているスペースを見つけ人混みから覗き込むようにショーを鑑賞しました。隣の妻の顔を覗き込むと子どものような真剣な顔をしてイルカが跳ねるのを観ていました。
イルカショーは一瞬で終わってしまいました。子どもたちが館内に雪崩れ込む前にと先へ進みます。
外に出るとものすごい熱気。強い日差しに目が眩みます。やっぱりこの夢から現実に戻るような感じ、とても好きです。
外のカフェでクリームソーダを飲みました。カフェには長い列が出来ていて店員さんの顔が死んでいました。ちょっと同情してしまいます。お疲れ様です……!
今朝散歩をした時にもくもくの入道雲を見てから飲みたいと思っていたクリームソーダ。あの空と雲を見た時のキラキラした気持ちをストローからズルズルすすります。爽やかな味。
夏休み真っ只中のしながわ水族館。前回来た時よりも賑やかで、だからこそ静けさも際立つ水槽とピントの先。
ノスタルジーを求めて足を運ぶ度、気づけばそここそが思い出の場所になっているかもしれません。
またクリームソーダが空に浮かぶ季節に、今度は3人で。