【さんぽカメラ④】 セミの声つらぬくは下町の夏空 【根津神社〜谷中銀座〜東京都美術館】
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夜勤明けで上野にある東京都美術館へ向かいます。公募展で従姉妹の作品が展示されているらしいのです。
乗換案内アプリに会社の所在地と目的地を入れると、「上野駅」ではなく「根津駅」で降車しろとの案内が表示されました。
根津ってこの辺りだったんだ。会社の人が依然住んでいたらしく、「根津いいよ〜。根津に帰りたい……」とよく言っているので、名前に聴き馴染みはあったのですが、どんなところなのかは全く知りません。
会社を出るとまさに夏空といった感じの深い深い青が頭上に広がっていて、まだ残る昨日の雨の痕跡が透明感のある空気に混じりとても涼やかです。薄い水色の紫陽花は雨粒で化粧して、陽の光を受けてキラキラと輝いています。
そんな初夏の空気に眠気は吹き飛んで爽やかな気分になって来ました。従姉妹は12:30に会場に来るそうです。今から向かえば10:30には根津駅着きます。
せっかくなので約束の時間までの2時間、のんびり散歩でもするとしましょうか。
↓さんぽのルート
根津神社
根津駅に着くとまずは根津神社へ向かいました。駅からは徒歩5分ほど、あっという間に到着です。
境内に入ると「ジーッ、ジーッ」と蝉が鳴いています。……え、蝉!?今日はまだ6月19日。梅雨入りすらしていません。いくら今年の梅雨入りが遅いからといって、ちょっと早すぎる気がします。八日目の蝉ならぬ……なんでしょう?とにかく、この早起きな一匹の蝉が頑張って鳴いてくれているおかげで、私も周りの人達も笑顔になって背の高い木々を見上げています。
根津神社といえばツツジだと思うのですが、もう時期をとうに過ぎていて、ツツジの赤い花はどこにも見当たりません。代わりに濃くなった緑の葉と対照的に浮かび上がる千本鳥居に目を惹かれます。
本殿でお詣りをするとお腹が鳴ったので、一度駅の方に戻り何か食べるものを探すことにしました。
Les Inities
昔、根津に住んでいた職場の人から「ベーカリーミウラ」というパン屋さんが美味しいと聞いていたのでそこへ向かったのですが、どうやら今日は定休日のようです。ならば、と「LE COUSSINET(ル・クシネ)」という古民家カフェに向かったのですがそこもお休み……。
行く当てもなく困っているとちょうど通りの向かい側に翻るフランス国旗🇫🇷を発見。おしゃれなお店の匂いがするぞ……。
というわけで見つけたのが「Les Inities」というブーランジェリー。陳列されているパンはどれもおしゃれで美味しそう……。そして意外とお手頃なのも嬉しいです。
従姉妹への差し入れにちょうど良さそうなクッキーとマドレーヌがあったので、いくつか買ってラッピングしてもらい店を後にしました。
……あ、私の朝ごはん買い忘れた。
ボンジュールモジョモジョ (Bonjour mojo2)
また戻ってパンを買い直すのはなんだか恥ずかしかったので、すぐに何か見つかるだろうと、とりあえず歩き始めました。
そうそう、今回のさんぽの終わりは東京都美術館ですが、まっすぐ向かうとあまりにも早く着いてしまうので、谷中銀座商店街まで向かってまた折り返すことにします。
Googleマップに従って歩いていると、早速趣のある路地に入り込みました。
ギャラリーの奥に小さなお店がありました。後ろから自転車でやって来た男性が私を追い抜いてそこで何か買って行きました。
一度は通り過ぎたのですが、とっても雰囲気が良かったので気になって戻って来ました。
なんでしょうこのかわいいパンたちは!子供はもちろん大人でもニコニコしながらあれにしようかこれにしようかとつい悩んでしまうどうぶつパン。味ではなくて見た目で決めたくなってしまいます。しばらく熟考して、「すいません、カエルさんください!」
たい焼きは「頭から行く派」と「尻尾から行く派」がいますが(腹から行く派もいる……?)私は尻尾派です。なのでこのカエルもアゴの方から食べていくとしましょう。
この子の中にはこしあんがたっぷり詰まっています。なめらかで甘すぎず、そしてなんだか懐かしいような味がしました。
ぺろっと平らげてしまうと、そのまま歩きつづけます。
へび道〜よみせ通り
くねくねと曲がる細長い通りに差し掛かりました。ここは「へび道」と呼ばれているらしいです。通りの両脇に立ち並ぶのは下町情緒あふれる民家。そしてその合間にポツリポツリとおしゃれなお店が顔を覗かせます。
しばらく歩くと「柳通り」という通りと交差します。その名の通り立派な柳が生えていて風に揺れる葉が涼しげです。
そのまま直進して歩き続けると次第に昔からあるような商店が増えて来て、「よみせ通り」というこれぞ下町といった情緒漂う通りに入って行きます。
そしてしばらく歩いたらクルッと回れ右。突然賑わいを見せるその道こそ谷中銀座商店街。
谷中銀座商店街
平日の昼間ですがこの通りだけやけに賑わっています。外国の方も多く先ほどまでの「へび道」や「よみせ通り」が地域に根付いた暮らしの道なら、ここは多種多様な人を寄せ付ける観光の道。
実は谷中銀座商店街にはずっと行きたかったお店があるのです。ここを目的地にしたのはそのお店に行くためでした。
穀雨 atelier & shop
穀雨さんとの出会いは遡ること5年、夏の終わりの軽井沢でのことでした。
チャーチストリートというこぢんまりしたショッピングモールに Qcul Atelier というお店がありました。そこは国内の作家さん(アクセサリーとか食器とか……)の作品を展示販売しているお店でした。
その中に一際目を惹く作品があったのです。
それは小さな小さな黄金色の街でした。
「どこか遠くにある街」という穀雨さんの顔とも言えるコロンとしたかわいい真鍮のオブジェシリーズ。
私はこの街ピカピカした街にすっかり夢中になってしまい、今に至るまでちょっとずつ集めているのです。
「こころ あそばせる 小さな装置」というキャッチコピーもとても素敵で、そのフレーズ通り私はこころを遊ばせようと、一時期その街を持ち歩いて旅先でディスプレイして写真を撮っていました。
ちなみに最近増えたのは「花咲く農家」という壁面に花柄の掘り込みがある平屋。東京蚤の市で出会って連れ帰って来たのです。
うん、とっても可愛いですね!
こうやって色々なところに小さな街を作ってみると、あれこれと想像が膨らんでワクワクします。
それから、妻の30歳の誕生日に「1つの言葉」という淡水パールのネックレスを送りました。妻の誕生日が6月なので誕生石の真珠を使っているアクセサリーはぴったりだと思ったのです。
名前の通り、付いている真鍮のプレートに1つ、言葉を選んで刻印することが出来て、私はポルトガル語で船を意味する「navio」という言葉を選びました。30代への船出が素敵なものになるようにと。それから船のオブジェも一緒に妻に送ったのもいい思い出です。
そんなこんなで穀雨さんにはとても思い入れがあるのですが、実店舗は家から絶妙に遠く感じる距離で一度も訪れていなかったのです。
今日はついにその機会を手に入れました。
お店は商店街を途中で折れた細い路地の途中にあります。隣にはTAYORIという喫茶店?があって行列が出来ていました。
その列がお店の入り口を塞いでしまっていたので、「すみません……!」と手をチョイチョイやっていざ入店。
店内はこじんまりとした和モダンといった感じの装い。会計をしているお客さんが1人いて、その方が店を出た後に店員さんに許可をもらって控えめに写真を撮らせていただきます。
デザイナーさんとお話ししてみたかったのだけれど、残念ながら今は外しているとのこと。東京蚤の市でお会いする機会があったのに、人見知りが発動してしまって何も話せなかったのです。
だから今日は徹夜明けのやっかいなテンションを頼って「すてきな作品を作ってくれてありがとう」と一言伝えたかったのだけれど残念です。
今日は特に何も買うつもりはなかったのですが、やっぱり実物を見るとウズウズしてきて、一軒お持ち帰りしてしまいました。月の形の窓がある二階建てのお家。
ラッピングの時に店員さんがレジに挿してあったドライのユーカリをパチンと切って袋に入れてくれました。その一連の行為がもうなんというかとってもおしゃれで、私の心は撃ち抜かれてしまいました。
小さなピカピカの二階建ての家。今度はこの家も鞄に入れて、どこか遠くに街を作ろうと思います。
アトリエ ド フロレンティーナ
さてさて、もう時間も押しているし後は東京都美術館へ向かうだけ。
……と思ったのですが、道を戻ってすぐの曲がり角にフロランタン専門店を発見。私も妻も、フロランタンが大好物なのです。妻へのお土産になればと立ち寄って行くことにしました。
店内には小さな正方形をさらに4つの小さな正方形に割った、可愛くてどこかモダンな感じのフロランタンが並んでいました。
変わった味がたくさんあって、私は「夏塩」と「アールグレイ」をチョイス。後でちょこっといただいたのですが、どちらも美味しかったです。
さあ、いよいよ時間が迫っているので美術館へ向かいましょう。
谷中霊園〜東京都美術館
だがだがしかし!私の手にはカメラがあるのです。気になるものがあったら撮らずにはいられません。
ついつい立ち止まってはシャッターを切って、慌てて走り出してはすぐ立ち止まる。そんなことを繰り返していて全く進みません。「谷根千」というエリアが魅力的なのが悪いのです。
そんな時ちょうどよく従姉妹から「少し遅れる」と連絡が。私はグイッと目的地と直角に道を逸れ、大回りして谷中霊園を通ることにしたのです。
広大な霊園って良いですよね。私は桜の時期の青山霊園が大好きです。
ここ谷中霊園も緑が溢れていて都会のオアシスと言った感じ。お墓の下で眠っている方々もきっと素敵な夢を見ていることでしょう。
さすがに人様の墓にレンズを向けるのは憚られたので、木や道や石碑なんかを撮りながら歩きました。
そして霊園を抜けてその先へ。この辺りも下町らしさ全開で瓦屋根の建物なんかがいくつもありました。
そのまま歩き続けると風景がガラッと変わって煉瓦造りの洋風な建物が見えて来ます。
憧れの東京芸大です。こんなところで学生生活が送りたかった……。私がもし幼少期に戻れたらまずやる事は「ピアノを習う」です。
私は音楽系の学部出身ですが、ピアノが弾けないという事はかなりのディスアドバンテージでありました。実技じゃなくても理論にしろ何にしろピアノで響きを確かめて学ぶことが多かったからです。
生まれ変わったら天才に生まれて来て絶対東京芸大でキャンパスライフを送るのだ……!
そんなこんなでようやく東京都美術館に到着です。やっぱりちょっと遅刻しました。てへ。
まとめ
はじめて訪れた街。そしてそこで見つけた小さな真鍮の街。初夏の青空。一番ゼミの声。下町の風景。おしゃれなお店。
レトロとモダンが入り混じるとにかく魅力に溢れる土地でした。
今回は空いていないお店も多かったので、また近いうちに訪れたいと思います。
それでは、また。
Camera:FUJIFILM X-Pro3
Lens:Voigtlander NOKTON 35mm F1.2
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