猫の住むまちは人に優しいまちだと思う
まちを歩いていると猫によく出会う。車やバイクが走り回るまちではお年寄りも子どもも猫も生きてはいけない。猫の住むまちは人に優しいまちだと思う。
Walkable Cityという言葉がある。そのまま訳せば、歩くことのできる街であるが、歩きやすい街と言ってもいいだろう。最近日本でも翻訳されたWalkable cityという本がある。Jeff Speckというアメリカのアーバンデザイナーが書いた本であるが、Walkable Cityに必要なことは、useful(便利)、safe(安全)、comfortable(快適)、interesting(魅力)の4点だという。近くに生活に必要な施設があって便利であること、車から隔てられていて安全に移動できること、まちが「屋外のリビングルームoutdoor living room」のように快適であること、通り沿いの建物やその景観が魅力的であることが、歩きやすい街には必要だという。
日本では、関連する事業で初期のものとしては、2000年に初めて実施された歩いて暮らせるまちづくり事業があり、ここでは、徒歩圏内に生活に必要な機能が集積すること、公共交通による移動ができること、歩いて楽しい魅力的な場があること、多様な世帯が住むことのできる住居が用意されていることが要件とされた。
都市全体のイメージとしては、中心部にはより高度な多機能集積が行われ、周辺部にはそれぞれ小規模な歩いて暮らせるエリアが形成され、それぞれが相互に公共交通で中心部とつながる図式である。
あわせて、この事業では、その実現のために市民参加・住民参加あるいは多主体連携を通じて、市民組織による創発的なまちづくりへとつなげるというビジョンがあったと思う。
そのWalkable Cityという概念や歩いて暮らせるまちづくりという考え方をもって、ジョグジャの今の近隣環境を見てみるとどうであろうか。
色々問題もあるが、利便性や機能集積については、魅力的な環境だと思う。
そもそもこの話題を思いついたのは、洗濯機のCMを見たからである。うちには洗濯機がないが、その必要性を感じたことは一度もない。なぜなら、家の隣がランドリーだからである。洗濯物もあまり出ないので、洗濯するのは3日に1度であるが、その都度、隣のランドリーに洗濯物を抱えて行く。
1回100円である。これが安いのか高いのかは判断があると思うが、何年か住むのであれば当然洗濯機を買うであろうが、1年限定なので年間で12000円をランドリーに払おうと思っている。インドネシアでは洗濯機が買えてしまう金額ではあるが、隣にあって持って行くのにストレスがほとんどないというのは大きい。
歩いていけるところ、隣にランドリーがあることが重要なのである。
周りにあるものを挙げてみよう。
南隣にはパン屋がある。甘いパンである。道路向かいの北に1分歩いたところには、ケーキ屋がある。通り沿いのケーキ屋はここだけではないが、この前、お隣さんに家に来ていただいた時にお土産にもらったのが、ここのケーキであった。それ以来、何度か買いに行っている。スイーツでつなげば、道路向かい側北に5分歩いたところで、バームクーヘンを何度か買っている。
食事は、家で作ることが多いが、よく行くのが北に2分歩いたところにあるワルンである。最近は持ち帰りを覚えて、包んでもらったものを家でビールと一緒に食べることがある。肉を食べるのなら、家の真向かいの店で鶏肉を食べる。魚であれば、南側を西に入ったところ歩いて3分のところにある海鮮料理の店である。ソトアヤム屋にも時々行く。
買い物は、野菜や果物や肉類は南に10分歩いたところにある市場に行く。日用品は、6−7分北に歩いたところにあるミロタ・スーパーである。ミロタに行くまでに3軒コンビニを通り過ぎることになる。急ぎのものであれば、コンビニで買うことになるだろう。
水とガスは北に3軒隣の店で買う。4−5日に一回は水を買いに行っている。文具屋もその隣にあるので、ノートや紙を買いに行く時にはそこに行く。
スマホのSimカードは1ヶ月毎にギガを購入しているが、これはミロタの向かいの携帯ショップを利用している。電球を交換した時には、通り沿い向かい側の歩いて4分の電球屋に買いに行った。
ゴミは、家の横にいつも座っているおばちゃんに毎月500円払って、路地に置かれたごみ収集箱に分別したものを捨てさせてもらっている。定期的に彼女がどこかに持っていているんだと思う。(ゴミの問題は、また調べる)
散髪は西側の大学の近くの散髪屋に先月行った。歩いて5分である。インドネシア語の教室は歩いて10分である。あと、歩いて2分のところにカトリックのシスターたちの修道院があり、時々インドネシア語を話しにふらりと訪れることがある。ちなみに、属しているRT(隣組)の長の家は修道院のすぐ先にある。
以上、歩いていける範囲の実態である。
加えて、インドネシアではカキリマの存在は重要である。移動式店舗である。家の真ん前でおかずとご飯を売っているおじちゃんや、斜め向かいで夕方以降カキリマでデザートを売っているおばちゃん、向かい側少し南の路地を入ったところで朝野菜を売っているおばあちゃん、北側の路地でパンを売りに来るお兄さんは、タイミングがあえば、お腹を満たすのに貢献してくれる。
移動のストレスについては、またの機会に述べたいが、私が住んでいるこのまちは特に特別なところのあるまちではないが、歩いて暮らせるまちとして、魅力あふれるまちだと思っている。241012