一瞬の隙
■2024年(両親81歳)
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単身で訪問 9:30頃 続き(4)
櫛を戸棚から出して、ずいぶんと伸びた母の髪の毛を梳く。
相変わらず目やにもこびり付いているし、きれいに整えてから写真を撮ろうと思う。
櫛を終えて、顔を拭くためにティッシュを洗面所で湿らせて母の前に戻ると、母は目をつむってしまっていた。
一瞬の隙に眠られてしまった!
先に写真を撮っておけば良かった…。
もうこうなると、いくら呼びかけても揺らしても、目を開けてくれない。
目が開いている母の姿を収めておきたかった。
仕方なく、眠ってしまった母の顔を拭いて、目やにを取る。
いつも皮膚の皮がところどころめくれていて、拭くとポロポロと剥がれる。
瞬きが少ないので涙が多く、目じりに涙が固まった跡ができている。
そうだ、父が入院中に使っていた保湿剤が家にあるから持って来よう。
車いすになったから、ひざ掛けもあった方が良いかな。
思えばこの日、母は一言も発さなかった。
でも、わたしの頭を包んでくれて、とても温かい時間だった。