見出し画像

成り代わりたい

■2024年(両親81歳) 

3/20
二女、三女と訪問 11時頃

別荘に向かう車の中で、「今日はばぁちゃん起きているでしょうか?」クイズをする。
娘たちは口をそろえて「起きてなーい」。

到着すると、もれなく母は1Fの宿泊室で寝ていた。
娘たちの予想通り。

ベッド脇に置かれていたピカチュウとドラえもんのぬいぐるみを、二女が母の枕元にせっせと並べ込む。
その後、ベッドのリクライニングボタンを手慣れた手つきで操作する。

「頭が上がります、頭が上がります」と電動音が鳴り、母の上体が起こされる。
娘たちがベッドの上に乗り、ぴょんぴょん跳ねる。

何をしても母は一向に目を開かない。

わたしもベッドの上に乗り込み、「お母さん、尚子!」と何度も呼びかけていると、「うん」とやっと応答する。
その後、うっすら目を開く。ほんの1、2ミリ。

「あ! ばぁちゃん目開けたよ! 来て来て!!」と娘たちを呼ぶ。
「ほんとだ!」と、娘たちも母の顔を覗き込む。

二女がニコニコしながら母の手を握る。
母、さっきよりだいぶ大きく目を開いているが、言葉は発せず。

今の母には、この世界がどう映っているのだろうか?

わたしたちの呼びかけには、どんなふうに感じているのだろうか?

ほんの少しでいいから母に成り代わって実感してみたい。

いいなと思ったら応援しよう!