このやつは
■2023年(両親81歳)
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単身で訪問 午前中 続き(2)
と、父も立ち上がり、歩き出す。
ちょうど手すりの棒と棒の間に立っている母の横を通ろうとするも、間が狭くてなかなか通れない。
母は、父が横を通ろうとしていることを把握できていないので、動こうとせず。
父もとにかく横を通ろうと、母を無意識に押しのけて狭い隙間を通ろうとする。
二人して頭や体をぶつけ合いながら、たどたどしくもあっちこっち移動している。
母、父にぶつかった瞬間、「ごめんなさい」とご丁寧に謝っている。
父とは認識しておらず、知らない誰かにぶつかってしまったと思っているみたい。
二人のその動きを見ていると、ちょっぴりおかしくなってしまうが、同時にこの目の前の状況に何とも胸が痛くなる。
そろそろ1Fに降りようと、手すり棒の奥にいる父を呼ぶ。
尚子「お父さん、こっちだよ。こっちに来てー。下行こう!」
父 「どこ? …痛っ!」
父、歩きながら、早速手すりに頭をぶつける。
そこで初めて、目の前になにか障害物があることを認識する。
視界も悪いので、居室の真ん中に天井から床にかけて棒が立っているという絵は、父の目には見えていない。
それでも前に進もうとし、手すりの棒を持ち上げようとしたり、くぐろうとしてみたり、試行錯誤している。
父 「このやつは…、なんか、嫌だねぇ。これ通れないよ、どうしたのこれ?」
尚子「お父さん、こっちよー!」
父 「あ、そっち。はい。」
声のする方を頼りに、棒につかまりながら手づたいに横に少しずつ移動し、何とか空洞を見つけて通り抜ける。
うーん。はやり危なっかしい。
夜なんかもっと暗くなって、余計視界も悪くなってぶつかりやすいのではなかろうか。
二人とも、たまたまそこに棒があったからちょっとつかまって歩くという感じ。
居室を分けるという目的で導入してみたこの手すり案。
機能するようにはとても思えないが、しばし試してみるしかない。
父のシャツのボタンがまた取れていたりと、二人がちゃんと着られる服が少なくなってきている。
母の長袖の肌着も取り急ぎ追加しなければ。
気付けばもう衣替えの季節。
わたしにできることと言えば、こうした衣類をちゃんとそろえてあげるくらい。
衣替えくらいはしっかりと整えてあげようと思う。