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水を知ると栽培が変わる

このnoteをご覧頂きありがとうございます。

前回の記事では、大枠の理論で述べさせて頂いた4つの課題のうちの1つ、
「微生物の死滅」について、【土】と【微生物】の関係性を主体に述べさせて頂きました。

今回は4つの課題のうちの3つめである「ミネラルの流出」について、
【水】と【動物】の関係性を交えて説明させて頂きます。


【水を中心に文明は発展してきた】

【水】とは未だに全容が解明できていない不思議な液体といわれています。
分子構造や化学的な【水】のうんたらについてはここで説明を控えますが、
【水】なくして【動物】の生命は存在せず、人間の歴史を見ても【水】がとても重要な要素をもっています。

いずれ詳しく書く予定ですが、歴史から見ると【水】によって発展と衰退が起こり、【水】を巡った戦争などが今もなお勃発しています。

歴史の授業でも習ったことはあると思いますが、世界4大文明と呼ばれる
「メソポタミア文明」「エジプト文明」「インダス文明」「黄河文明」
この4つの文明はいずれも気候が温暖で大河のほとりから始まっています。

その理由としては、河川を中心に麦や豆など穀物を栽培する農耕や牧畜が盛んになり、それまでは遊牧民のような生活をしていた人間が集落を形成したからです。

当たり前と思うかもしれませんが、【動物】が生きていく飲み水としてだけでなく、食糧生産、つまりは【植物】においても【水】がとても重要ということです。

しかし、紀元前数千年から始まるこの文明における農耕においても、現代農業の課題にもなっている塩類集積による収穫減によって衰退したことがわかっています。

塩類集積とは何かというと、土壌内の水に溶けている塩類(ミネラル)が土壌面に上昇してくることで表土に蓄積されることをいいます。

これがなぜ収穫減に繋がるかというと、
【植物】は作物によってミネラル成分の好き嫌いがあるため、同じものを同じ土壌で何度も栽培することで、好きなものだけ減っていき、嫌いなものは残ってしまう現象が起き、土壌ミネラル分のバランスが崩れてしまうからです。

このバランスが崩れることがいわゆる連作障害の主な原因となります。

はるか昔から農業において連作障害が人類の頭を悩ませてきたのです。

【植物】にとって【水】自体はもちろん必須要素であり、その中に含まれるミネラル成分もバランス良く必要ということです。

【水はミネラルが大事】

そもそもミネラルとは一体なんなのかというと、
地質学的作用により形成される、天然に産する一定の化学組成を有した無機質結晶質物質のことを指すと言われています。

つまり、鉱物ですよと。

地球が誕生し、海底火山によって山や陸ができ、
【微生物】が上陸することで【植物】が生まれ、
【光】を浴びることで繁殖し、
【植物】が枯れることで【土】ができました。

そして、雨が降ることで山から川、川から海へと【水】が流れ、様々な生命が生まれるきっかけとなります。

この地中深くから山へ湧き出し、山から川へと流れてくる際に、【水】には鉱物からミネラル成分が少しずつ溶け出していくのです。

【水】が【動物】にとっても【植物】にとっても必要な理由は、

  1. 体内の構成要素の半分以上が水分であること

  2. 水に含まれるミネラルが身体を構築する必須要素であること

このふたつが大きなポイントだと思います。

【水】にはpHや酸素飽和濃度、EC値、水量など様々な要因が【植物】に影響を与えます。

そちらについてもいずれお伝えしますが、今回は2のミネラルについて詳しくお伝えします。


そもそも、ミネラルってどんな種類があるのでしょうか。

化学赤点マンの私は大の苦手でしたが、元素記号の周期表を覚えていますか?

スイ(水素H)ヘイ(ヘリウムHe)リー(リチウムLi)(ベリリウムBe)
(ホウ素B)(炭素C)(窒素N、酸素O)(フッ素F)(ネオンNe)…

こんな感じで語呂合わせで暗記していましたが、この中のガスではない個体の部分がミネラルと呼ばれています。

元素記号の周期表

このミネラルの中で、人体や環境に悪影響を及ぼすものを有害重金属と呼びます。
よく勘違いされることが多いのですが、重金属=有毒物質というわけではありません。

例えば鉱山などの採掘により必要な鉱物以外を廃棄したものが蓄積すると、そこから高濃度の重金属となり汚染水が流出してしまうため、重金属は悪影響だと思われてしまいます。

しかし、実際のところは、何かしら「人為的な行動」により有毒物質が高濃度化してしまい、それが悪影響を及ぼしてしまっているだけなのです。

【キレート化でミネラルを吸収】

我々【動物】はミネラル(鉱物)を直接食べて吸収することはできません。

誰も鉱物をガリガリ食べることはしないですよね。
やるとしても塩かけるくらいです。

そこで重要なのがイオン化キレート化です。

イオン化とは、【植物】の根から出る有機酸によって鉱物を吸収しやすい形(金属イオンの状態)にすることで、

キレート化とは、その金属イオンを別の有機酸でコーティングすることで有害物質を無害化したり、効率的に【植物】が吸収しやすいようにすることです。

このキレート化をする際に必要な有機腐食を「フミン酸」や「フルボ酸」「ヒューミン」などと呼びますが、その違いはまた後日説明します。

つまり、【動物】がミネラルを吸収するためには、

【植物】がミネラルを酸でイオン化し、
【微生物】が生み出した有機腐植による有機酸で金属イオンをキレート化し、
【微生物】がキレート化したミネラルを【植物】へ受け渡し、
【動物】が植物性のミネラルとして吸収されやすくなったものを野菜として食べる。

こんな流れになります。

ミネラルを【動物】が効果的に吸収するためには、実は【植物】や【微生物】の力を借りる必要があるということです。

【ミネラルはバランスが大事】

では、野菜を食べまくって、大量にミネラルを吸収すると良いのか!?というとそういうわけでもありません。

ミネラルは【植物】にとっても【動物】にとっても、バランスがとても大事になります。

そのバランスについて研究した人がいます。

それが化学肥料を作り出した人として有名なドイツの学者、
ユストゥス・フォン・リービッヒです。

この方はミネラルのバランスについて「リービッヒの最少律」という言葉を用いて説明をしています。

この桶の絵を見たことありますか。

ドべネックの桶

ドベネックの桶といわれており、

「生物の成長はその生物が利用できる必須栄養素のうち最少のものに依存する」

というリービッヒの最少律を、のちにドベネック氏がわかりやすくイラスト化したものです。

簡単に述べると、必要な栄養素のうち足りないものがあれば、それ以外のものがどれだけあっても、一番少ない栄養素に合わせて吸収されるよ、と。

おかずが何品もあっても、白米が少なければ残しちゃうみたいなそんなイメージ。

残ったものがいっぱいあれば、次も同じ施肥設計で栽培すると残飯が大量に残ることになります。

このミネラルバランスの崩壊が本記事のはじめに述べた連作障害の原因です。

さらにもうひとつミネラルにとって必要なことは、「相互拮抗作用」があるということです。

マグネシウムとカルシウムを効率的に得るためには1:2くらいがちょうど良く、どちらかが多すぎると吸収を阻害することになります。

他にもカリウムを接種しすぎるとナトリウムが排出されてしまうなど、ミネラル同士様々な関係性をもっています。

何事もバランスです。

しかし、実はこういったバランスが崩れた状態になったとしても、簡単に改善することができます。

それが【微生物】です。

前回述べたように、【植物】にそのつど必要なご飯を作って提供してくれるのはシェフである【微生物】です。

崩壊した土壌においても、【微生物】が多様に存在し、有機物が大量にあれば、ミネラル過多による連作障害も起こることはなくなります。

【環境変化で消えたミネラル!】

ここまで読んで頂いた方は、【植物】や【動物】がどういった経緯でミネラルを吸収できるのか、ご理解頂けたかと思います。

では、最後の章では、このミネラルが現実問題どうなっているのかを述べたいと思います。

「昔の野菜に比べて今の野菜は味が薄くなった」


こんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。

実際、文部科学省が出している「日本食品成分表」によると1950年と2015年の比較では、
ほうれん草の鉄分は100g中13mgから2mgと、
85%も減少しているとされており、人参や大根などそのほかの野菜においても80%ほど様々なミネラル成分が減少していると。

もちろん、今と昔では計測できるレベルが変わっているとは思いますが、ミネラル成分が減少していることは間違いないと思います。

このミネラルが【植物】から消えていっている理由としては、「酸性雨」「土壌消毒」が挙げられると思います。

「光合成で栽培が決まる」で述べた光合成の阻害
「微生物が土をつくる」で述べた微生物の死滅

なども関係していますが、農業における課題としては上記2つの理由が大きいのかなと。

このミネラルが消えた状態では、強い【植物】が育つことはできないです。

様々なミネラル資材は販売されていますが、そのほとんどが鉱物を溶かして抽出したものが多いため、
同時に【植物】の根酸と【微生物】が分解する有機物から生まれる腐植酸によるキレート化が必要になります。

フルボ酸を使うことでよく育つ事例が多いのはそのためです。

弊社のミネラル資材「アドミン」は様々なミネラルを多量に含んだ薬草や海藻などを培養した植物性ミネラルの液剤になります。

植物性ミネラルは非常に吸収効率の良いものになるため、苦土石灰や有機石灰を使用されている方は違いがわかりやすいかもしれません。

ちなみに「アドミン」を使用して頂いた里芋の写真がこちらです。

2ⅿを超える里芋

ミネラルを定期的に還元してあげることで、こんなことも可能になります。

書く内容が多すぎてかなり長くなってしまいましたが、
ここまでお読み頂きありがとうございます。

次回は4つの課題の最後4つめ、「有機物不足」について
【炭素】と【腐食】を踏まえて述べさせて頂きます。

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