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深夜の独り言 39

ジーンズオンジーンズとか、ニットオンニットとか、昔はださく見えていたものが最近は可愛く見えてくるのが不思議です。シュシュとかも。かく言う私も今日は寒くって、アイボリーの網目の細かいタートルのニットに、同じ色のざっくり編みのカーディガンを重ねていました。

「酔う」という感覚を初めて味わって、なんだか楽しい気持ちです。サワーを五杯飲んでやっと、お酒を飲んだな、と感じる私はきっとアルコールに弱いわけではないのでしょう。

ふたりで横並びで座って飲むお酒は最高に楽しくて、え、マッシュポテト良くない、とか、バター醤油味だって、とか言っている間にテーブルの上はお芋ばっかりになっていて、何食べてもポテトポテトポテト。ラムネサワーをごくりと飲むと、んなぁ、と意味のわからない声を出しては笑うのです。ふたりなら何をしたって楽しくて、それでふと、今隣にいるのが高校卒業のとき「成人したら飲もうね」と約束したあの子ではないことに少し、ふわふわと、不思議な気持ちになります。

人間関係は永遠ではないし、今周りにいる大好きなひとたちが私のことを大嫌いになる確率もゼロではないのです。そのことがたまらなく寂しいし、悔しいし、愛おしいです。大好きで大好きで堪らないことを、これ以上伝えるすべがないこと。大好きで大好きで堪らないのに、全く同じひとりの人間にはなれないこと。大好きで大好きで堪らないからこそ、これ以上あなたを好きになれないこと。そういった諸々が、私を悲しくさせます。

大好きなひとたちが私を大好きでいてくれて、私はこれ以上ないほどに幸せなはずなのに、だからこそ最高に不幸です。今以上に幸せになれないなんて、なんて贅沢な苦しみなのでしょう。

江國香織さんの「とろとろ」という短編小説を読みました。愛おしくて堪らない、最高のお話でした。「ぬるい眠り」という短編集に入っていました。

ふわふわと楽しい気持ち、とろとろと幸せな気持ちの中に、ふと、絶望を見つけてしまうことがあります。そういうとき、私は目を瞑ります。大好きなひとたちをひとりひとり思い浮かべて、私のこんな絶望に、あなたならなんと答えてくれるの、と尋ねます。あなたは優しく答えます。何言ってるの、ずっと一緒にいようね。さっき自分で否定した「ずっと」は、あなたの口から聞くだけで本物みたいに光ります。状況によって、言葉も、物も、良さが見え隠れするものです。

幸と不幸とは、きっと、紙一重なのです。でもせっかくなら、幸せは幸せとして素直に享受したいですね。



酔っている夜に、




深夜の独り言。

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金とき
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